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1000字提言

マニュアルというもの

山内義郎

 「マクドナルド=マニュアル」と言われることが多い。その数は2万5000項目に及ぶが、それは時代とともに変化しており、これまでの累計を考えればその数はおそらくその10倍以上にはなるであろう。もっとも実際には誰も数えたことはないが…。
 その内容は、店舗運営(製造・販売等)や機械の保守点検等に関するものが1番多く、人に関する部分は意外と少なく、そこは社員各自の個性や能力に任されている。このマニュアルが、障害者を雇用する上で予想以上の威力を発揮した。極論すれば、店舗運営に関するマニュアルがあったからこそ障害者雇用が成功したと言えなくもない。
 「誰でもがいつでも温かくおいしい商品をお客様に提供することができる」が、マニュアルの基本である。障害者の8割が店舗で勤務する当社において、全国にちらばる障害者を本社にいる私がトレーニングすることは不可能である。自然、配属先の店長に全面的に委任することになる。その時に活躍するのがマニュアルである。もともとは障害者専用につくられたものではないため、各店の状況で多少改良はするものの、ほとんどそのまま使用されている。
 障害者が使用するマニュアルにはかなり詳細な記述がされている。例えばフィレオフィッシュ。最初は「オーダーを確認する」であり、最後は「完成したことを告げる」である。また、それを補足するものとしてVTRやカセット等、自分の目や耳でも確認できるものもある。紙面の都合とマニュアルが社外秘書類になっているため、ここに掲載することはできないがお許しいただきたい。
 しかしながらマニュアルは万能ではない。最低限これだけは守って欲しいというベースであり、単なるツール=道具である。
 むしろそこから先のどうやって理解し活用していくか、が重要なポイントである。そのためには、それを使用し教えることのできる人が必要であり重要である。当社の社員の仕事は、それぞれ担当している業務の遂行ばかりでなく、部下の育成も重要な仕事と位置づけられている。むしろ人材育成が本来の仕事と言っても過言ではない。
 このマニュアルという有効な道具の存在と、人材育成は大切な仕事という会社のポリシーが、融合してこそのマニュアルである。

(やまうちよしろう 日本マクドナルド㈱人材開発部)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年4月号(第18巻 通巻201号)30頁