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街なか探検隊 vol.27

福岡
筑後のまちは隠れた見どころがいっぱい

 日高恵美

 福岡県の中心部、JR博多駅から約40分、西日本最大と言われる筑後川を越えると、のどかな田園風景が目の前に広がります。筑後市は筑後平野のほぼ真ん中に位置し、久留米名物の“久留米がすり”も実はここ、筑後市で生産されています。

交通

 筑後市民の交通を一手に引き受けているのは、JR羽犬塚駅。羽犬塚駅に降りてまず驚くのが、筑後市のシンボル“羽犬”を象った巨大オブジェ。大きな壁を突き抜けて大空に飛び立とうとしているかのような羽犬は、7メートルの高さを誇り、駅に降り立つ人々のドギモを抜くこと間違いなし。また、10分おきに上下する羽も必見!
 羽犬塚駅には階段昇降機も整備されています。そのため私たち障害者にとっては利用しやすい駅となっていますが、昇降するのに10分近くかかることや、大きく傾斜するため、座位を保てない重度障害者は、利用するのを躊躇してしまうこともしばしばです。ここにエレベーターが設置されれば、障害者の各方面への活動範囲もよりいっそう広がりを見せると思われます。
 筑後市内にはスロープ付きバスも運行しています。しかしこのバスは、大牟田←→久留米間に2台しか運行されておらず、時間を確認する必要があるなど、車いす利用者が気軽に利用できる状況とは程遠い現状です。
 ボランティア組織の筑後市ボランティア連絡協議会と私の属する自立生活センターちくご(5月にNPO法人となりました)とが共同で、障害者の外出を支援する“サルク”(ちっご弁で歩き回るという意味)を組織し、障害者や高齢者の足となっています。将来的には「筑後の各バスをノンステップバスに!」と期待しています。

名所

 JR羽犬塚駅から国道209号線に出て西へ車を走らせること15分、筑後市一の名所、「船小屋温泉郷」にたどり着きます。赤い橋が目印の船小屋温泉郷にある中之島公園は、矢部川と大きな楠の木がそびえ、夏場は家族連れでにぎわっています。また、九州でも珍しい“炭酸水”が涌き出ており、佐賀県や長崎県など九州各県からもこの水を求めてたくさんの人が訪れます。効能は、飲めば胃腸病に、浴せば心臓病、貧血に効果抜群です。宿泊施設は「ヘルシーパル船小屋」「旅館樋口軒」などがあり、「樋口軒」は筑後地区で初めて昭和天皇が宿泊された宿として有名です。
 今のところ、筑後市内には車いす利用者や障害をもった人が気軽に利用できる宿泊施設がないということが、観光地としては大きなウイークポイントと言えます。今後は、筑後市を九州一、日本一の「バリアフリー観光地」にするため、障害者自身が積極的に外へ出て行き、その必要性を訴えていくことが急務です。なお、筑後市は障害者施設や病院などが多数あり、気軽に外泊や自立体験ができる場所が必要ということで、今年、自立生活センターちくごでは“自立体験室”をつくりました。筑後市に旅行の際は、ぜひご一報ください。

お祭り

 筑後市では年間に大小さまざまなお祭りが催されています。中でも代表的なのが、毎年8月1日に行われる「船小屋花火大会」と9月に行われる「ちっご祭り」です。有明海につながる矢部川沿いで、盛大に打ち上げられる花火を、市民憩いの場である中之島公園から眺めれば、1年間の疲れも癒されるというもの。
 「ちっご祭り」は筑後市最大級のイベントです。駅前通りは歩行者天国となり、大道芸あり、歌謡ショーあり、みこしレース・パレードありと、行政はもとより、筑後市が全総力を上げて取り組むお祭りです。駅前通りや商店街を大行進するパレードは、企業・団体を問わず、市民すべてが参加することができます。障害をもつ人や車いす利用者も多数参加し、街のバリアフリー化を訴えるにはまさに絶好のチャンスとなっています。この機会に自分たちの存在を思いっきリアピールし、前年度はパレード部門で優勝しました。

飲食店

 街としては小さな筑後市。そのため障害者が利用しやすい飲食店を探すのもひと苦労です。そんな中、筑後には珍しく障害者に重点を置いてつくられたお店が、うどん屋“めん楽”です。めん楽は日ごろから深く障害者とのかかわりをもっているオーナーが、このうどん店を開店するに際し、「車いすの人が利用しやすい店に」との思いから構想を練ってつくられたお店です。入口は段差なし、車いすでも入りやすいテーブル、身障者用トイレと駐車場のすべてが完備された、まさに完全バリアフリーの店です。うどん屋“めん楽”は、障害者の外食の強い味方です。筑後の地には、こんな「優れもの」も存在していたんですね。

買物

 最近では筑後市にも電気店やショッピングセンターなど、大型店舗が次々に開店しました。障害者にとっては、トイレや身障者用駐車場などが備わったバリアフリーの場であり、安心してショッピングを楽しめるようになりました。その反面、JR羽犬塚駅前の商店街が少しずつ寂しくなっているのも確かです。これからは商店街の活性化に向けて取り組む必要があります。近い将来には、新幹線も開通する予定の筑後市。こんな自然が豊かで小さな街でも、街並みを探検してみれば、隠れた見所が見つかるものです。殺伐とした都会で疲れたら、心と身体のリフレッシュに、筑後を訪れてみてはいかがでしよう。

(ひだかえみ 自立生活センターちくご事務局スタッフ)