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フォーラム’97

アビリンピックの動き

日本障害者雇用促進協会業務部業務課

Ⅰ 全国身体障害者技能競技大会(アビリンピック)の沿革

 全国身体障害者技能競技大会は、身体障害者の職業能力の開発を促進し、技能労働者として社会に参加する自信と誇りを与えるとともに、広く身体障害者に対する社会の理解と認識を高め、その雇用の促進と地位の向上を図ることを目的として、昭和47年11月、当時の社団法人障害者雇用促進協会(昭和49年6月社団法人全国心身障害者雇用促進協会に改組)が「全国障害者技能競技大会」の名称で、雇用促進事業団中央技能センター(現在の千葉職業能力開発促進センター)において第1回大会を開催した。
 その後、昭和51年の身体障害者雇用促進法の改正に伴い、新たに発足した当協会の事業として明記されるとともに、その名称が「全国身体障害者技能競技大会」と変更(第6回大会から)されて現在に至っているところである。
 ところで、大会の正式な名称は「全国身体障害者技能競技大会」であるが、大会の名称をもっと親しみやすいものとするため、愛称として「アビリンピック」を使うことにしている。ちなみに「アビリンピック」(ABILYMPIC)は、アビリティ(ABILITY=能力)とオリンピック(OLYMPIC)を合わせた造語である。
 なお、本大会は昭和47年度から原則として毎年開催されてきているが、国際身体障害者技能競技大会(国際アビリンピック)の開催された昭和56年度、昭和60年度、平成3年度及び平成7年度は開催されていない。

Ⅱ 国際アビリンピックの開催

 国際アビリンピックは、障害者の職業的自立の意識を喚起するとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深め、さらに国際親善を図ることを目的としている。同大会は、国内で全国障害者技能競技大会開催の経験と実績のある日本の提唱により、国際障害者年記念行事として、第1回大会が1981年10月東京において、当時の皇太子殿下を大会名誉総裁に推戴し、皇太子殿下御夫妻(現天皇、皇后両陛下)御臨席のもとに開催された。その後、ほぼ4年ごとに、開催国の障害者団体が主催団体となり、国際リハビリテーション協会(RI)及び国際アビリンピック連合との共催で開かれており、第2回大会は1985年10月コロンビア共和国のボゴタ市において、第3回大会は1991年8月香港において、第4回大会は1995年9月オーストラリアのパース市において開催されている。
 なお、香港大会からは、ノーマライゼーションの理念にのっとり、障害者の参加する職業技能競技に加え、障害者と健常者の協力に主眼をおく生活余暇技能競技が新たに設けられている。

Ⅲ 全国身体障害者技能競技大会の動向

1 競技職種の見直し

 実施する競技職種については、技術革新の進行、産業現場での技能労働力の需要の変化等に対応するため随時見直しを行っており、最近においては、第16回大会(平成元年度開催)に新たに「電子回路接続」「日本語ワード・プロセッサー(視覚障害者部門)」「パーソナル・コンピューター(表計算部門)」及び「貴金属装身具」の4職種を実施し、「テレビ・ラジオ修理」及び「カナタイプ」を技術革新の進展及び参加選手数の減少によりとりやめた。また、平成8年度に開催した第21回大会では、従来実施していた「写真植字」及び「機械製図」に加えて、新たな職種として「電算写植」及び「CAD製図」を実施することとし、その一方で、過去3回の参加選手数がいずれも少数にとどまった「建具」「広告美術」及び「版下製作」の実施を見送った。
 さらに本年10月29日から31日まで開催した第22回大会では、国際アビリンピックで実施されている「NC旋盤」を加えたほか、パーソナル・コンピューター職種については、職場における利用状況等を勘案し、BASIC部門を「ホームページ部門」に変更することとした。さらにコンピューター操作による競技職種が増える中で、技能習熟度が見てわかる職種の実施も必要であるとの考えから、都道府県等から要望が強く参加者の見込める「義肢」を再び実施することとした。他方、「写真植字」は参加者の減少や、電算写植を第21回大会から取り入れたこととの兼ね合いから、また「貴金属装身具」は今後も参加者が見込めないことからそれぞれの実施を見送ることとした。
 この結果、第22回大会の職業技能競技の競技職種は、旋盤、NC旋盤、洋裁、洋服、和裁、家具、電算写植、機械製図、CAD製図、電子機器組立、電子回路接続、電話交換、義肢、日本語ワード・プロセッサー(一般部門及び視覚障害者部門)、パーソナル・コンピューター(表計算部門及びホームページ部門)の15職種17部門となっている。

2 生活余暇技能競技の導入

 障害者が健常者とともに参加できる日常生活や趣味、余暇に関連した種目に関する技能を発揮する機会を与えることにより、障害者に社会に参加する自信と誇りを与えるとともに、広く障害者に対する社会の理解と認識を高め、その雇用の促進と地位の向上を図ることを目的として、第21回大会で生活余暇技能競技を初めて試行的に実施した。
 当該競技は、国際アビリンピックでは既に香港大会から実施されており、その動向を勘案して導入したものである。
 実施内容は、健常者と障害者(主に知的障害者)がペアになり、牛乳パックを再利用して、はがき、お面等の紙製品を作るものであり、競技の職種名を「不用品再利用」とした。
 なお、第21回大会では、競技方式ではなくデモンストレーションとして実施することとし、近隣都県の授産施設等へ働きかけを行い、5グループが参加した。いずれも日頃から培った技術でそれぞれが工夫を凝らしたすばらしい作品を完成させ、見学者や大会関係者の関心も非常に高く、好評を得たところである。
 さらに、第22回大会では正式競技とし、職種名も「紙製品再利用」に改めて実施することとしている。

3 その他の動き

(1) 競技会場の変更

 第21回大会後に参加選手等に対して実施したアンケートの結果を踏まえ、選手、見学者等の交通の利便等を勘案し、第22回大会では、従前から会場としてきた雇用促進事業団千葉職業能力開発促進センター(千葉市稲毛区六方町)のほかに、当協会障害者職業総合センター(千葉市美浜区若葉)を新たに競技会場に加えるとともに、開会式、閉会式を当該総合センターで行うこととした。

(2) 大会の名称の変更

 先の第140回通常国会で「障害者の雇用の促進等に関する法律」の一部改正法が可決、成立したことを受け、第22回大会から、大会の名称を、従来の「全国身体障害者技能競技大会」から「全国障害者技能競技大会」へ変更することとしている。

4 今後の課題

 本大会は、毎回、全国のほとんどの都道府県から参加選手を得て、各部門において真摯に技能が競われているところであるが、今後より幅広い地域の幅広い層から参加をいただくとともに、より多くの方々に大会を見学していただくことができれば、大会は、一層充実したものになると考えられる。各方面の協力をあおぎつつ、これまで以上に素晴らしい大会を開催できるよう努めていきたい。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年11月号(第17巻 通巻196号)37頁~39頁