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体験
パソコン要約筆記を利用して

 西川薫

 私が初めて要約筆記を知ったのは、パソコン通信をしている時に、友人からパソコン要約筆記の講習会の参加を勧められたことがきっかけでした。
 それまでの私は、聴覚障害者団体にも所属せず、「要約筆記」というものがあることも知らずに、周りの人たちの楽しそうな会話も聞き取ることができずに1人取り残されて、本当に寂しい思いをしていました。
 ところが、この講習会に参加することによって、世界がガラッと変わりました。なんとここでは、話す内容をリアルタイムでパソコンに打ち込んで表示してくれるのです。当時、手話も全然分からなかった私にとっては、「話の内容が分かることってこんなに楽しいことだったのか」と感じたのを、出会いから1年経った今でも覚えています。
 要約筆記には大きく分けて2種類あります。一つは前述したパソコン要約筆記、もう一つは話していることをパソコンで入力する代わりに、ペンでOHPやノートに書いていく手書きの要約筆記です。
 手書きの要約筆記とパソコン要約筆記を比較すると、手書きのほうがパソコンで打ち込むよりも時間がかかるために、一定時間内に聴覚障害者に伝える情報の量が少なくなってしまいます。しかし、その分内容をきちんとまとめて筆記するため、最後に読み返すと、手書きのほうが分かりやすいことが多いということもあります。
 このため、あまり文字を読む速さが早くない人は、どちらかというと手書きのほうが利用しやすいようです。逆に若い年齢層の人たちは、パソコン要約筆記のほうが情報量が多く、微妙なニュアンスも分かる、というように感じます。
 たとえば、聴覚障害者でもいろいろな聴覚レベルの人がいますが、ある程度の残聴能力のある人の中には唇・文章の流れと音声で話の内容をだいたい把握しつつ、要約筆記を見ながら足りない情報を補うような利用の仕方をしている人もいます。そういう人は、言い回しや言葉の「間」などの表現を頭の中でためておきながら、要約筆記の文字を見るので、しゃべっている人の雰囲気を感じ取りながら情報保障を受けることができるようです。
 また、表示自体も感じが変わっていて、たとえば、話者が「○○いや、△△です」と言った場合、普通は「○○」の部分は省きますが、パソコン入力者に余裕がある場合は、この部分を入力してくれるときもあります。
 このように、内容的には絶対表現しなくてもよいようなこともできる場合もあるので、雰囲気を感じ取りやすい、という反面、読む速度が遅い人にとっては読みにくくなる、という面もあります。
 パソコン要約筆記は、聴覚障害者の間でも利用回数が増えつつあるサービスですので、要約筆記者を増やすことも大切ですが、前述のように、利用者の年齢層や状況によって情報量を加減できるような技術を身につけていただきたいなと、利用者としては感じています。

(にしかわかおり 東京都在住)