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見て理解できる視覚情報の保障を

藤永忠

 東京では、「聴覚障害者の参政権保障委員会」(委員長:市川明臣東京都聴覚障害者連盟理事)を組織し、聴覚障害者の参政権の保障について協議し、運動を進めている。
 たとえば、政見放送に、手話通訳や要約筆記は付いておらず、聴こえない有権者には候補者の生の声は届かない。各候補者が行っている街頭演説でも、ほとんどの場合、手話通訳は付かない。大演説会のような大きな催しの際には、手話通訳が付いている時もあるが、そういう場合は聴衆が多く、手話通訳が見やすい場所を確保するのに一苦労するのが常である。
 そういう状況のなかで、私たちは運動を展開し、東京都選挙管理委員会と懇談を重ねてきた。都の選管もいろいろ配慮してくださり、かなり私たちの運動にも協力的だが、やはり壁となるのは「公職選挙法」である。
 私たちは、すべての政見放送に手話通訳と要約筆記通訳が付くことを望んでいる。最近、ようやく参議院比例代表選挙等に手話通訳が付けられるようになったが、あくまでも政党の任意に任されている。つまり、その政党が手話通訳を必要としないと判断すれば、私たちは、その政見を見ることができないのだ。全候補者政党に義務付けてほしいと思う。
 すべての選挙に手話通訳を付けることに関しても、「現在は手話通訳士の資格取得者に地域差が大きく、全国一斉に同じく取り組むことができない」というのが当局の見解である。確かに地域差が大きいのは事実だが、その条件整備を待っていなければならないのだろうか。それほど、私たちの政見を見る権利は、軽視されることなのだろうか。まずは、できる地域から開始し、試行錯誤を重ねていくという発想があってもよいのではないか。単に手話通訳が付けばOKという訳でもない。通訳者の立つ位置や表示に問題があり、見えにくい場合もある。本当の意味で通訳者が通訳しやすい環境をつくり、視聴者たる聴覚障害者にとって見えやすい工夫も必要であろう。
 私たちは、また立会演説会の復活も要望している。現在は廃止になってしまっているが、手話通訳付きの立会演説会で、生の声を見て、投票できる機会をぜひつくってもらいたいと思う。
 要は、聴覚障害者が見て理解できる視覚情報を多くして、候補者を選ぶ=政治に参加する機会の保障を求めているのである。そしてこの民主主義社会において、もっとも政治の光が必要な私たち障害者の参政権が、まだ十分に保障されていない状況を、少しでも改善していきたい。

(ふじながただし 「聴覚障害者の参政権保障委員会」委員)