音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

1000字提言

Up To You (アップ トゥ ユウ)

山内義郎

 日本マクドナルドという会社に入社して早や17年が経過した。その間さまざまな仕事に従事したが、どの部署でも共通していることがある。それは「Up To You(アップ トゥ ユウ)」である。これは直訳すると「あなた次第」であり、一見すると冷たく感じられるが、実は社内で使用される場合にはさまざまな意味をもっている。今私は社員採用を担当する部署にいるが、そこでは応募者に「チャンスは平等」「実力主義」と訳して伝えることが多い。
 身体障害者の採用の場面でもこのことは脈々と息づいている。民間企業では法定雇用率は1.6%と定められているが、それ以上になった場合に何%が上限なのか、どこが適正なのかは明示されていない。その先は各企業の「Up To You」なのである。
 今、当社では3%の達成に向けて前進中である。この数字には何か根拠があるのかといえば、実はない。強いて言えば、ここ数年間で蓄積した経験値やノウハウからはじき出された“勘ピュータ”上の数字である。全国にちらばる店舗への配属を前提とした雇用であるため、正直にいえば入社後の全員を日々フォローすることはできない。当社は来年の4月には5000名の社員数となる。3%といえば単純計算でも150名の在籍である。目の前には見えないが、自分の手と目が届く範囲から算出された数字であるといえる。
 不思議なのは経営トップからは「何%にしなさい」という指示のようなものは一切ない。
 「マクドナルドは何事も科学的に分析し、それに基づいたマニュアルが完備され…」と、周りからはよく言われるが、実は意外と社員一人ひとりの能力や個性、やる気や使命感に頼っていることが多い。身体障害者の雇用については、この数年で何とか法定雇用率を達成したばかりであり、担当者のために完備されたマニュアル等はなく、まさしく手作り状態である。身体障害者採用の担当は私で3代目であるが、現在では2.7%前後で推移しており、ようやく自社目標を達成できそうな気配となってきた。
 ところで、先日来日した米国マクドナルドの人事関係者によると米国マクドナルドでは、やはり自社目標で5%を掲げ達成しているらしい。身体障害者に対する歴史や文化、取り組み方の違いはあるものの、胸をはってその関係者に「日本も同じ%になった」と、言えるように頑張らねばと思う。

(やまうちよしろう 日本マクドナルド㈱人材開発部)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年12月号(第17巻 通巻197号)38頁