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1000字提言

 

夢を与えてくれる街

岩井菜穂美

 約1年前から、突然「宝塚」にハマってしまった私。「急になんで?!」という友人たちを尻目に、先日ついに宝塚大劇場(もちろん宝塚市)に行ってきた。思いもかけず、前から4列目という大変良い席で見ることができ、スターさんも間近に見られ、感激もひとしお。

 「やっぱり、本場はいい!」と満面に笑みあふれ、これこそ「チョベリグ」というものだと、最新の流行語を実感する。

 憧れの「宝塚」を見られたこともうれしかったが、他にもうれしいことが多くあった。

 1番は、阪急電車の設備と車いすの乗客への対応の良さだ。たびたびJR(私の住む北九州に鉄道はJRしかない)で冷遇的扱いを受けている私としては、だれもが利用できるエレベーター、たいした段差でもないのに列車乗降時に持ってきてくれる簡易スロープ、「どの車両に乗りますか?」とのこれまで聞いたこともない台詞にはかえって戸惑ったくらいだ。エスカレーターしかない駅もあったが、それも駅員さんが上手に、しかも楽々とホームへの昇り降りをやってくれる。私といっしょに行った友達も、非常に驚き、我が北九州との差を感じさせられた。

 宝塚は初めてだが、私は関西へはよく行くし、他の私鉄を利用したこともある。東京へ行くこともあるが、JRにしても地下鉄にしてもエレベーターのある駅は少なく、いつも階段に悩まされる。だから、移動のことだけ考えると関西のほうが生活しやすいかもしれない。もちろん、関西の公共交通機関がこのように利用しやすいのは、過去に地元の障害者が移動問題に熱心に取り組み、運動を続けた結果に他ならないと思う。「おまえもガンバレよ」という声が、どこからか聞こえてきそうだ。

 感激したことを、もう1つ。宝塚大劇場のすぐ近くの「手塚治虫記念館」(市立)へ行ったのだが、館内には、エレベーター、車いす用トイレが完備。小さなシアターもあり、一般のお客さんと同じ位置で映像を楽しめるように、最前列のいす3個分は取り外せるようになっている。ここでも感激!

 「宝塚」の公演をいつでも見られ、「鉄腕アトム」や「サファイア王女」に会える所。ひとに夢を与えることの盛んな街は、ひとに優しい街でもあった。

(いわいなおみ 北九州自立生活推進センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年2月号(第17巻 通巻187号) 29頁