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音楽ですべての壁を越える
ロックバンド「シャンテ」

熊野伸一

 世界で唯一の手話ボーカルと視覚障害者のロックバンド「シャンテ」。「シャンテ」とはフランス語で「歌声」という意味。あらゆる壁を歌で越えたいと付けた名前です。年齢、国境、障害のあるなしにかかわらず音楽であらゆる壁を越えたいと考えています。
 シャンテが結成されたのは、今から19年前。大阪市立盲学校の先輩後輩の3人で集まったのがきっかけです。最初は、文化祭や地元のイベントに参加するぐらいの限られた活動しかしていませんでしたが、6年前、参加したイベントの手話通訳をしていた山本智子との出会いが、シャンテの運命を決定付けました。何気なく話をする中で手話通訳としてではなく、手話を一つの楽器ととらえて、ステージの真ん中で手話をしてほしいと依頼しました。
 山本も気さくにその言葉を受け止めて、ここに初めて手話ロックバンド「シャンテ」が誕生しました。
 思えば音楽好きの仲間が集まったバンドだったのに、手話という新しいパワーが加わったことにより、想像以上に観客に訴えかけるバンドになり、これまでのお客さんの反応が一転し、マスコミの取材も後を絶たないようになりました。
 今まで身近な小学校、幼推園から老人ホーム、果ては海外のロサンゼルスからタイまで公演を行い、この5年間で延べ800回を超えるコンサートをしてきました。今年も200回を超えるコンサートを予定していますが、やっぱり最高なのは、お客さんとのふれあいです。握手をしたりおしゃべりをしたりとコンサート後はできる限りふれあいの場をもっています。それが励みとなり、活力となり「シャンテ」の炎は消えることはありません。コンサートの形態もお客さんに風船を配り振動で音を感じてもらったり、文字を動かして歌詞を表現したりと工夫をこらしてあらゆることに挑戦しています。曲もオリジナルを中心に、視覚障害者とは思えない演奏をめざし日夜練習の日々です。
 世界で唯一の手話ボーカリスト山本智子は、ステージだけでなく会場を駆け回り、舞台と会場をひとつにする天才的な才能をもっていると多くの人から評価を受けています。
 夢は、やはりテレビの音楽番組に出演すること。NHKのドキュメンタリーだけではなくて、実際に障害者バンドとして出演することが夢です。それとカラオケボックスで自分の歌を歌ってみたいですね。CDやライブビデオも多く完成させていますが、まだまだマイナーの域を出ていません。
 全国のどんな小さなところでもコンサートを1回1回重ねることが私たちの使命であり、やらなければいけないことだと思っています。
 みなさんもぜひ一度「シャンテ」のステージを見に来てください。楽しさいっぱいのライブです。とかく障害者や福祉は暗くて堅い…。しかし、シャンテのモットーは楽しさです。
 全国のどこかでお会いできることを心から楽しみにしています。そしてそのときは、必ず声をかけてくださいね。

(くまのしんいち シャンテリーダー)

●メンバー

新田 裕志(ギター&ボーカル)
井口 信明(パーカッション)
熊野 伸一(ベース)
山本 智子(手話ボーカル)