音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

雇用と福祉との連携による
総合的な障害者対策について

労働省職業安定局高齢・障害者対策部 障害雇用対策課

1 施策の連携の必要性

 障害者に係る施策については、従来より厚生省は福祉・医療の観点から、労働省は雇用の観点から充実を図るべく推進してきているところである。
 施策の連携の重要性については、これまで「障害者対策に関する新長期計画」(平成五年三月障害者対策推進本部決定計画期間:平成五年度~十四年度)、「障害者プラン~ノーマライゼーション七か年戦略~」(平成七年十二月障害者対策推進本部決定計画期間:平成八年度~十四年度)及び「障害者雇用対策基本方針」(平成十年三月労働省告示運営期間:平成十年度~十四年度)においても指摘されていた。これらに基づき連携しながら、それぞれの部局においてそれぞれの観点から施策を推進していくことがこれまで同様期待される一方で、平成十三年一月六日に厚生労働省が発足することとなり、これまで以上に連携を図った、いわば新たな観点から施策の推進を図ることへの期待及び必要性が高まってきている。

2 平成十二年度に実施している連携施策

 以上に述べてきたように、これまでになく雇用施策に対する福祉・医療施策との連携の気運が高まる中で、労働省と厚生省では、平成十二年度は二つの連携施策を推進しているところである。
 以下、それぞれの施策の概要を説明する。

(1)障害者就業・生活総合支援事業

 障害者雇用施策の進展する中、施策の対象は身体障害者から知的障害者や精神障害者へと拡大してきている。それに加え、障害者の社会的自立指向の高まり、障害者雇用の重要性についての企業等の認識の深まり等に伴い、従来の身体障害者を対象にした支援策だけでは、事業所への就職や就業継続が困難なことも理解されてきた。
このような中、必要とされるのは、職業生活を支えるという観点から、関係する支援機関が密接に連携して総合的に対応することである。
 これらのニーズに的確に対応し、障害者の就業・生活を通じた総合的な支援を行っていくためには、これまでの施策の枠にとらわれることなく、障害者のライフステージも踏まえつつ、「働く」ことに焦点を当てた、雇用・福祉・医療等の施策が一体的に展開できる枠組みが重要になってくる。
 このような観点から、労働省と厚生省が緊密な連携を図り、障害者に対し就業面及び生活面で一体的な支援を展開できる体制の整備、障害者の就業を支援する人材及び諸機関の育成・強化を目的に、連携施策としては一足早く平成十一年度より「障害者就業・生活総合支援事業」を実施してきているところである。
 本事業は以下の四つの事業より構成されている。

1 「障害者就業・生活支援の拠点づくり」の試行的事業

 雇用行政と福祉行政の連携により「生活支援」を担う通勤寮等の福祉施設には「就業支援」機能を付加(障害者雇用支援センターとして指定)し、「就業支援」を担う能力開発施設には「生活支援」機能を付加(生活支援センターとして指定)することで、「就業支援」と「生活支援」を一体的に提供し、障害者に対する日常的な総合相談窓口として総合的な支援を行う就業・生活支援の拠点を地域に整備していくことを試行的に実施している。平成十二年十一月現在では、十四の知的または精神障害者を対象とする社会福祉法人の通勤寮十か所、入所授産施設二か所、通所授産施設一か所、能力開発施設一か所が選定されており、関係機関との連携の下に障害種別にかかわりなく支援を実施している。

2 福祉施設等における就業支援機能の強化

 企業へ就職するために、福祉施設等から退所する者が非常に少ないことの背景には、障害者本人の不安に加え、施設側にも企業で働けるように支援する意識が乏しく、就業支援のための知識や技術も十分ではないといった問題がある。
このため、福祉施設等において障害者に対する就業支援が効果的に実施されるよう、日本障害者雇用促進協会障害者職業総合センターが、福祉施設・医療施設等の職員を対象に、就業支援のための訓練、指導技法に関する研修会を開催する。

3 企業等における地域の生活支援サービスへの理解促進

 企業等において、働く障害者の生活支援に対する理解を促進するため、財団法人日本知的障害者福祉協会が、企業等の職員を対象に、主に(1)の事業を実施する地域において研修会を開催し、企業で働く障害者が活用できる地域の生活支援サービスについての情報提供、施設見学等を実施している。

4 福祉施設等と企業との新たな協力関係の形成

 福祉施設等と企業との間で互いの機能を活用できる協力関係を形成するため、障害者雇用の中で企業の対応が難しく、福祉施設等で対応が期待される事項等について、各都道府県にある地域障害者職業センターが企業と福祉施設等による意見交換の場を設ける。

(2) 情報機器の活用による重度障害者の社会参加・就労支援連携モデル事業

 本事業は、最近の雇用情勢の悪化に伴って障害者の就労が困難となっている一方、情報・通信技術の発達により、これらを活用した障害者の就労・雇用の可能性が広がっていることなどを踏まえ、重度障害者の自立と社会参加を促進するため、厚生、労働両省の連携の下、情報機器を活用した新たな社会参加や就労の可能性を高める、以下の事業を試行的に実施している。
 まず第一段階として、身体障害者デイサービス事業または市町村障害者社会参加促進事業において、移動に困難を伴う重度障害者に対し、パソコンの基礎的な操作技術を習得させる。第二段階として、基礎的な操作技術を習得した者に対し、日本障害者雇用促進協会がインターネットを活用して遠隔教育を行い、日本障害者雇用促進協会が委託した支援機関が実践的な能力を高めるための指導(OJTを含む)等を実施することにより・就労に必要な技術・技能の向上を図る。
 以上、平成十二年度に実施中の事業について、その概要を説明したが、今後も両省統合のメリットを生かした効果的な施策を推進していきたいと考える。
 なお、1 の事業中、「拠点づくり」の試行的事業については、十三年度は身体障害者対象の社会福祉法人等についても拠点を拡充し、その施策の充実を図ることとしている。身体障害者中心の支援を行っている授産施設等で、積極的に就労支援を実施している施設においては、ぜひ「拠点づくり」の試行的事業に加わっていただきたい。
 また、2 の事業についても、十三年度は引き続きモデル事業を継続することとしており、十三年度にモデル事業への参加を希望される市町村等に対する相談を受け付けている。
 この両事業についての問い合わせは、労働省障害者雇用対策課調整係
(電話 〇三ー三五九三-一ニ一一 内線 五七八三 FAX〇三-三五〇ニ-ニ六〇六)まで。