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帰郷

我妻武

 この映画は、私が養護学校高等部を卒業した年(1978年)に劇場で見た。
 サリー(ジェーン・フォンダ)は、海兵隊大尉の夫ボブ(ブルース・ダン)を不安ながらベトナムへ送り出す。一方、ルーク(ジョン・ボイト)は、ベトナムで脊髄を負傷し、アメリカへ戻ってきたが、軍のリハビリ病院で寝たきりの生活を送っていた。ルークは、自暴自棄になっていたが、ボランティアとして病院にやってきた、かつてのクラスメイト、サリーと再会する。献身的なサリーの働きかけに自暴自棄になっていたルークの気持ちもほぐれてくる。いつしか2人は惹かれ合い、無意味な戦争について考え始める。
 ある日、病院の中でベトナム戦争が元で精神を病んでいたルークの友人が自殺をする。そこで、ルークは行動を起こす。もう自分のような体験はさせたくないと若者たちに話をして歩く。そんなときサリーの夫がベトナムで負傷し、ズタズタの精神状態で帰国する。そして、サリーとルークの関係も知られてしまう。

 当時、私は養護学校高等部を卒業はしたものの、進路が決まらず、映画の主人公と同じく自暴自棄になっていた。車いすということで大学進学もままならず、ましてや就職もない。結局、継続療養ということで病院にいた。そんな私の悩みを聞いてくれていた同級生の女の子と見たのだが、主人公のルークが車いすでさっそうと歩き、反戦運動に身を投じる姿は本当にかっこよく映った。特にスポーツカーに車いすを載せて運転しているところや住宅の改造など、自立生活を夢見ていた私にはとても新鮮に映ったのを覚えている。もちろんバックに流れていたローリング・ストーンズの音楽も最高だった。
 私自身、障害をもつ身になって、漠然とはしていたが、社会に対する怒りを感じていた。その怒りの表現が現在の活動につながっているように感じている。ただし、現実は映画の主人公のようにかっこよくはいかないものだなということも日々感じている。

(わがつまたけし 福祉の情報ネットワークメビウスの会)

帰郷

(1978年、アメリカ) 
監督/ハル・アシュビー
出演/ジェーン・フォンダ
   ジョン・ボイト
   ブルース・ダン