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1000字提言

予算削減に想う

堀内生太郎

 西暦2000年到来を目前に、日本を含むアジア各国は、経済危機を乗り切るために呻吟している。時代の変わり目には嵐が吹くものらしい。
 福祉関係の方々にお会いすると、資金難による運営の厳しさを訴えられる。平成10年度の政府予算が決まり、各種の補助金が削減されている。これまで比較的順調に拡大してきた障害者福祉施策に影響が出てくることは避けられない。
 関係者としてはこのような事態を傍観する訳にはいかず、補助金がだめならば次善の策を求めて、民間助成団体に対する助成申込が年々増加している。私共の財団の例では、平成9年度4000万円の枠に対し579件、7億3000万円という驚異的な応募があった。
 「運悪く選に漏れた」というよりも、「僥倖にも助成を受けることができた」と表現することが適切な状況にあって、「選に漏れた理由」の照会を受けた担当者は頭を抱え込んだ次第である。
 このように補助金や助成金を申し込む立場からすると、自分の申請案件に対してのみしか関心が向かないのは、むしろ当然のことであろう。
 しかしながらわが国の財政事情はここ当分厳しい冬の時代を迎える。この時代を乗り切って新しい福祉の展開を図るには、関係するところだけでなく「広く他の分野」の予算にも目を向けなければならない。ここでいう広くとは「大砲かバターか」ではなく、障害者福祉の関係者ならば障害者福祉予算の中身を細かく分析することであり、差し当たり必要なものとそうでないものとを分別し、次年度の要求に結び付けることである。
 バブル華やかなりし頃は、希望どおりではないにせよ、新しい企画に次々と予算がつき、将来へ向かっての大きな希望を抱くことができたのが、今はこの有り様である。しかしながら冷静に考えてみると、無駄ではないが緊急度の低い事業や、もう少し質素にできるような会合など、かなり贅沢な資金の使い方をしていたことはなかったであろうか。
 予算項目の優劣評価は容易ではないが、一律カットだけは御免蒙りたい。行政担当者と同様、民間団体や関係者が等しく予算に目を通し、客観的に評価を行い、その結果を次の予算、施策に反映させることによって、厳しい時代においてもなお輝く未来への期待をつなぐことができよう。

(ほりうちせいたろう 財団法人安田火災記念財団専務理事)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年3月号(第18巻 通巻200号)25頁