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情報バリアフリーな社会を

岩下恭士

 去る11月9日、毎日新聞社主催のシンポジウム「情報バリアフリー社会とボランティア」が東京で開かれた。音声ブラウザなど支援技術の開発で、これまでインターネットなどの情報通信技術へのアクセスが困難だった障害者も健常者と同じように電子メールやホームページの閲覧ができるようになった。しかし、問題はパソコンのセットアップや音声ソフトの組み込みなどのサポートが受けられる環境が整っていないこと。シンポジウムでは、パソコンやインターネットを活用して障害者や高齢者の情報アクセスを支えるさまざまな市民活動に焦点を当てて、情報バリアフリー社会の実現に不可欠な人的支援のあり方を模索した。
 当日は、聴覚障害者への情報保障としてPC要約筆記と手話、またテレビドラマの字幕提供などで利用されているインターネットのリレーチャットサービス(IRC)で、全国の聴覚障害者向けに実況中継を行った。
 一方、視覚障害者への配慮として、パワーポイントなどでスクリーンを使用する際に「こちら」「ここ」などの指示語を使わず、言葉だけで分かるように説明してくれるよう講演者に依頼した。
 障害者の参加を中心にしたイベントではごく当たり前な配慮のように思えるかもしれないが、主催者の立場から見てみると、いろいろな問題があることに気付かされた。
 たとえばスクリーンを見やすくするために室内の照明を暗くすると、手話通訳者や要約筆記入力者の手元が見にくくなるとか、時間がおしているためにやむなく早口で話すと入力が追いつかなくなること。また、テレビ番組の一部を編集して紹介するケースでは、映像に依存し過ぎて、講演者自身の思いが一部の聴衆には伝わりにくいこと、などなど。
 つまり、ここで言えるのはシンポジウムの会場を含めて、本来、技術というものは五感を利用できる健常者にとっては便利なものでも、障害者の利用を想定して作られてはいないということである。そんな中で、聴覚障害者のみならず、会場に来ていたいく人かの健聴者から「字幕があってわかりやすい」との声を聞くことができたのはせめてもの救いだった。
 郵政省は2007年までにすべての放送の字幕化を目指している。来るべき超高齢化社会にあって、この恩恵に浴する者は少なくあるまい。
(バリアフリーシンポの特集はユニバーサロン http://www.mainichi.co.jp/universalon/に掲載)

(いわしたやすし 毎日新聞サイバー編集部)