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特集/21世紀の施設像

施設体系の現状と今後の方向性

寺島 彰

1 施設体系の現状

 現在の障害者関係社会福祉施設の種別と施設入所者の状況は、表1、2のようになっています。

表1 現行の障害者関係社会福祉施設の種別
  身体障害者
(身体障害者福祉法)
精神薄弱者
(精神薄弱者福祉法)
精神薄弱児・身体障害児
(児童福祉法)
精神障害者
(精神保健福祉法)
生活施設 常時介護 身体障害者療護施設   重症心身障害児施設(※)  
家庭代行 身体障害者福祉ホーム 精神薄弱者通勤寮
精神薄弱者福祉ホーム
精神薄弱者地域生活援助事業
(精神薄弱者グループホーム)
  精神障害者福祉ホーム
精神障害者地域生活援助事業(精神障害者グループホーム)
更生施設 身体障害者更生施設
・重度身体障害者更生援護施設
・肢体不自由者更生施設
・聴覚・言語障害者更生施設
・視覚障害者更生施設
・内部障害者更生施設
精神薄弱者更生施設 精神薄弱児施設
・精神薄弱児施設
・第一種自閉症児施設
(※)
・第二種自閉症児施設
精神薄弱児通園施設
盲ろうあ児施設
・盲児施設
・ろうあ児施設
・難聴幼児通園施設
肢体不自由児施設
・肢体不自由児施設
(※)
・肢体不自由児通園施設
(※)
・肢体不自由児療護施設
精神障害者生活訓練施設
作業施設 身体障害者授産施設
・身体障害者授産施設
・身体障害者通所授産施設
・重度身体障害者授産施設
・身体障害者福祉工場
精神薄弱者授産施設
・精神薄弱者授産施設(通・入所)

・精神薄弱者福祉工場
  精神障害者授産施設
・通所型
・入所型
精神障害者福祉工場
地域利用施設 身体障害者福祉センター
・身体障害者デイサービスセンター
補装具製作施設
視聴覚障害者情報提供施設
・点字図書館、点字出版施設
・聴覚障害者情報提供施設
*盲人ホーム(予)
*精神薄弱者デイサービスセンター(予)    

注1)生活施設等の分類は、昭和57年3月の身体障害者福祉審議会答申での分類を参考としている。
注2)柱書は法律上[根拠条文]の名称。「・」は施設等基準上の分類。
注3)太字は入所・利用を行政が決定する施設、明朝体は契約等による施設。
注4)(※)印は、病院又は診療所の設備・人員を要件としているもの。なお、身体障害者療護施設の医務室は診療所とされている。
注5)〈 〉で囲んだものは、事業への予算補助として位置づけ。
注6)*…(予)は予算事業。

 

表2 施設入所者の状況
平成8年10月1日現在
施設の種類 施設数 定員 在所者数 従事者数
総数 4,688 223,892 199,757 126,181
身体障害者更生援護施設 1,394 46,995 42,837 30,928
 肢体不自由者更生施設 41 1,791 1,026 959
 視覚障害者更生施設 14 1,455 1,138 475
 聴覚・言語障害者更生施設 3 175 142 100
 内部障害者更生施設 6 407 314 124
 身体障害者療護施設 285 18,014 17,857 13,712
 重度身体障害者更生援護施設 71 4,911 4,315 2,544
 身体障害者福祉ホーム 24 369 310 112
 身体障害者授産施設 85 4,228 3,742 1,529
 重度身体障害者授産施設 127 8,311 8,018 3,048
 身体障害者通所授産施設 195 4,872 4,573 1,893
 身体障害者福祉工場 35 1,782 1,402 493
 身体障害者福祉センター(A型) 37     661
 身体障害者福祉センター(B型) 203     2,677
 在宅障害者デイ・サービスセンター 133     1,368
 障害者更生センター 10 680 172
 補装具製作施設 26     211
 点字図書館 73     576
 点字出版施設 13     158
 聴覚障害者情報提供施設 13     116
児童福祉施設 816 47,384 38,154 35,112
 精神薄弱児施設 291 17,376 14,185 10,622
 自閉症児施設 6 298 225 514
 精神薄弱児通園施設 223 8,151 6,847 4,342
 盲児施設 16 516 202 295
 ろうあ児施設 17 641 236 304
 難聴幼児通園施設 27 876 710 422
 肢体不自由児施設 69 7,699 5,014 6,351
 肢体不自由児通園施設 81 3,340 2,562 1,668
 肢体不自由児療護施設 7 410 286 239
 重症心身障害児施設 79 8,077 7,887 10,355
精神薄弱者援護施設 2,449 128,937 126,030 60,831
 精神薄弱者更生施設(入所) 1,125 76,247 75,310 40,488
 精神薄弱者更生施設(通所) 255 9,854 9,342 4,179
 精神薄弱者授産施設(入所) 213 13,660 13,329 6,294
 精神薄弱者授産施設(通所) 656 24,980 24,204 8,733
 精神薄弱者福祉工場 25 735 639 274
 精神薄弱者通勤寮 113 2,683 2,563 680
 精神薄弱者福祉ホーム 62 778 643 183
その他の社会福祉施設等 29 576   91
 盲人ホーム 29 576 91
精神障害者社会復帰施設 285 5,407 4,065 1,764
 精神障害者生活訓練施設 98 2,075 1,385 784
 精神障害者福祉ホーム 81 817 560 270
 精神障害者入所授産施設 11 314 178 88
 精神障害者通所授産施設 91 2,091 1,882 588
 精神障害者福祉工場 4 110 60 34

                         平成8年度社会福祉施設等調査より

 身体障害者更生援護施設は、障害種別、障害の程度、施設の目的に応じて19種類に分けられ、平成8年社会福祉施設等調査によると、施設数は1394か所、在所者数は約4.3万人となっています。施設は、社会復帰をめざす訓練の場としての更生施設、作業の場としての授産施設、常時介護を必要とする者を対象とする生活の場としての療護施設等に大きく分けられ、さらに細かく施設種別があります。療護施設の待機者が多い一方で更生施設の入所率が低いという実態があります。
 精神薄弱者援護施設は、施設の目的により7種類に分けられ、平成8年社会福祉施設等調査によると、施設数は2449か所、在所者数は約12.6万人となっています。更生施設、授産施設等に分けられ、入所率はほぼ100%に達しており、また、地域的な偏在がみられます。更生施設は、入所者の長期滞留化により待機者数が増加しています。
 障害児施設は、児童福祉施設としての位置づけになっており、障害種別、施設の目的等により、10種類に分けられ、平成8年社会福祉施設等調査によると、施設数は816か所、在所者数は約3.8万人となっています。少子化の影響等により、障害児施設では一般に入所率が低くなっていますが、重症心身障害児施設の入所率は高く、需要が大きいことが伺われます。
 精神障害者社会復帰施設は、施設の目的等により5種類に分けられ、平成8年社会福祉施設等調査によれば、施設数285か所、在所者数約4000人となっています。利用率はそれほど高くなく、保健所の斡旋により利用者と施設とが直接利用契約を結ぶ方式をとる点で、措置として行われる身体障害者更生援護施設等の場合と施設の利用方式が異なっています。

2 今後の方向性

 平成9年12月9日に発表されました身体障害者福祉審議会・中央児童福祉審議会障害福祉部会・公衆衛生審議会精神保健福祉部会合同企画分科会による「今後の障害保健福祉施策の在り方について(中間報告)」によれば、今後の施設体系を考える場合の検討の視点として以下のことが示されています。

(1)障害者の年齢や能力に応じた施設の在り方を考える

 ア 乳幼児からの障害者については、障害児施設において早期療育を実施し、養護学校等の卒業後に障害の度合いに応じた就労・活動・生活の場として障害者施設をとらえるというような人生の流れに沿った適切な施設の在り方を検討すること。
 
 イ 主として重度の中途障害者が利用する施設については、利用者の実態を勘案し、地域生活を目指した社会生活力を高めるための援助等その処遇の在り方を検討すること。
 
 ウ 生涯の各段階において、障害の度合いや社会生活力の度合いに応じ、公営住宅や一般のバリアフリー住宅などとの役割分担も踏まえて障害者の生活の場としての施設体系を検討すること。
 
 エ 高齢障害者の処遇の在り方については、高齢者施策での対応も含めて検討すること。

(2)医療の関わりがどの程度必要かという観点から施設の在り方を考える

 障害の重度・重複化に伴い医療との関係が重要性を増しており、身体障害者更生施設と専門的なリハビリテーション機能を有する病院との関係等障害者施設と医療機関との関わりの中でそれぞれの施設の役割、連携の在り方を考えること。

(3)就労、活動との関係の中で施設の在り方を考える

 ア 授産施設や福祉工場について、一般企業での雇用が可能な入所者については、労働行政との連携の下に適切な移行を図るとともに、デイサービスや小規模作業所等との関係の中での位置付けについても考えること。
 
 イ 更生施設については、就労、活動といった点をどこまで担うのか考えること。

(4)地域に根ざした施設の在り方を考える

 ア 障害者施設について一層の小規模化を図ることを検討すること。
 
 イ 生活の場と活動の場を分離し、生活施設から訓練、作業、生きがい活動等のため他施設に通所できるような方途を検討すること。
 
 ウ 障害者施設の資源が地域で活用されるように、ホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイ、地域生活(療育)支援センター等の様々な機能を備えること。
 
 エ 災害等の緊急時における地域の障害者の避難場所、障害者に必要な用具の備蓄場所等としての機能を果たすこと。

(5)生活の質(QOL)を高めるという観点からの施設の在り方を考える

 ア 居室個室化や夫婦のための居室の設置等施設における処遇の充実、職員配置の見直し等を行うこと。
 
 イ 障害者への情報提供等の促進、文化・芸術活動、スポーツの振興、レクリエーション等についてより積極的な社会活動を進めるという観点からの施設の在り方を考えること。
 
 ウ このような観点から視聴覚障害者情報提供施設、身体障害者福祉センターの活用や、各種放送・文化施設、スポーツ施設などを障害者が容易に使えるように条件整備を図ること。

3 当面の課題

 また、同報告において、施設類型に関する当面対応すべき課題として次のことが述べられています。

(1)身体障害者更生援護施設

 ア 身体障害者療護施設については、処遇内容の充実、施設整備の推進、入所基準等の明確化、在宅生活の支援や地域生活への移行の促進を行うこと。
 
 イ 授産施設については、社会経済情勢の変化等を踏まえた在り方の検討、「授産」等の名称の見直しを行うこと。
 
 ウ 重度障害者へ対応するため、医療機関との連携や施設における医療的な処遇の在り方について検討すること。

(2)精神薄弱者援護施設

 ア 精神薄弱者更生施設については、一定期間を限定して指導・訓練及び評価判定をすることを目的とする施設として明確に位置付けることを検討すること。
 
 イ 介護を中心とした処遇が不可欠な重度・重複の精神薄弱者等については、日常生活上の生活支援及び生きがい活動支援を目的とする生活施設の形態を創設することを検討すること。
 
 ウ 一定時間以上継続して作業に従事できる者については、福祉的就労の場として授産施設を、また、作業能力のある者については福祉工場の利用を促進すること。
 
 エ 施設類型については、いずれも入所及び通所による利用が可能なものとすること。
 
 オ グループホームの利用要件となっている就労要件は、障害基礎年金等の確実な収入が見込まれる場合には撤廃すること。また、通勤寮、福祉ホームの就労要件を撤廃し、これらの入所者が日中の活動のため授産施設等へ通所できるようにすることについて検討すること。この場合、通勤寮等の施設の性格や公費負担の在り方を検討すること。
 
 カ 高齢化等にともない、入所者に対する適切な医療を確保するため、近隣の医療機関との連携を強化すること。

(3)精神障害者社会復帰施設等について

 ア 精神障害者社会復帰施設については、生活訓練施設、授産施設等の4つの類型が相互に利用できる形態となっており、生活と活動の場の分離が図られていることから、今後もこの形態を基本とすること。
 
 イ 施設の設置や社会復帰施設の利用調整に関する地方公共団体等の役割の強化について検討すること。
 
 ウ 介護を中心とした処置が必要な精神障害者、日常生活動作が低下した精神障害者等のため、介護機能のついた施設形態を研究すること。
 
 エ 引き続き入院治療が必要な長期入院中の精神障害者に対して、医療が保障された生活の場を提供するための施設の在り方について、サービスの提供方法等の面から検討すること。
 
 オ 精神障害者社会復帰施設の整備を図ること。また、精神障害者や精神疾患に対する差別と偏見が整備の進まない原因の1つとなっていることから、対応策を検討すること。

(てらしまあきら 厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課障害福祉専門官)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年2月号(第18巻 通巻199号)29頁~33頁