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尼崎市
ノンステップバスの運行100%を目指して
~「人にやさしいバス」への取り組み~

尼崎市交通局

導入のねらい、計画、経過

 平成十年四月四日にノンステップバスの運行を開始してから、二年半余りが過ぎました。現在では、乗合車両一四〇台のうち三一台がノンステップバスで、「人にやさしいバス」として尼崎市域を走行しています。
 ノンステップバスは、乗降口に階段がなく、床面も従来の半分以下の三〇㎝の高さ(車いすでの乗降時には床面がさらに七㎝下がる)になっており、高齢者や障害者、小さい子ども連れのお客様をはじめ、多くの人に快適にご利用いただけるものです。こうしたバスの導入のねらいは、高齢社会の到来や障害者の社会参加の促進といったバリアフリー社会の実現に一役買うということとあわせて、企業の視点として、バス機能の向上により乗客誘致を図るということにありました。
 リフト付バスの採用も検討しましたが、リフト付バスは車いす利用者専用の印象があるのに対して、特に高齢者の利用が多い尼崎市では、「だれでも乗り降りがしやすい」ノンステップバス採用の方向性が定められました。また、実際の導入に際しては、車両購入の財源の確保や道路、停留所施設等の都市基盤整備が必要となり、導入の決定後は、建設部局をはじめ全庁的な取り組みが行われました。
 そして、平成九年度から車両更新に併せて順次導入を図り、平成二十二年度末で一〇〇%を達成するという計画が打ち出されました。

障害者との意見調整も綿密に

(移動の困難な人の意見を市バス経営に取り入れる)

 導入にあたっては、市内の一九の身体障害者団体などに、ニーリングやスロープ板の取り扱いなどを説明し理解を求めました。事業者の責任、利用者の責任についても十分に話し合ったうえ、バス停留所付近での駐車車両の排除など、利用者サイドから警察に対する働きかけが必要なことなども確認しました。現在においても、停留所施設の改善、乗務員の接遇を含めた乗降の取り扱い、点字プレート時刻表の設置(主要ターミナル及び利用客の多い公共施設等に近い停留所に設置:現行一九停留所五七基)等の要望に対して、障害者団体と話し合いを行うなど、その対応方法について検討を重ねています。また、運行路線の設定についても、車両更新の際に事前に説明会を開き、限りある台数の中で、利用実態、地域間の公平を考慮に入れ、バリアフリー化された鉄道駅や病院等を結ぶ路線を中心に運行する旨をご理解いただいています。
 気になる評価ですが、平成十年十一月に兵庫県による尼崎市在住の障害者へのアンケートが実施されました。主な意見として、「これからもノンステップバス導入を希望する」「以前より身体的に楽に目的地に行くことができる」「ノンステップバスの時刻に合わせてバス停へ行く」があげられており、一応の成果が得られていることが分かりました。しかし、「後部に段差があり乗りにくい」「ラッシュ時の混雑が激しい」などの声もあり、今後もなおいっそうの車両の改善が求められます。

これからの課題

(規制緩和の時代を迎えるにあたって)

 バスに限らず交通機関の本来の役割は、〈安全に目的地まで時間通りにお客様を運ぶ〉ことですが、これからは、さらに利用者の快適さや経済性を考慮した事業の展開が求められます。モータリゼーションの発達等により、乗客の減少に歯止めがかからず経営が悪化するという状況は尼崎市に限ったことではありませんが、それを改善するための運賃の値上げや運行本数の減少といった事業者サイドの経営哲学は、もはや利用者には受け入れられません。さらに、平成十三年度からは、乗合バス事業についても規制緩和が実施され、本格的な競争時代を迎えることになります。
 そこで事業者に求められることは、利用者のニーズに合ったサービスの提供により「バスの必要性」を再認識してもらうことにあります。そういった意味で、ノンステップバス一〇〇%採用の決定は、「交通バリアフリー法」の施行に先駆けた行政施策として、事業者、利用者にとって画期的なものであったと言えます。
 ノンステップバスの車体中央には、シンボルマークが貼られています。バスのハンドルをイメージした大きな円の中に、杖をついた高齢者、車いすに乗った人、この両者をサポートしている健常者を表現しています。このマークの付いたバスなら、移動の困難な人も快適にバスをご利用いただけるのではないでしょうか。