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障害のある子どもたちは、いま vol.23

障害児福祉の課題(3)
健やかに育つための制度施策

 大塚晃

はじめに

 「社会福祉事業法等の一部改正法律案」が5月29日に参議院本会議で可決され、6月7日法律の名称を「社会福祉法」と変え公布、施行されました。これは、今日の少子・高齢化の進展、家庭機能の低下等の社会変化に伴い、今日の社会福祉制度には、従来のような限られた者に対する保護・救済にとどまらず、児童の育成や高齢者の介護等、国民が自立した生活を営むうえで生じる多様な問題に対して、社会連帯に基づいた支援を行うことが求められるようになった背景があります。
 障害福祉分野においては、ノーマライゼーションと自己決定の実現を目指し、障害者が地域で安心して、自立した生活が営める支援を促進しようとするものです。
 また、厚生省では、平成8年度を初年度とする7か年の計画として策定された「障害者プラン~ノーマライゼーション7か年戦略」がすでに計画の後半にさしかかり、平成14年度の数値目標達成に向け、障害児・者の地域生活を可能にする在宅サービスや社会福祉施設の整備など各種保健福祉サービスの充実について、積極的かつ着実なプランの推進に努めているところです。
 以下、障害児を取り巻く最近の施策を中心に述べたいと思います。

1 地域における支援体制の整備

 障害児が、生まれた地域で安心して生活できるよう、地域療育システムを構築し、各関係機関が連携した、総合的な支援体制を整備することが重要であり、厚生省ではそのために、以下のような事業を積極的に展開しているところです。

(1)障害児通園(デイサービス)事業

 本事業は、通園の方法により、障害のある幼児及び学齢児を対象に、日常生活の基本動作の訓練や集団生活への適応訓練を行うものであり、一つの市町村で実施するのが困難な場合は、広域的観点から複数の市町村で実施することも可能としています。前年度と比較して50か所増の552か所を確保しています。

(2)重症心身障害児(者)通園事業

 在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、通園の方法により日常生活動作、機能訓練等必要な療育を行っており、各都道府県・指定都市ごとに、数を決めて実施していましたが、平成12年度からは、地域の実情に応じて弾力的に行うこととし、前年度と比較して41か所増の159か所分の予算を確保しています。

(3)障害児(者)地域療育等支援事業

 本事業は、おおむね人口30万人(障害保健福祉圏域)に2か所程度の実施施設を指定し、在宅の障害児、知的障害者、重症心身障害児(者)の療育等の相談、指導、各種サービスの利用の援助等を実施するもので、そのうちの地域生活支援事業について、社会福祉基礎構造改革の一環として法定化されました。当事業については、前年度と比較して100か所増の420か所の予算を計上しています。

2 介護等のサービスの充実

(1)障害児・知的障害者ホームヘルプサービス事業

 当事業は、重度の障害のため日常生活を営むのが困難な障害児の家庭等にホームヘルパーを派遣して適切な家事、介護等の援助を提供するものですが、平成12年度においては、ホームヘルプサービス事業の対象を、知的障害者については、重度者から中・軽度者にまで拡大するとともに、障害者に対する訪問介護員(ホームヘルパー)を増員し、サービス体制の充実に努めることにしています。

(2)障害児短期入所(ショートステイ)事業

 本事業は、障害児を養育する家族等の負担の軽減を図るため、障害児施設や知的障害者更生施設等において、一定期間保護等を行ってきたところです。平成12年度から、入所施設において宿泊を伴わない日中預かり(いわゆるレスパイト)の利用を認めるとともに、併せて手続きの簡素化を図ることとしています。

3 その他

(1)障害児通園施設の相互利用制度

 平成10年度から、障害のある児童が身近な地域にある施設の利用を図る観点から、知的障害児通園施設、肢体不自由児通園施設及び難聴幼児通園施設において障害種別を越えて指導・訓練を受けることができる相互利用制度を推進しているところです。

(2)知的障害者通所援護事業助成費(小規模作業所)

 主に、在宅の成人した障害者が通所して作業を行う、いわゆる小規模作業所については、養護学校卒業後の地域の活動の場として、障害児とも大変関係の深い事業です。当事業は、さまざまな形態で弾力的運営が可能なことから、毎年増加する傾向にありますが、平成12年度には、前年度と比較して60か所増の933か所を確保しています。なお、今般の社会福祉基礎構造改革においては、通所授産施設の規模要件や社会福祉法人の資産要件を緩和することにより、小規模作業所の運営団体が、社会福祉法人格を取得し、法定施設に移行しやすい環境を整備する予定です。

(3)障害児施設について

 知的障害児等の障害児施設については、今回の法改正において、障害児の発達保障の観点から、発達の段階に応じた指導を行うために、施設の選択、入退所に当たって、専門的な判断が不可欠であり、専門的な知見を有する児童相談所がかかわる必要があるなどの理由により、措置制度が維持されることになりましたが、施設のサービス評価、苦情解決及び情報開示等の仕組みを作ることにより、施設サービスの質の向上に努め、障害児の権利を擁護することとしています。

おわりに

 今後、障害児とその家族が地域で安心して生活できる支援としては、ホームヘルパー、デイサービス、ショートステイなどの在宅サービスを利用していくことが重要です。この、障害児が地域で普通に生活できる体制づくりを推進していくことこそ、ノーマライゼーション理念の具現化と考えています。

(おおつかあきら 厚生省大臣官房障害保健福祉部障害福祉課障害福祉専門官)

最終回のお知らせ

 1998年6月号から連載の始まった「障害のある子どもたちは、いま」は今回をもって終了とします。