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列島縦断ネットワーキング

東京
リハビリテーションにおける連携を求めて
―日本リハビリテーション連携科学学会の設立―

奥野英子

わが国におけるリハビリテーションの発展

 わが国におけるリハビリテーションは、1930年代の高木憲次先生(整肢療護園創設者)による肢体不自由児療育事業に端を発し、1949年にリハビリテーション法とも言える「身体障害者福祉法」が制定され、障害者更生施設等において主に医学的リハビリテーションや職業リハビリテーションが実施されてきました。1963年には日本リハビリテーション医学会が創立され、1965年には「理学療法士及び作業療法士法」が制定されました。
 国際的な動きとしては、1964年に東京でパラリンピックが開催され、翌1965年には汎太平洋リハビリテーション会議が開催されたことも、わが国のリハビリテーションを推進する原動力となりました。1960年代に、ニューヨークに本部を置く「リハビリテーション・インターナショナル(RI)」の中にリハビリテーションの主要4分野として、医学的リハビリテーション、教育リハビリテーション、職業リハビリテーション、社会リハビリテーションの常置委員会が設置されたこと、また、1968年にジュネーブで開催されたWHO医学的リハビリテーション専門家委員会において、リハビリテーションの4分野の定義が出されたことからも、この頃にリハビリテーションの主要4分野が確立したと言えるでしょう。
 わが国では1977年から、医学、教育、職業、社会等リハビリテーションの諸分野に従事する専門家が人的・知的交流を図ることにより、リハビリテーションの現状を把握し、将来への指針を求めることを目的に、「リハビリテーション交流セミナー」が開催されてきました。1987年からは「総合リハビリテーション研究大会」としてさらに発展し、毎年1回総合リハビリテーション研究大会が開催されています。
 現在はリハビリテーションに関連する学会として、日本リハビリテーション医学会のほか、日本理学療法士学会、日本作業療法士学会、日本リハビリテーション看護学会、日本職業リハビリテーション学会、日本精神障害者リハビリテーション学会、日本特殊教育学会など多数の学会が設立されており、各領域における活発な学会活動が行われています。

日本リハビリテーション連携科学学会の設立

 戦後のわが国は、欧米先進国をモデルとしてリハビリテーションを展開し、行政主導によるリハビリテーション施策も徐々に発展してきました。しかし、制度上の壁もあって、関連諸科学の協調に円滑性を欠いたり、分野間やライフサイクルにおける分断が起きていないでしょうか。また、障害のある個々人のニーズに立脚した包括的な研究や、成果の活用に課題が残されているといえないでしょうか。このような課題意識に立ち、専門領域別のリハビリテーションの研究と実践の重要性を認識しつつ、これらの枠組みを越えた新たな研究交流の場を用意するために、1999年3月にリハビリテーション関係者約70人の準備委員により「日本リハビリテーション連携科学学会」が設立されました。
 本学会の目指すものは、リハビリテーション諸科学の有機的連携、現場の実践に即した研究・討議、リハビリテーション分野間のネットワーク、総合的なリハビリテーションの実施等であり、医学、教育学、心理学、社会福祉学、工学などの関連諸科学の研究者、及び医療、教育、福祉、職業などの分野における実践家の共通の広場として機能する学会を意図しています。
 1999年8月現在、全国各地で各種領域のリハビリテーション実践に従事している200人を超える専門家やリハビリテーションの連携的推進に深い関心を寄せる障害当事者が会員となり、研究者・実践家・当事者の良きパートナーシップのもとで、幅広いネットワークが築かれようとしています。

日本リハビリテーション連携科学学会の活動

 日本リハビリテーション連携科学学会は、既存の学会においては焦点としにくい「連携」を学問領域として追求することにあると言えます。現在までに研究があまり行われていないリハビリテーションの研究領域として、リハビリテーション活動の包括性、主体性獲得支援、リハビリテーションにおけるケアマネジメント、地域リハビリテーションシステム、社会生活力支援等がありますが、これらの課題は、他職種・他領域の連携なしには達成できないでしょう。
 このような目的を実現するために、本学会では、1.年1回の研究大会の開催、2.研究誌「リハビリテーション連携科学」の発行、3.会員情報誌としての会報の発行、4.情報ネットワークによる情報の提供、5.各種専門職の連携が必要とされる研究活動の推進等を予定しています。幅広い関係者の参加により、わが国のリハビリテーションのさらなる発展に寄与することが期待されます。
 日本リハビリテーション連携科学学会第1回大会は、「リハビリテーションにおける連携を求めて」のテーマを掲げ、下記のような日程で予定されています。本学会に関心のある方は、電話またはファックスで事務局にお問い合わせください。

(おくのえいこ 日本リハビリテーション連携科学学会常任理事)