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授産制度の抜本的な改革を望む

斎藤公生

 現在、わが国における重度重複障害者の主な就労形態は「一般就労」と授産施設等における「福祉的就労」があげられる。授産施設は五つの法律の下に十二種別に分類され、さらに平成十三年度より小規模通所施設が加わったことで十三種別となり、利用者もよりいっそう重度重複化の傾向に拍車をかけることになりそうだ。
 授産施設の目的は、表現に若干の違いはあるが、法律では「一般就労の困難な人々に対し、訓練を行い、職業を与え、自活させる施設」と定めており、施設機能は「通過施設」であるが、現実は滞留型となっている。処遇面においては、入所施設では依然としてプライバシーを無視した複数収容型であり、身分はいつまでたっても無職(利用者)であり、賃金は平均年収約二十万円程度で、地域における自立生活の確立には程遠い現状である。
 しかし同じ授産制度の福祉工場は、授産施設より運営費や職員配置が恵まれない環境の中で最低賃金や労働三法による身分保障を確立している。その事実を関係者は真摯に受け止め、迷走している授産の抜本的改革を行う方向に舵をとるべきではないだろうか。
 近年、労働省は障害者雇用の推進にさまざまな施策を打ち出し、一般雇用の拡大を図っているが、現実は割り当て雇用に見るように、一向に改善の兆しが見えてこないのはなぜか。原因の一つは、闇雲に企業に雇用を押しつける手法が時代遅れではないのか。一例をあげれば、日本固有の雇用形態として美化されてきた「終身雇用」制度が、年々崩れてきており、最近の経済界の資料によると、二七%の企業が社員を常用雇用から非常用雇用(派遣やパート)に積極的に切り替えている。その傾向は急速に拡大される中で、今後企業側に重度重複障害者を送り込むことは、至難の業とも言えよう。
 しかし、一方では働きたいという意志を強く持っている障害者が多くいるのも事実である。これらの人々の受け皿として「福祉」「雇用」両面の施策をクリアできる唯一の授産制度の抜本的改革を行い、新しい障害者就労制度を通し、地域自立生活に風穴を開けることを、新生厚生労働省に願うものである。
授産制度の中にあって、障害者と言えども、納税者になることを望んでいるからである。

(さいとうこうせい 東京リハビリ協会理事長)