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街なか探検隊 Vol.26

広島
尾道市・三原市 バリアフリーは小さな街から

木之下孝利

 今、僕らの街は「再開発事業」という計画の中で、主に駅前を中心としてとても小ぎれいになってきています。公共の建物にエレベーターが付き、段差の解消が行われ、以前に比べれば大きく変化しました。三原市では駅前に「三原市総合健康福祉センター」という福祉ターミナルが建設されています。この中には市の社協事務局をはじめ、各種の用途に使える会議室やボランティアルームが入っています。駅前にあるという利便性も手伝って、ゆっくりですが、当事者活動にとって使いやすいものになってきています。でも一方では、周辺のデパート・商店等へのアクセスはまだ不十分なままで、肝心な三原駅には、障害者が使える設備はトイレ以外は何も整備されていません。小さな街なので計画はあっても財源が足りないのです。でもその部分は、今のところJR職員等のマンパワーでカバーされていますので、連絡さえ入れておけば、さほど困ることはないと思います。
 観光地については見に行ってほしい所がたくさんありますが、これらもアクセスの確保に向けて計画がなされているところです。でも車いすを使用するような重度の人にとっては、バスやタクシーの整備は行われていません。やむを得ず、車いすで出かけたり移動したりするためには、当センターの移送サービスを使われることをおすすめします。大きなデパートや商店にはスロープやトイレ等は整備されてきてはいますが、残念ながらホテル等ではまだハンディキャップルームを備えた所はありません。これも今後の課題になっています。でも介助者さえ同行できれば使える施設はありますので、問い合わせてみてください。
 次に、当センターのある尾道市について紹介しましょう。
 尾道には新幹線の駅である新尾道駅が障害者対応のエレベーターを備えています。また交通アクセスについても、昨年度からノンステップバスが市街地を走るようになりました。これは広島県では、県庁所在地の広島市に次いで2番目です。まだ2台しか走っておらず、乗務員も使い方に慣れていないせいもあって、常連の利用者のほうが使い方にくわしいというギャグのような場面もありますが、ようやく使えるものになってきています。
 ただ僕たちも悩んでいるのは、尾道という街は文学の街として有名であり、景色も美しい所がたくさんあるのですが、坂道や階段が多く、バス等の移動手段で動くにはどうしても限界があります。現状では、当センターの移送サービスを使う人が多く、僕たちは公共交通機関の充実と同時に、この移送サービスへの補助を求めて、検討しています。道が狭く、山が多い。そんな街並みの中でも四国につながる「しまなみ海道」の拠点都市としての街づくりに向けて、今「第2次尾道市保健福祉計画」の中で再検討しています。公共施設は改造によって、これも当事者の意見を取り入れながら少しでも使いやすい建物に変わろうとしています。
 尾道は瀬戸内海の玄関でもあります。少し意外な話かもしれませんが、フェリーや小さな渡し船等は、実は車いすの人たちにとっても以前から結構使いやすい乗り物になっています。尾道に来られたら、ぜひこれらの船に乗って瀬戸内海の島巡りをしてみてください。文学の街はこれらの島から始まったと言っても過言ではありません。本当にきれいですよ。お金もかかっていませんし、新しい設備があるわけでもありませんが、人と人が行き交う、生活の海が実感できると思います。僕たちもよく使っています。巨大な橋を眺めながら、それでも人々の暮らしは船に依存しているのは、そんな雰囲気にも理由があるかもしれないと思います。
 僕たちの住む街尾道市は人口10万人、三原市は人口8万人です。障害者だけでなく高齢者を含めた人口比率はかなり高くなっています。だからこそ今、こんな地方の街の中でだれもが暮らせる街づくりを願って、いろいろな角度からの動きが起きようとしています。
 尾道市には「ふくしむら」という名前の、いわゆる福祉ゾーンがあります。ここにはデイサービスやヘルパーステーション、福祉専門学校等が立ち並んでいます。本当は街中のもっと便利な所にあればよいのですが、そうしようにも猫の額のような狭い平地ではどうしようもないのです。だからといって、自然を破壊しながら大切な海を埋め立てたりすることも僕たちは反対しています。何とかいい知恵を出し合いながらの街づくりをという願いをもっています。
 在来線の尾道駅前には、テアトルシェルネという多目的ホールが建てられています。この建物は、海岸に面するデパート群と一体となった形でウォーターフロントビルとひとつながりになった、尾道でも一番新しいバリアフリー化した建築物です。ここには先に書いたノンステップバスのターミナルもあり、とてもきれいです。これも尾道の玄関の一つです。
 まだまだ街づくりに関しては、手を加えなければいけない所はたくさんあると思いますが、この街に生きて暮らす僕たちにとっては、ようやくここまできたという気持ちもあります。こんな街ですが、できるだけたくさんの人たちに来てもらい、僕たち障害者が住みよい街づくりにしていくためにも、訪れてくれた人々に、いろいろな意見を当センターに届けてもらえるとうれしいです。
 最初から100パーセントはありません。僕たちの街も初めはゼロからのスタートでした。いつの日かこの小さな街で全国の障害者が集い、これからの参画型社会の育成をめざして、大々的に論議する場を提供できる街へと変えていきたいと思っています。

(きのしたたかとし CILおのみち・障生連)