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ハイテクばんざい

遊ぶ

―視覚障害のある子どもも遊べるおもちゃ―

高橋玲子

 近年ではおもちゃもハイテク時代。リアルな音や手の込んだ映像を巧みに使って子どもたちを魅了するTVゲームなどが、その代表選手といえるでしょう。
 目の見えない子どもたちの遊びの世界にも、「ハイテクおもちゃ」は福音をもたらしてくれているといえるでしょうか?
 ここでは、目の不自由な子どもたちも一緒に楽しめるおもちゃ「晴盲共遊玩具」の概要と、特に「ハイテク」を駆使した、そんなおもちゃたちの例をご紹介します。

晴盲共遊玩具とは?―「小さな凸」の提案―

 視覚障害児と健常児とがともに楽しめるおもちゃのことを、私たちは「晴盲共遊玩具」と呼んで、その普及活動に努めています。「晴盲共遊玩具」は一般の玩具メーカーが、一般市場向けに開発したおもちゃで、街のおもちゃ屋さんでだれにでも簡単に購入できる物でなければなりません。
 開発の段階でほんのちょっぴり配慮を加えることで、障害をもつ子どもにも優しいおもちゃができあがるのでは? そんな考え方がもとになって、玩具メーカーをとりまとめている公益団体、社団法人日本玩具協会が、1990年に普及活動を開始しました。「印刷されたマークの代わりに小さな突起を付けるだけで、目の見えない子どもたちにも優しいおもちゃができあがる」―そんな実例から、この活動は「『小さな凸』の提案」と呼ばれています。
 現在この活動に参加している玩具メーカーは、合わせて27社。150点以上のおもちゃが「晴盲共遊玩具」として認定されています。「晴盲共遊玩具」には、そのパッケージにラブラドール・レトリバー犬の顔をかたどった「盲導犬マーク」がつけられていて、それらのカタログは、日本玩具協会から年1回、墨字(普通文字)版と点字版とが発行されています。
 「晴盲共遊玩具」に望ましい配慮の例として、以下のようなガイドラインが定められています。

① 電池を使うおもちゃについて

●電池蓋の位置と開け方が手で触って確かめられる。
●電池を入れる方向が手で触って確かめられる。

② スイッチのあるおもちゃについて

●スイッチの状態が手で触って確かめられる。
●スイッチの『ON』に『凸』表示がある。
●スイッチが『ON』になった時、音で知らせる機構がついている。

③ 色の区別が必要なおもちゃやゲームについて

●2つ以上の物を識別する必要がある物は、色の違い以外に手触り、音などで識別できる。

④ 動くおもちゃについて

●手の離れた所へ行っても音で位置が確認できる。

⑤ その他

●実物を模写した物はなるべく形、手触りが実物に近いおもちゃである。
●遊びの過程と結果を視覚を使わずに把握できるおもちゃである。
●手で触っても崩れたり、ずれたりしないおもちゃである。
●必要に応じて、点字のシール等が用意されているおもちゃである。
●目をつぶっても楽しく遊べるおもちゃである。

 「盲導犬マーク」は、1992年に、国際玩具産業協議会で「国際共遊マーク」として承認を受け、現在ではイギリス、アメリカ、スウェーデンでも日本と類似した「晴盲共遊玩具」の推進活動が行われています。
 アメリカでは、日本と同様に一般のおもちゃ屋さんで購入できる物であることを条件に、以下のようなおもちゃが「晴盲共遊玩具」として奨励され、カタログが作成されています。

しゃべったり、音がしたりするおもちゃ

 最近のおもちゃの多くが、すばらしい技術を駆使して子どもたちに語りかけてくれます。言葉をしゃべったり生活音を再現するようなおもちゃは、周囲の音に子どもたちの関心を引きつけて、音や言葉を効果的に使える能力を育みます。

色が鮮やかでコントラストのはっきりした、光を発するおもちゃ

 シンプルな線や形がはっきりと浮き立っていて、鮮やかな色や光を発するようなおもちゃは、子どもの視覚の活用を最大限まで促します。

仕掛けがおもしろくてバラエティーに富んだ感触のおもちゃ

 ダイヤル、スイッチ、ボタンなど、触ったり動かしたりすると楽しい仕掛けのついたおもちゃは、指や手を使った探索行動を促します。このようなおもちゃをとおして、子どもたちはこれから生活の中で触れることになるさまざまな感触と出会うのです。おもしろくて柔軟な表面やゴムのような感触は、子どもたちに人形やガラガラやボールとのかかわりのきっかけを与えます。

思考力や創造性を刺激するおもちゃ

 形填めパズル、ブロック類、街を模したおもちゃ、レールをつなぐ鉄道のおもちゃ等は、全体がどのような部分から成り立っているかの理解を助け、考えて組み立てていく想像力を刺激します。点字のついた知育ボード、文字や数字のおもちゃ等は、読みながら学ぶ楽しさを子どもたちに教えます。

運動や探索行動を促すおもちゃ

 登ったり乗ったりして遊ぶおもちゃ、運動器具や遊びに動きを伴うような遊具類は、子どもたちの自発的な動きや探索行動を引き出します。体全体を使った動きは、歩いたり走ったりスポーツをする際に必要な筋力を育て、ガラガラや指人形や楽器のおもちゃは、細かい筋肉や手を使う能力を育んで、美しくスムーズな体の動きを可能にしてくれるのです。

協力し合う、分かち合う等の社会性を育てるおもちゃ

 ゲーム類や、想像力を使ったごっこ遊びは、友達や家族や先生とのかかわりを子どもたちに促します。ゲームは協調性を育て、分かち合いは仲間づくりや人間関係の基礎を形づくります。

さまざまな人・場所・物事への認識を発達させるおもちゃ

 抱き人形、ぬいぐるみ、指人形、乗り物、街を模したおもちゃ等は、日常生活の音や景色に子どもたちの意識を引きつけ、家や職場で大人がしている仕事を子どもたちにも見せて、創造的な役割遊びの発展を助けます。

(たかはしれいこ 株式会社トミー)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1998年5月号(第18巻 通巻202号)38頁~43頁