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TEACCHプログラム特別セミナー
「TEACCHにおける自閉症の人たちの援助システム」を開催して

廣﨑留見子

 日本自閉症協会は平成元年10月6日に、社団法人として厚生省の認可を受け、毎年8月に「自閉症短期集中セミナー」を開催してきました。今年はセミナーの10周年記念として、アメリカ・ノースカロライナ大学よりゲーリー・メジボフ教授を招き、TEACCHプログラム特別セミナー「TEACCHにおける自閉症の人たちの援助システム」を開催しました。
 TEACCHプログラムの実践が国際的に評価され、イギリス、スウェーデン、デンマークでも積極的に研究され、それぞれの国独自の取り入れ方が行われています。
 今回の企画は、TEACCH本場の実践を語っていただき、自閉症にかかわる方々に、自閉症の正しい理解と、療育・教育・福祉等それぞれの立場での支援のあり方を考えてもらう機会として、研究会と全国7会場での講演会を開催しました。

▼8月15日(日)

『東京公開講座』(東京・国立オリンピック記念青少年総合センター)

 TEACCHプログラム概説・自閉症の特性・評価・構造化された指導・TEACCHと日本の協力関係。参加者174人

『自閉症研究会の開催』(東京ワシントンホテル)

 メジボフ教授と日本自閉症協会副会長石井哲夫(白梅学園短期大学学長)、山崎晃資(東海大学医学部教授)、佐々木正美(川崎医療福祉大学教授)、太田昌孝(東京学芸大学教授)らの理事により研究会を開催した。

▼8月17日(火)

『TEACCHの概略について』(札幌市・北海道自治労会館)

 構造化された教育(structured teaching)の基本概念と、それが子どもの発達段階によってどのように適用されているかを明らかにし、自閉症の特性とTEACCHの教育アプローチの関連について述べた。参加者279人。

▼8月18日(水)

『ノースカロライナの生活支援システム』(宮城県・仙台市福祉プラザ)

 自閉症の人とその家族をサポートする、ノースカロライナの生活支援プログラムを紹介し、子どもが自閉症と分かった時から成人まで、多様な支援ストラテジーとプログラムが存在することを紹介。多様な支援システムの必要性やそのストラテジーの説明と考察を述べた。参加者309人。

シンポジウム―診断について―

 「診断を告げるには十分な指導メニューをもつことが必要である」との発言を受け、司会の「イギリスのローナー・ウイングは、診断を告げることは大事であり重要なことである。フォローアップがなくても告げるべきであると言っていますが」との問いに、メジボフ氏は「大賛成です。もちろんフォローアップがあるほうがよりよく、そうありたいと思っています。親を動揺させることであっても告げることは大切です。アメリカでは親は、子どもに何か問題があると気づいた時専門家に聞きます。しかし、診断名を教えてもらえないと親は問題を探るために別の専門家に聞きます。お金、エネルギー、時間の無駄が生じます。無駄を止めることに意義があります。次の段階に立ち向かえるからです」と述べた。次に「TEACCHは情緒を大事にしていないのでは」との問いには、「個別的に、治療的に両親の訴え、不安に耳を傾けます。自閉症の理解を深めるということが両親を支えることになります」と述べた。

▼8月20日(金)

『TEACCHプログラムの国際的評価』(東京・有楽町朝日ホール)

 TEACCHプログラムは、さまざまな視点から厳しい評価を受けてきた。技法としての有効性、子どもの進歩、家族への影響、良好な予後についてデータをもとに検証する。TEACCHのように複雑なプログラムでは、効果的な評価方法のためにもそれぞれの構成部分に分けて考えなくてはならない。これらの構成要素について述べ、説明した。参加者576人。

▼8月21日(土)

『TEACCHの乳幼児プログラム』(名古屋市・朝日ホール)

 自閉症とその家族を対象にした、TEACCHの幼児期のプログラムの概要の解説と考察を述べた。直接的な教育プログラム、コミュニケーションや社会的なやりとりの経験、そして両親に対するトレーニングが、幼児期の介入の主要な要素であることを明らかにする。また、低年齢のうちに自閉症であることが確認され、集中的な介入プログラムが開始されることの重要性についても強調した。参加者280人。

▼8月22日(日)

『自閉症・21世紀への展望』(大阪市・クレオ大阪)

 TEACCHの現状と、将来のニーズの方向性について説明した。TEACCHプログラムのもつ豊富な伝統を継続性をもって維持することが重要であり、同時に、新しい技法と情報を取り入れながら、合理的な成長を遂げることも大事であること。この二つの重要性とバランスについて考察したい。TEACCHは継続的に発展し、新しい躍進が約束されていると述べた。参加者281人。

▼8月23日(月)

『京都公開講座』(京都教育文化センター)

 東京会場と同内容、参加者387人。

 以上、いずれの会場もほぼ満席となる申込みをいただきました。自閉症に関するセミナーは、当協会でもほかに4日間のセミナーを2か所で実施し、ほかにも他団体主催のセミナーも開催され、この時期としてはセミナーが集中していたにもかかわらずの盛況でした。自閉症にかかわる方々の熱心さの表れと、事務局一同、励まされる思いでした。

(ひろさきるみこ 日本自閉症協会)