尾登悦子さん・佐々木信行さん・大澤たみさん
ピープルファースト話し合おう会は、1995年に活動をスタートした、知的障害者の本人の会です。
「ピープルファースト話し合おう会」の3人の方にお話をうかがいました。
尾登悦子さんは、ヘルパーを利用して地域で一人暮らしをしています。大澤たみさんは、この会の代表です。佐々木信行さんは、この会の事務局長です。東京都のケアガイドラインの委員でもあります。
◆尾登さんは一人暮らしをしていて、ヘルパーを利用しているそうですが、いま、受けているホームヘルプサービスの状況を教えてください。
私は毎日入ってもらっています。週4回は、12時から夜の8時までの8時間。夜だけの人は、6時から9時までで週3回。全部で7人から8人の人が入っています。
公的なヘルパーは、週33時間です。それだけでは足りないので、あとは自分でヘルパーを雇っています。
◆どんなことをお願いしているのですか。
できないことだけ手伝ってもらっています。洗濯などは自分でできるんですが、お湯を沸かしたり、ご飯を炊いたり、おかずを作ってもらっています。スーパーなどに買い物に行くときも一緒に行ってもらいます。献立は私が決めて、必要なものを買ってくれます。
それから、一緒に映画を見に行くこともあります。この前は好きな歌手の写真なんかも、買いに行ったりしました。
お金の管理は、コーディネーターの人と一緒にやっています。その人は、週1回ヘルパーとしても手伝ってくれます。
◆ヘルパーは、いつから利用しているのですか。ヘルパーを利用するきっかけは何でしたか。
私は家族がいないので、だれかに面倒をみてもらわなきゃならないんです。それで、ガイドヘルパーや介助者の人にみてもらっています。
家にいて、やることがいっぱいあってどうしようかなー、と考えていたときに、「1人で考えていないで、ヘルパーさんが必要なんだよ。使っていいんだよ」って教えてもらって、私もヘルパーを使う権利があるんだってわかって、いろんなところを紹介してもらったんです。
◆ヘルパーはどんなとき必要ですか。
1人だと寂しいときもあるし。遠いところへは1人では行けないので、私の場合、ガイドヘルパーが必要だと思います。街に出かけるときや急病になったとき、カラオケや買い物に行くときも、一緒について行ってもらいたいです。
◆ヘルパーに来てもらってよかったと思いますか。
はい。いまお願いしているヘルパーさんは、最初の月は、今日はここをやりましょう。次に来たときはここをやりましょうと言って決めながらやっていってくれたんで、その辺はすごく楽なんです。私が自立できたのも、その人たちがちゃんと教えてくれたからなんです。
◆尾登さんの話をうかがって、できないところ、難しいところを教えて(手伝って)くれる人が必要ということがわかりました。最後に、同席の2人に具体的にどんな事を手伝ってほしいのか聞いてみました。
大澤
難しいところっていうのは、銀行でのお金の出し入れの手続きとか、役所の手続きとか。手伝ってもらいたいことは、料理をするときにあらかじめ何を用意しておいたらいいかを教えてくれるとか、そうすれば料理の時間が少なくてすむので。
それから、知的障害のある人は、町に出たときに道が分からなくなってしまったり、駅でも何番線に行けばどこに行けるのか、分からない人もいます。
カラオケに行ったとき、部屋の取り方とか何時間使うといくらになるとか。洋服を買いに行ったとき、お店の人もアドバイスをしてくれるけど、別にいたほうがいい。あとで気に入らないと思ってもそれが取り替えられないときもあるし。そういうときは、不満が残ったり…。そんなときに納得できるように話をしてくれる人がいたほうがいい。
佐々木
家に届いた手紙の内容が分かりにくいので、いつもは家族に手伝ってもらっています。1人で生活した場合は困ると思います。5年前にパスポートを取ったときは、お姉さんと一緒に行ってもらいました。
それから、僕は東京都のケアガイドラインの委員会に委員として出席しています。そのとき、僕の隣にサポーターの人がついてくれて難しいところを教えてもらっているので、とても助かっています。
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
1999年7月号(第19巻 通巻216号)