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国際交流と障害者の役割
「107の目標」

成瀬正次

政府による評価

 国際交流というと厳めしく聞こえますが、煎じ詰めれば日本国内での障害者同士の交流と同じことで、肩の凝らないお付き合いが基本なのでしょう。はじめはただの知人でも、やがて心の通いあう友人になります。障害の違いに加え異文化というハンディがありますが、これさえ乗り越えられれば相互理解の交流が生まれるのですから素晴らしいことです。
 筆者は昨年12月「アジア・太平洋障害者の十年」キャンペーン2000バンコク会議に出席して、分科会で「107の目標」に従って日本の障害者団体合同で行った評価結果を報告しました。分科会には、パキスタン、マレーシア、タイ、日本、インドネシア、ベトナム、台湾、ニュージーランドから障害者や政府関係者が出席し、機会があればご報告したい内容の熱のこもった質疑応答がありました。
 ところで「107の目標」というのはアジア・太平洋障害者の十年の「行動課題」です。
 わが国政府の年間報告と呼んでいい「障害者白書」11年版から引用しますと、「行動課題は…具体的な問題領域を設定し、これらを推進するための地域協力と支援のあり方を提起」し、「1.国内調整、2.立法、3.情報、4.啓発広報、5.施設の整備及びコミュニケーション、6.教育、7.訓練及び雇用、8.障害の予防、9.リハビリテーション、10.介助機器、11.自助組織」となっています。

 さらに引用を続けます。「このようなアジア太平洋地域各国における取組を決議に従って評価するため、1995年タイ・バンコクにおいて第1回アジア太平洋障害者の十年政府間評価会議が開催され」「23か国の政府代表のほか国際的NGOの代表約250人が参加し、行動課題実現のため、達成すべき目標年を各項目ごとに設定する決議が採択された」のに続き、アジア・太平洋障害者の十年中間年である1997年9月、韓国・ソウル市において、前半5年間の実施状況を評価し、後半5年間への行動計画を討議する「政府間高級事務レベル会合」が、25か国の政府代表と33のNGOが参加して開催されました。わが国政府代表によって前半5年間の取り組みの成果が報告されました。障害者白書から引用します。
 基本的な立法として1993年12月に「完全参加と平等」の理念を基礎とした「障害者基本法」を制定したこと。そして障害者基本法に基づいて、障害者団体等を含めた国内政策調整のため中央障害者施策推進協議会を設置し、地方公共団体においても障害者施策を計画的に推進するための都道府県・市町村の障害者計画の策定を推進し、「障害者白書」を毎年作成し、国内及び国民に施策の推進状況を報告することとし、「障害者の日」を定めて国民への啓発広報活動を推進し、1995年12月に新長期計画の重点実施目標として「障害者プラン」を策定し障害者に対する各種の計画的なサービスを進めていくこと。さらに「新長期計画及び障害者プランの中に、アジア太平洋障害者の十年の推進と国際協力を明確に位置づけ、国際会議の開催、資金・技術の援助によりアジア太平洋地域における障害施策分野での協力を進めた」という内容です。

障害者の役割

 障害者団体ではアジア・太平洋障害者の十年の「107の目標」を物差しに使ってわが国の現状を評価しようということになりました。目標を完全にあるいはほぼ完全に満たしていれば3点、かなり満たしたものに2点、やや満たしたものに1点、全くあるいはほとんど満たされていないものに0点を与える方式をとり、その平均値を評価数値としました。結果は、評価の高い「障害原因の予防」(1.81点)から最下位の「地域協力」(1.0点)まで、少々厳しいものでしたが、別々の団体の役員が集まり討議を重ねたことも意義深いものでした。
 作業に参加した団体役員は次の通りです。日本身体障害者団体連合会の松尾会長、小林事務局長、全日本ろうあ連盟の安藤理事長、日本盲人会連合の牧田情報部長、DPI日本会議の三沢事務局長、金センター長、全国自立生活協議会の奥平事務局長、日本障害者協議会の佐藤政策委員長、太田政策副委員長、坪松事務局長、筆者の計11人。日本障害者リハビリテーション協会の金丸さんと沖縄国際大学の岩田先生のお世話になりました。この作業を通じて評価参加者は、行動課題をめぐって討議し理解し、107の目標を活用した評価それ自体が障害者の現状把握に有効な方法であることを知りました。
 ですから分科会報告を終わるとき「『107の目標』を物差しにして各国の現状を再評価しよう」という呼びかけで締めくくり、参加者の支持を得ました。アジア・太平洋障害者の十年はまだ2年あります。21世紀は「107の目標」達成への挑戦からスタートします。

(なるせまさつぐ 日本障害者協議会国際委員長)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2001年1月号(第21巻 通巻234号)