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電話リレーサービス

高岡正

 携帯電話がPHSと合わせて5,000万台普及したと新聞で報じられていた。国民の3分の1以上が持っている計算である。
 電話は、音声でいつでもだれとでも交信できる世界共通の通信手段である。現在の社会が電話で成り立っていることは、だれしも異論を唱えない。
 わが国では、聴覚障害者がこの電話が使えないことは、現在の社会のバリアの最たるものといっても過言ではない。就労する際にも電話ができないというと、途端に一人前とは見られなくなってしまう。
 しかし、携帯電話やPHSの電波は補聴器に大きな妨害音を起こすし、携帯電話の音質は難聴者には聞き難く、音量も不足している。高齢化社会で難聴者が急増しているのに厄介な問題だ。
 一時、ポケベルが一世を風靡したが、最近は携帯電話やPHSの文字通信にとって替わっている。聴覚障害者も外出先でも相手と直接交信できるので、利用者が増えている。しかし、文字通信の規格がまちまちなため交信機種が限られているし、発信したメールがすぐに届かないことがある。
 これまで聴覚障害者はファックスを電話代わりに使っていたが、同時双方向交信の電話とはまったく別のメディアというべきである。電子メールも便利なものであるが、やはり電話とは別のメディアである。
 欧米では電話リレーサービスが普及しており、これは聴覚障害者がタイプで電話局に電話し、交換手がそれを読んで相手に声で話すという、まさに「リレー」するものである。
 アメリカではADAによって、電話会社は電話リレーサービスが義務づけられ、ニューヨーク州では年間数百万コールもあるそうだ。各社がリレーサービスの品質向上を競っており、聴覚障害者が好きな会社を選べる。最近は、相手には自分の音声で伝え、相手の声だけを文字で見るVCOというサービスも人気が出ており、テレビ電話で手話を伝えるビデオリレーサービスや、オペレーターがタイプ入力する代わりに音声認識ソフトも実験されたりと、新しい技術をどんどん採り入れている。
 21世紀を前に、官民の支えも得て、あらゆる聴覚障害者が力を集め、何とかしてわが国にも電話リレーサービスを実現したい。

(たかおかただし 社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長)