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交通機関とタバコ(その3)

横須賀俊司

 本誌1月号と5月号で報告した車いす用座席が喫煙車両にしかない問題の第3報をお知らせしようと思う。現段階(2000年7月7日)ではどういった状況にあるかをまず説明すると、こうである。
 昨年12月から5月までの乗車率のデータを集計し終わったので、その結果をもとに、これから乗客に対するアンケート調査を実施する予定であるとのこと。実施時期や内容は未定。乗車率の集計というのは、禁煙席、喫煙席にどのぐらいの割合で乗客が利用しているかを明らかにしたものだという。
その結果に関しては、外部に公開していないから見せることはできないと拒否された。
 そもそも乗車率を調べる意味があるだろうか。一般乗客の利用状況も把握したうえで車いす用座席について考える必要があると言っていた。つまり、車いす用座席付き喫煙車両の3号車を禁煙車両の5号車と入れ替えることができるかを、結果をもとに考えるということだ。乗車率調査の結果は喫煙席の乗車率が高いか、禁煙席の乗車率が高いかだ。3号車を禁煙化し、5号車を喫煙化すると喫煙席が14席減るらしい。したがって、アンケート調査をやれば、喫煙席の乗車率が高ければ喫煙者から文句が多く出て、禁煙席が高ければ歓迎される結果になるだろう。禁煙席の乗車率が高ければ車いす用座席を禁煙車両にする方向に進んでくれるが、そうでない場合には、これからも我慢を強いられることになりそうだ。しかし、そもそも乗車率調査がまやかしであることにお気付きだろうか。
 喫煙者が禁煙席についてもデッキに行けばタバコを吸うことができる。ただデッキまで行く手間がかかるだけである。タバコを吸わない者もデッキに行けばタバコから逃れることはできる。しかし、ずっとデッキにいることなどできない。デッキでは冷暖房が効いていないので、そんなところに2時間も3時間も立ち続けてはいられないからだ。結局、喫煙者はどの席でもタバコを吸うという欲求を満たすことができる。それに引き替え、ノースモーカーは禁煙席に行くしか煙を避けるという欲求は満たされない。だから、喫煙席を減らすことは喫煙者にとって大した問題でないはずだ。
 なぜこんな調査をやっているのか私には理解できない。JRがこの問題に取り組む意志があるのか疑わしく感じる。しかし、声を上げなければ、ますます変革は望めない。戦いはまだまだ続きそうである。

(よこすかしゅんじ 鳥取大学教育地域科学部助教授)