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特集/検討中!これからの障害者施策 パート2

関係三審議会合同企画分科会中間報告の評価と今後への期待

最終報告へのささやかな5つの提案

北野誠一

 私に与えられたスペースはわずかなので、中間報告への評価はパスして、提案のみをさせていただくことにする。

提案1 「作業部会」を起こせ!

 合同企画分科会のメンバー構成では、だれもがイニシアティブを取りにくく、今後も行政主導で進む可能性が高い。ここは国際的動向にも詳しい若手の研究者と現状の改革を目指す若手の障害当事者を入れた「作業部会」を起こして、そこが最終報告素案を作り、全体でそれを審議する方式が望ましい。これだけのメンバー、特に人権問題に明るいメンバーがそろっていて、「新長期計画」や「障害者プラン」よりも引き気味の報告となったのは、行政主導の審議方法に問題があると思われる。各メンバーが素案に対して、何を付け加え、何を削除しようとしたのか、メンバー個々人の責任が明確になるような審議内容等の情報公開が望まれる。

提案2 グループホームを基本に!

 先進諸国における障害者支援施策の共通目標である「家族と施設による保護から、アパートやグループホームでの地域生活支援へ」を、もっと明確に打ち出す必要がある。たとえ短期においてでも、それと矛盾するような施策や表現はいただけない。
 国の「障害者プラン」で入所施設の数値目標が明記されていることが、どれだけ各自治体の長期計画の足を引っぱっているかが、分かっていない。
 そこで、グループホームに関する提案を3つ。
 ①グループホームの補助金を、入所施設の措置費レベルにまずは引き上げ、逆に入所施設の日中活動を切り離すこと。
 さらに、どんな重い障害をもっていても、本人と家族の希望に基づいて、成人した障害者がグループホームで生活できるように、本人への必要な介助に応じた補助金体制をとること。
 ②グループホームの設置費については、痴呆高齢者のグループホームで検討されているような補助金制度を打ち出すこと。
 ③グループホームの生活は在宅生活と遜色ない、本人らしい選択と環境を認めること(ちなみに、カナダのブリティッシュコロンビア州では、施設はすべてグループホーム等の地域生活支援に変わっている。それが成功したのは、施設よりもグループホームの生活の質のほうがよかったということにつきる。それがあれば、利害関係者のうち、本人と家族は間違いなくグループホームの推進派となりうる)。

提案3 施設再編・改革をもっと明解に!

 合同企画分科会のメンバーには人権推進派も多く、昨今の施設の不祥事等を踏まえて、いくつかの提案がなされているが、さらに以下の5点を加えていただきたい。
 ①「障害者基本法」に、障害者の施設及び在宅での生活におけるよりよい生活を選択する権利と、最も制約の少ない自由な環境でサービスを受ける権利を明記する。
 ②①に基づいて、各自治体において、障害当事者と施設入所(経験)者の参画のもとで「施設サービスガイドライン」を作成すると共に、それを使ってモニターする制度を、たとえば地域の市民オンブズマン等を中心に起こし、サービスのレベルアップと人権侵害をチェックし、早期に問題解決を図る。
 ③職員の研修と利用者の自立のために、施設の1割程度の職員と利用者を、その希望等に基づいて他の施設と半年程度の交換留学をするモデル事業を起こして、数年後に全施設で義務づける。
 ④法人理事会を公開すると共に、理事会のメンバーに施設利用者代表と家族代表及び地域のオンブズマン代表を入れることを義務づける。
 ⑤各施設に複数の権利擁護担当の職員(社会福祉士)を配置し、(ア)入居者委員会の立ち上げと、それが施設の運営に参画することを支援、(イ)入居者の事故や人権侵害の防止と措置機関等への報告の義務づけ、(ウ)本人の希望に基づく本人支援計画の作成とその実施のモニタリング、等を行わせる。

提案4 特有の介助ニーズをもっと鮮明に!

 介護保険制度との関連で、障害者に対する介護サービスについては、「障害者特有の需要にも配慮しつつ、高齢者のサービスと比較して遜色のないようにしていくことが基本である」としている。しかしながら、介護保険で示されているモデルでは、一人暮らしの重度障害者は想定されておらず、介護認定の最重度のランクでも、現在東京や大阪で自立生活をしている重度障害者の介助サービスと比べると遜色がありすぎる。たとえば(ア)独立した生活へのニーズ、(イ)「生活の場と活動の場」の分離と、それゆえの移動支援を含む社会活動への介助支援ニーズ、(ウ)各種生活アドバイスニーズ、(エ)手話通訳、点訳等のニーズ、(オ)同性介助のニーズ等の、介護保険において保障されていないニーズに対応できる介助制度が求められる。
 中間報告のメンバーであり、全社協療護施設協会会長の徳川氏が『月刊福祉』98年4月号で述べているように、「デンマークのオーフツ方式のように、公的な給付を障害者本人が受け取り、自由にサービスを選択して購入できる方式」を、自立生活を希望する全国の重度の障害者に導入すべきである。

提案5 精神障害者・難病障害者の地域生活支援をもっと本気で!

 精神障害者については、他の先進諸国と比較して、入院期間が異常に長いことや、差別偏見による社会復帰の妨げ、あるいは地域住民の施設反対等の問題点をはっきりと指摘している。ところが関連法案の見直しをひかえてか、踏み込んだ提案に欠けるうらみがある。本人と家族が最も必要としている、身近な相談体制と緊急時支援体制、そして家族を保護者とすることなくアパート暮らしのできる支援体制が必要である。
 最後に難病障害者については、ALS等の障害者を療護施設での対応ではなく、できる限り地域で生活できる支援システム、つまり地域介護と地域看護の展開が求められる。

(きたのせいいち 桃山学院大学教授)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年5月号(第18巻 通巻202号)22頁~24頁