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特集/検討中!これからの障害者施策 パート2

関係三審議会合同企画分科会中間報告の評価と今後への期待

「中間報告」の評価と期待

石橋俊一

 障害関係三審議会が合同企画分科会を設け審議に入ったというニュースは、公私関係者に大きな関心と期待を抱かせました。
 関心は、その名のとおり、障害関係の三審議会が同じテーブルにつき総合的に審議するまでになったことに対してであり、さらに期待は、今後の障害者施策について積極的な方向を打ち出すであろうということからでした。
 別の見方をすれば、合同企画分科会の存在は、障害者の保健と福祉をめぐる施策を総合的に明らかにする課題に遭遇しているわが国の今日的な状況を物語ると同時に、歴史的な意義をもっているといっても過言ではないでしょう。
 さて、まず中間報告の評価についてですが、全体的には、施策の変遷過程と障害者の現状、これをとりまく施策課題を洗い上げ、基本理念を明らかにし、基本的、あるいは具体的な施策の方向を打ち出していることで問題や課題把握の「一助」になることで評価します。
 また、個別的には、基本理念を明らかにしたことと、小規模作業所の位置づけを明らかにしたことで評価できますが、他は常日頃、問題意識をもつ障害者自身、あるいは行政関係者、障害ごとの関係施設・団体(以下当事者団体という)などが問題にし課題にしていることをまとめたという印象が拭いきれないといえば言い過ぎでしょうか。
 次に、私なりに感じたことを率直に述べさせていただきます。
 あえて指摘しておきたいのは、「はじめに」の項に関してです。
 施策の変遷について整理されていることは当然のこととして理解できますが、しかし、問題なのは行政施策の変遷のみに焦点をあてていることです。
 わが国の障害児・者施策は、おおまかに言って昭和20年代からの当事者団体の日常的な実践活動を受け継ぎながら、昭和56年の「国際障害者年」を契機に、行政当局の努力に合わせて、さらに大きく発展してきたことは衆目の一致するところです。施策の発展には常に当事者団体が寄与していたことを見過ごしてはならないと思います。
 一例を挙げれば、重症心身障害児・者が法の谷間にあるとして、重症心身障害児・者を守る会が社会に訴え、児童福祉法改正の原動力となり、命を守り育てる制度が誕生しましたし、また、障害者基本法の前身である心身障害者対策基本法は、総合的施策が必要だとして、全国社会福祉協議会・心身障害児福祉協議会の運動によって制定された経緯があります。さらに、今回その位置づけを試みた小規模作業所は、養護学校の皆義務化を契機に全国各地域の心ある先進的な人々の努力により無認可施設としてスタートし、保育所に次ぐ民間性を発揮した身近な施設としてその社会的使命を果たし、その後制度化されるに至っています。
 このように、施策の発展には、当事者団体や、あるいはときとして障害者個人も含めて寄与しており、公私関係者の相関関係、あえていえば、相互努力または協動によって推進されていることを忘れてはならないと思います。
 この視点に立ち、施策の変遷をまとめることで冒頭に触れたように、真に「歴史的な意義」のある報告になると思います。
 なお、基本的理念については、「支援」と「尊重」と「支え合い」に加えて、「共生」の柱だても必要ではないかと思いました。
 いずれにしろ、中央主導型から地方主体型へ、保護から自立支援へという施策の方向は時代の要請であり、21世紀を視野に入れた今後の障害保健福祉施策の指針として最終報告がまとめられることを期待しております。

(いしばしとしかず 佐野国際情報短期大学社会福祉学科教授)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年5月号(第18巻 通巻202号)25頁・26頁