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就業支援ネットワークの充実を期待する

小林茂夫

 一九九八(平成十)年に労働省の新規施策として既存の福祉施設を活用し、福祉的就労から事業所 への就業促進、就職した後の定着支援を重点にした「あっせん型雇用支援センター」(以下、雇用支援センター)がスタートして、現在全国十六か所で事業を推進している。また、一九九九(平成十一)年から労働省・厚生省の再編の象徴的事業として「障害者就業・生活総合支援事業」が展開されており、その中の「障害者就業・生活支援拠点づくり」の試行的事業を現在十四か所の雇用支援センターで実施している。
 この事業は、障害のある人のより身近な地域の中に「就業支援」と「生活支援」の機能を併せ持つ拠点を整備し、個々人のライフサイクルに応じた就業と生活支援を一体的に提供して総合的な支援をめざす新たな試みであり、さらに養護学校在学生にも支援を拡大するなど、労働行政・厚生行政に文部行政も加わり、横断的な連携を図った先駆的かつ斬新的な施策である。
 雇用支援センターは、障害のある人の就業支援を都道府県のみならず市町村段階まで浸透させるとともに、地域における労働、福祉、教育、医療等の各関係機関、諸団体、市町村行政等との連携を図った「就業支援ネットワーク」を形成するうえで中核的な役割を果たし、事業主の雇用のためらいの払拭、就業への安心感の増大、離職・失職者へのタイムリーな支援、新たなニーズに対する支援拡大、就業支援機関の再構築等さまざまな波及効果をもたらしている。しかし、現段階では運営費、助成金、自治体・市町村段階の予算拠出及び案分、予算執行上の制約、実施事業間の整合性、「障害者プラン」への反映等々の課題が残されている。
 厚生労働省の発足により、試行的事業から本格実施に向けて課題整理がなされ、全国の障害者福祉圏域ごとに少なくとも一か所の「就業・生活支援センター」が設置され、支援ネットワークの構築と就業支援の充実が図られることを期待している。

(こばやししげお大阪市障害者就労(雇用)支援センター所長)