音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

介護保険におけるサービスの範囲の概要

厚生省老人保健福祉局介護保険制度施行準備室

1 介護保険におけるサービス(保険給付)の基本的考え方

 介護保険制度は、来年4月から施行されることとなっており、関係者はむろんのこと世論の関心も高まっている。とりわけ、施行の準備行為として本年10月から要介護認定の申請、審査・判定が開始されることを考えると、介護保険の実質的な出発は目前に迫っている。制度の施行準備としては極めて重要な最終局面に入っており、現在は保険者である市町村をはじめ、これを支援する都道府県、国の行政はもとより事業者・施設などの関係者を含め制度の施行準備に努めているところである。以下、介護保険における保険給付の基本的な仕組み、範囲等を紹介する。

 介護保険における保険給付とは、被保険者に保険事故が発生したときに、被保険者に給付されるサービスであり、被保険者は保険給付を受ける権利を有することとなる。

(1) 被保険者

 介護保険における被保険者は、第1号被保険者と第2号被保険者の2種類であり、第1号被保険者とは、市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者である。また、第2号被保険者とは、同様に市町村の区域内に住所を有する40歳以上65歳未満の医療保険加入者である。

(2) 保険事故

 介護保険における保険事故は、被保険者に係る日常生活の基本的な動作の全部または一部について常時介護を要すると見込まれる状態(要介護状態)及び要介護状態以外の状態で日常生活を営むのに支障がある状態(要介護状態となるおそれがある状態)の2種類である。

(3) 保険給付の基本的理念と受給者

ア.保険給付の基本的理念

 保険給付は次の基本理念をもって行うこととされている。

(ア) 要介護状態の軽減、悪化の防止・予防の重視
 保険給付は、予防の考え方を重視し高齢者ができる限り要介護状態にならないようにすることが重要である。また、介護が必要な状態になっても、その悪化を防ぐため、市町村の老人保健事業など関連施策との連携を図りながら、予防やリハビリテーションの充実・利用等に配慮して行われる必要がある。また、介護保険の給付対象サービスは、医療と密接な関係を有するため、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。

(イ) 被保険者の選択による、サービスの総合的・効率的な提供
 介護保険制度における介護サービスの利用の仕組みは、高齢者が自らの意思に基づいて利用するサービスを選択し決定することを基本に、多様なサービス提供主体による保健、医療、福祉にわたる各サービスが総合的、一体的、効率的に提供されるサービス体系を確立することにしている。被保険者が利用しやすく、適切な介護サービスが円滑かつ容易に提供される利用者本位の仕組みに配慮することが必要である。このため、被保険者自身がサービスを選択することを基本に、専門家が連携して身近な地域で高齢者及びその家族を支援する仕組みである介護支援サービス(ケアマネジメント)の仕組みを確立し、これに基づいて在宅サービスを利用することを、保険給付を行ううえでの基本としている。

(ウ) 在宅における自立した日常生活の重視
 高齢者の多くが、できる限り住み慣れた家庭や地域で老後生活を送ることを願っていることから、介護保険制度では在宅介護を重視した支援体制の確立を目指している。このため、介護保険法においても、「保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない」と規定している。

(要介護者及び要支援者の区分)

  要介護者 要支援者
第1号被保険者 要介護状態にある65歳以上の者 要介護状態となるおそれがある状態にある65歳以上の者
第2号被保険者 要介護状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要介護状態の原因である身体上または精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(特定疾病)によって生じたものであるもの 要介護状態となるおそれがある状態にある40歳以上65歳未満の者であって、その要介護状態となるおそれがある状態の原因である身体上または精神上の障害が加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病であって政令で定めるもの(特定疾病)によって生じたものであるもの


イ.保険給付の受給者

 介護保険における保険給付の受給者は、被保険者のうち、保険者である市町村によって上記の要介護状態にあるとして「要介護認定」を受けた者(要介護者)または要介護状態となるおそれがある状態にあるとして「要支援認定」を受けた者(要支援者)である。市町村は、被保険者が保険給付を受ける要件を満たしているか否か。すなわち保険事故に該当しているか否かを確認するために、全国一律の基準(要介護認定基準)を用いて、要介護認定または要支援認定を行うこととしている。

2 具体的なサービス(保険給付)の種類

 介護保険制度における保険給付は、要介護者に対する介護給付、要支援者に対する予防給付及び市町村が条例で定める市町村特別給付の3種類である。

(1) 介護給付

 介護給付は、要介護者に対して行う法定の保険給付であり、介護給付はさらに以下のとおり細分される。

ア.居宅介護サービス費

(ア) 訪問介護(ホームヘルプサービス)
 訪問介護員(ホームヘルパー)が居宅において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話を行うサービス

(イ) 訪問入浴介護
 居宅を訪問し、浴槽を提供して行われる入浴の介護を行うサービス

(ウ) 訪問看護
 看護婦等が居宅において療養上の世話または必要な診療の補助を行うサービス

(エ) 訪問リハビリテーション
 理学療法士や作業療法士が居宅において心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行う理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うサービス

(オ) 居宅療養管理指導
 病院、診療所または薬局の医師、歯科医師、薬剤師等が居宅を訪問し、療養上の管理や指導を行うサービス

(カ) 通所介護(日帰り介護・デイサービス)
 老人デイサービスセンター等に通わせ、その施設において、入浴、及び食事の提供その他の日常生活上の世話、機能訓練を行うサービス

(キ) 通所リハビリテーション(日帰りリハビリテーション)
 介護老人保健施設、病院等に通わせ(主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生省令で定める基準に適合していると認めたものに限る)、その施設において、心身の機能の維持回復を図り、日常生活の自立を助けるために行われる理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うサービス

(ク) 短期入所生活介護(ショートステイ)
 短期入所施設等に短期間入所させ、その施設において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練を行うサービス

(ケ) 短期入所療養介護
 介護老人保健施設、介護療養型医療施設に短期間入所させ(その治療の必要の程度につき厚生省令で定める基準に適合していると認めたものに限る)、その施設において、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うサービス

(コ) 痴呆対応型共同生活介護(痴呆性老人グループホーム)
 痴呆の状態にある要介護者(痴呆に伴って著しい精神症状を呈する者及び痴呆に伴って著しい行動異常がある者並びにその者の痴呆の原因となる疾患が急性の状態にある者を除く)について、その共同生活を営むべき住居において、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うサービス

(サ) 特定施設入所者生活介護
 有料老人ホーム、介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)等に入所している要介護者等について、介護サービス計画に基づき行われる、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練及び療養上の世話を行うサービス

(シ) 福祉用具貸与
 厚生大臣が定める福祉用具の貸与を行うサービス

(ス) 居宅介護福祉用具購入費補填
 入浴または排せつの用に供する福祉用具等、厚生大臣が定める福祉用具(特定福祉用具)を要介護者が購入した場合に行われる給付

(セ) 居宅介護住宅改修費補填
 手すりの取付け、その他の厚生大臣が定める種類の住宅改修を要介護者が行った場合に行われる給付

イ.居宅介護サービス計画費(ケアマネジメント)

 要介護者等が居宅サービス及びその他の居宅において日常生活を営むために必要な保健医療サービスまたは福祉サービスの適切な利用等をすることができるよう、要介護者等の依頼を受けて、その心身の状況、置かれている環境、要介護者等及びその家族の希望等を勘案して、居宅サービス計画(指定居宅サービスの種類、内容、担当者等を定める)を作成し、その居宅サービス計画に基づく指定居宅サービス等の提供が確保されるよう、居宅サービス事業者などとの連絡調整その他の便宜の提供を行い、及び要介護者等が介護保険施設に入所する場合に、介護保険施設への紹介その他の便宜の提供を行うサービス

ウ.施設介護サービス費

 施設サービスとは、介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護療養施設サービスをいう。

(ア) 介護福祉施設サービス
 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)に入所する要介護者に、施設サービス計画(介護保険施設入所(入院)者について、施設が提供するサービスの内容、担当者等を定めた計画。以下同じ)に基づいて行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行うサービス

(イ) 介護保健施設サービス
 介護老人保健施設に入所する要介護者に、施設サービス計画に基づいて行われる看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療ならびに日常生活上の世話を行うサービス

(ウ) 介護療養施設サービス
 療養型病床群等(もっぱら要介護者を入院させる部分に限る)に入所する要介護者に、施設サービス計画に基づいて行われる療養上の管理、看護、医学的管理の下における介護その他の世話及び機能訓練その他必要な医療を行うサービス(療養型病床群等とは、療養型病床群のほか、老人性痴呆疾患療養病棟及び介護力強化病院を含む)。

(2) 予防給付

 予防給付は、要支援者に対して行う法定の保険給付である。予防給付は以下のとおり細分され、それぞれの給付の内容は介護給付に準ずる。ただし、予防給付には施設給付がなく、また、痴呆対応型共同生活介護(痴呆性老人グループホーム)が含まれない。

ア.居宅支援サービス費
イ.特例居宅支援サービス費
ウ.居宅支援福祉用具購入費
エ.居宅支援住宅改修費
オ.居宅支援サービス計画費
カ.特例居宅支援サービス計画費
キ.高額居宅支援サービス費

(3) 市町村特別給付

 市町村特別給付は、要介護者または要支援者に対して、市町村が条例で定めるところにより行うその市町村独自の保険給付である。要介護者に対して行う介護保険制度上の保険給付であることから、要介護状態の軽減もしくは悪化の防止または要介護状態となることの予防に資する保険給付である必要がある。

3 利用者負担

 介護保険制度における利用者負担は基本的に定率の1割とされており、サービスの利用に応じた応益負担が原則となっている。また、施設入所の場合については加えて食事の定額負担(標準負担額)が必要となる。ただし、居宅介護サービス計画費(ケアマネジメント)の給付は10割給付であり利用者負担は生じない。これは、要介護者のニーズに適応したサービスを効率的・計画的に提供する観点から、居宅サービス計画を作成してサービスを受けることを保険給付を行ううえでの基本とする考え方によるものである。なお、居宅サービス事業者・介護保険施設が利用者に対して提供したサービスのうち保険給付の対象外であるもの(日常生活費等)については、全額利用者が負担することとなる。
 また、低所得者への配慮については、1割の利用者負担が著しく高額となった場合には、利用者の負担軽減を図るため、その負担が一定額を上回らないよう、高額介護サービス費の支給が行われる。高額介護サービス費の具体的な支給要件、基準額等については、費用の負担の家計に与える影響を考慮して、今後、政省令で設定されるが、その際、低所得者については基準額を低く設定する等の配慮が行われる。また、施設入所の場合の食事に係る標準負担額についても、低所得者には低額の設定を行うこととしている。