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ハイテクばんざい!

ノーマネットVODシステム

池田智博

 財団法人日本障害者リハビリテーション協会では、平成8年9月より障害者情報ネットワーク(ノーマネット)という名称でパソコン通信をスタートしました。「ノーマネット」という名称は、一般公募で決定したもので、ノーマライゼーションを推進するネットワークを意味しています。
 ここ数年、インターネット利用者の普及が著しく増加していることから、ノーマネットではパソコン通信とインターネットによる情報提供を行ってきましたが、平成11年12月27日でパソコン通信を終了し、インターネットでの情報提供に全面的に移行しました。
 ノーマネットは日本全国の障害者団体など(383団体)からホームページによる情報を提供してもらい、利用者はインターネットを通じてノーマネットから障害者団体関連情報を得るという仕組みになっています。
 また、すべての人がアクセスできるように、ホームページをつくる側に、すべての人がアクセスできるホームページづくりを推進しています。
 そして、今回新たなサービスとして、平成11年6月より試験運用としてスタートしたVODシステムは、すべての人がアクセスできる情報提供システムです。

1 VODとは何か

 VODとは、Video On Demand(ビデオ・オン・デマンド)の略称です。VODは通信網(ISDN、公衆回線など)を用いて利用者が見たい映像をいつでも見ることができる仕組みです。VODの特徴は、映像を利用者側でコントロールできることです。映像の一時停止や巻き戻し、早送りなど、利用者はあたかもビデオテープでビデオを見ているのと同じ状態で情報を得ることができます。

2 VODシステムで何ができるか

 ノーマネットのVODシステムは、従来のVODシステムの、単に動画と音声をインターネット上で流すものとは異なり、最新の技術を用いて動画と音声に加えて、文字情報、静止画像といった素材を組み合わせて映像を配信するものです(図1)。

図1

図1 VODシステムの表示画面 ウインドウ 右側:静止画像 左側:動画像 上下:文字情報  音声がなくても文字と静止画像の説明で映像の内容が伝わるわ。分かりやすい!!

 また、ノーマネットVODシステムでは、SMIL(Synchronized Multimedia Integrated Languageの略、「スマイル」と発音します)やストリーミングという技術を使用しています。
 SMILは、複数の異なるファイルのサポートができるので動画像・音声・テキスト・静止画像からなる映像を構成します。そして、画面のどの部分にいつ表示するかを正確に同期させることができるので、異なったファイルを同時に再生できます。
 また、SMILは簡単で覚えやすいシンプルなテキストファイルなので、どんなテキストエディタでも編集でき、映像のレイアウトも自由にできます。SMILは柔軟性があり、アイデア次第でいろいろな形の情報提供を可能にします。
 たとえば、会議の様子を情報提供する場合に会議の動画像に対して、音声、テキスト、静止画像、別の動画像という組み合わせをしたとすると、視覚障害の方は音声で、聴覚障害の方はテキストと別の動画像で手話の情報を得るというようなことができます。このように利用者がほしい情報を選ぶことができます。
 ストリーミングは、サーバーから連続的に配信されるデータをパソコンで順次受け取り再生する技術です。再生するデータをすべてパソコンにダウンロードせずに、少しずつダウンロードして再生するので、データのダウンロード待ちが少なく、大きいデータの動画像や音声に適しています。
 また、ダウンロードされるデータは利用者のパソコンには保存されないので、データをほかで使用されることはありません。

3 VODシステムの使い方

 ノーマネットのVODシステムは、インターネットに接続すればだれでも利用することができます(図2)。ノーマネットのホームページ(http://www.normanet.ne.jp/)の「VODライブラリ」(http://vod.normanet.ne.jp/)にアクセスすれば利用できます。ただし、ノーマネットのVODシステムを利用する場合は、リアルネットワークス株式会社が提供する再生ソフトReal Player G2が必要です。このソフトは、次のアドレスから無償でダウンロードできます(http://www.jp.real.com/products/player/index.html)。

図2

図2 インターネットにつながる一般的なパソコン 通信網でノーマネットへ接続  見たい時に、見たい映像が見られるのね。映像だと詳しい内容が分かるわ。


 また、VODシステム用のデータも簡単な操作で作成することができます。
1.ビデオカメラで動画像を撮影します(ビデオテープなどがある場合は不要)。
2.撮影した映像をビデオデッキなどで編集します。
3.パソコンでアナログデータをデジタルデータに変換して圧縮します。
 その後にSMILファイルにするソフトを使って静止画像やテキストを組み合わせます。以上のような操作でVODデータを作成することができます。
 ノーマネットVODシステムの仕組みは、図3のようになっています。

図3

図3 VODシステムの使い方【ノーマネット VODシステムの仕組み】 インターネット経由してノーマネットVODサーバーへアクセスし、動画等のデータをとる。

4 VODシステムの活用方法

 図4のようなノーマネットVODシステムの活用方法がありますが、このほかにもアイデアとSMIL技術によっていろいろな活用方法が考えられます。

図4

図4 VODシステムの活用方法 ◆ビデオ紹介 各施設にあるビデオのダイジェスト版を流して紹介する。 他

 たとえば、手話講座としてテキストと動画像を組み合わせれば、利用者は理解しやすくなります。また、施設のイベントなどの紹介で動画像がない場合には、写真などの静止画像を使って順番に表示させるという方法もあります。今後は活用方法について、利用者や情報提供者のアイデアや意見を聞いて、いろいろな活用方法を提案していきたいと思っています。

5 ノーマネットVODシステムの現状と今後の課題

 現時点では、VODデータを作成する側(情報提供者)の技術支援が十分行き届いていないのが現状です。しかし、情報提供者がSMIL技術を習得することによって、今後はVODデータのみならずマルチメディア情報をすべての人がアクセスできるようになります。
 ノーマネットではVODシステムを通じて、利用者や情報提供者のニーズに合ったシステムづくりや技術支援を今後も行っていきたいと思っています。

(いけだともひろ 日本障害者リハビリテーション協会)