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列島縦断ネットワーキング

兵庫・第5回兵庫県「希望の船」紀行

大隅幹夫

1 はじめに

 この「希望の船」事業は、(財)兵庫県手をつなぐ育成会が、兵庫県から受託して4年に1回実施しているもので、今年でちょうど20年、第5回目の事業を実施しました。

2 「希望の船」実施概要

(1) 目的

 兵庫県下の在宅心身障害者(児)とその保護者が、船上に集い、日頃経験のできない船旅を楽しみ、幅広い体験学習と相互の親睦と理解を深める交流活動を通じて、心身障害者(児)の社会参加の一層の促進を図ります。
 また、阪神大震災を機に大きく盛りあがった、学生等のボランティアに活動の場を提供し、障害者に対する理解を深めるとともに、将来のボランティア活動の中心となる人材育成及び、ひょうごたすけあい運動の推進に努めます。

(2) 行き先

 大分県別府市周辺

(3) 日程

 平成9年7月6日(日)~8日(火)の2泊3日

(4) 使用船

 “ふじ丸”(大阪商船三井船舶㈱)2万3000トン

(5) 参加人員

 在宅心身障害者(児)と保護者398人、知事・役員・事務局員19人、ボランティア(福祉活動員)100人、生活指導係12人、県・市福祉事務所職員等(生活指導員)48人、医師・看護婦8人、講師等10人、合計595人。

(6) 経費

 約4500万円(県委託料、参加保護者負担金等)

3 今回の「希望の船」の特色

(1) 阪神大震災後の一大イベント

 平成7年1月17日未明、突然阪神・淡路地区を襲った大震災の復興に全力投球し、財政的にも苦境に立つ兵庫県が、障害者福祉に対する特別な配慮のもとに実施できた今回の事業でした。

(2) 貝原兵庫県知事と障害者との深い絆

 公務多忙な貝原知事が乗船、親しく障害者と接し、ゲームなどに打ち興じてくださいました。
 本人や親がどれほど親近感をもち、心強く思ったか計り知れません。

(3) 初めての試み―県民ボランティアの活躍―

 阪神大震災で、ボランティアの力を認識したわけですが、目的にもあるように今回は、広く県民を対象にボランティアを募集しました。
 多数の応募があり、ボランティアに対する関心の深さが現れました。

(4) 大分県と大分県育成会と交流

 毎回、大分県側には大変お世話になっていますが、今回も早朝からの大勢の心暖まる歓迎式、夜遅く降雨の中の大分湾での見送りなど、交流がますます強まり、希望の船の大きな財産となりました。

4 日程及び事業

(1) 7月6日(日) 出航日

 ・12 : 30 県警音楽隊の演奏のなか、多数の見送りをうけ神戸港出港
 ・15 : 00 オリエンテーションのあと、“ひょうご1周ジャンケンDEすごろく”ゲーム(知事ほか全員の参加)
 ・16 : 30 カラオケ、似顔絵、輪投げ、スタンプラリー
 ・17 : 30 全員による七夕飾りと、「七夕祭りと星の話」(ふじ丸女性船員)
 ・20 : 30 SHOW TIME(歌と踊り、マジック、大道芸など)

(2) 7月7日(月) 2日目

 ・ 7 : 00 船内で大分県・大分県育成会による歓迎式、花束・記念品交換
 ・ 9 : 00 雨の中バス13台に分乗し、ハーモニーランド(遊園地)到着。自由行動
 ・14 : 00 アフリカンサファリ見学。バスにより広大な園内1周
 ・16 : 00 別府鶴見園着。入浴、休憩、夕食会
 ・20 : 50 大分県関係者多数に見送られ大分港出港
 ・21 : 00 船内でのカラオケ、ディスコ大会

(3) 7月8日(火) 最終日

 ・ 8 : 00 ふじ丸操舵室見学。似顔絵、輪投げコーナー、ロープワーク(ふじ丸船員)
 ・11 : 00 お別れ会(セレモニーと歌と踊り)
 ・15 : 00 神戸港入港、下船、解散

5 今後の事業展開

 幸い今回は、参加者全員に病気、事故その他トラブルもなく、みんなが元気に2泊3日の旅を楽しみ、無事帰宅することができました。
 全員を対象にしたアンケート調査では、「参加してよかった」と高く評価してくれましたが、「情報の伝達が遅い」「大人数で待ち時間のロスが多い」など、次回の希望の船に向けて貴重な改善意見をいただきました。次回はもっと楽しく、ためになるものに仕上げていきます。ご期待ください。
 また、船の事業のない年度は、昭和42年以降“より早く”“より高く”をモットーに新幹線を使って「富士登山」=希望の旅(1泊2日)を実施してきました。
 これが昨年度から「但馬空港」から「大阪空港」を結ぶ=ふれあいの翼(1泊2日)となり、県内の瀬戸内側と日本海側との障害者の相互交流を行っています。これも兵庫県からの委託事業です。
 また、これらの事業にとどまらず、県の育成会として、より高度な情報発信基地として、そしてより重要な政策提言団体として脱皮していきたいと考えています。

(おおすみみきお (財)兵庫県手をつなぐ育成会事務局長)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1997年12月号(第17巻 通巻197号)57頁~59頁