音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

厚生労働省に期待すること

菅井真

 「無認可」、すなわち法的には社会福祉事業として公的認知をされずにいた小規模障害者作業所が、「社会福祉法」成立によって「小規模授産施設」という法定施設化への道が開かれることになった。一九六〇年代終盤に「共同作業所」というネーミングで誕生し、今や全国に五六○○か所を数える小規模障害者作業所に新しい歴史が到来したといえる。
 ところで、「共同作業所」というネーミングがなされた背景には、当時、地域社会から隔離され人権が軽んじられる傾向にあった障害者福祉施設に対するアンチテーゼとともに、一般就労はもとより、授産施設など既存の法定施設からも見放された(=受け入れを拒否された)重度重複障害のある人たちに対しても、労働の権利を保障しようという意味が込められていた。どんなに重い障害があっても、成人期の人間的生き方として労働権こそ、最も大切に追求されるべき権利の一つであるという考え方である。成人期障害者の福祉施設体系を見直す場合、豊かな暮らし(地域生活)の保障とともに労働の権利を最大限に保障する視点が大切である。
 今回新しく誕生する「厚生労働省」に期待することは、重度重複障害者も視野に入れつつ、福祉的施策と労働の権利を同時的に保障する道であり、本格的保護雇用制度の創設である。そこでは、労働基準局も巻き込みながら、障害に配慮した労働時間の設定や労働環境改善に対する公的助成策の拡充等、障害のある人たちが労働権を実質的に保障される労働法規(労働基準法)も考えられて然るべきである。なぜなら、労働を通した社会参加と所得の実現こそ、人間的生き方に欠くべからざる内容だからである。
 現在わが国は「超失業時代」を迎え、労働権保障の問題は障害者問題固有の課題を含みつつ、社会全般のあり方とかかわりながら論じられる必要がある。
 二十一世紀とともに幕開けする新省庁に期待する内容は計り知れないほど大きい。

(すがいまこと 社会福祉法人きょうされんリサイクル洗びんセンター所長)