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厚生労働省に期待すること

金子鮎子

 来年一月、厚生省と労働省が一 つになることに、精神保健福祉の分野、特に精神障害をもつ人たちや、その人たちを訓練生あるいは従業員として職場に受け入れている事業所からもたいへん大きな期待が寄せられています。
 精神障害をもつ人にとって、厚生省の社会適応訓練事業(=職親)は、実社会の職場への入口です。
 これまで、訓練事業は厚生省、雇用施策は労働省と両省に跨っていて、流れが分断されており、受け入れ事業所への総合的・継続的支援や助成のシステムが欠けていました。
 しかし、長期にわたる支援の必要な精神障害をもつ人たちを職場に受け入れるに当たっては、これまでの諸制度の見直しを行い、訓練から雇用へ、そして働き続けることができる総合的な支援のシステムの構築と、多様なメニューが不可欠です。
 また、精神障害をもつ人たちが働く機会の少ない現在、障害をオープンにしてすでに雇用されている人については、かつての知的障害者のように、まず〝みなし雇用〟への道が開かれることが第一歩でしょう。 環境に慣れるのに時間がかかるこの障害の特性や状態の不安定性からも、訓練から雇用への長期にわたる、生活面を含めた就労支援が忽せにできません。
 具体的に言えば、職場内のジョブコーチ配置への助成や、職場外からの専門家による支援の連携も省庁統合の時代になれば不可能ではないでしょう。
 障害を抱えながらも働くことを可能にするためには、援助者付きのグループ就労や過渡的雇用など、これまでの雇用形態に限らぬ多様なメニューや、さらに敷居を低くした短時間就労への支援、大企業の過渡的雇用受け入れをか〝みなし雇用〟としてカウントすることなどが考えられます。
 障害をもつ人たちも一緒に働き、私たちの暮らしが豊かになるーそんなふうに厚生労働省が機能してくれることを期待します。そしてそのための提案は、惜しまないつもりです。

(かねこあゆこ 株式会社ストローク代表取締役)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2000年12月号(第20巻 通巻233号)