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平成13年度
障害保健福祉部関係予算案について

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

1.厚生労働省の発足

 平成13年1月6日に、中央省庁等改革基本法の施行により、従来の1府22省庁が再編され1府12省庁になりました。
 厚生省は労働省と統合され「厚生労働省」となり、施策の融合化・効率化が図られることとなりました。これにより、障害者施策は「保健・福祉施策」と「雇用施策」が連携して推進されることとなります。当省は平成11年度から労働省との連携施策を実施してきましたが、平成13年度においても新たな連携施策を図ることとしております。
 また、省庁の再編に併せ部局の再編もなされ、障害保健福祉部は社会・援護局と統合され「社会・援護局障害保健福祉部」となりました。
 さらに、全国8か所に「地方厚生局」を設置し、国立病院のほか、社会保険、保健福祉、介護保険、薬事監視、医療監視、食品衛生、麻薬取締等の事務・事業を所管することとなりました。
 また、社会福祉基礎構造改革への対応として、新たに社会福祉事業として位置づけられた事業に対し、運営費や施設・設備整備費の補助制度が創設するとともに、従来、都道府県で行っていた知的障害者施設への入所措置、短期入所事業等に係る事務が市町村に移管されることに伴う市町村職員への研修事業を創設することとしております。

2.障害者プランの推進

 平成13年度の障害保健福祉関係予算については、平成8年度よりスタートした「障害者プラン」を中心に、障害者の総合的な保健福祉サービスを整備するために必要な額が確保されています。
 障害者プラン関係予算としては、平成12年度第一次補正予算において、身体障害者及び知的障害者の授産施設や障害者デイサービスセンター等の整備に必要な経費や、障害者グループホームの防災対策の強化に必要な経費等として、約28億円の予算を確保したところであります。
 平成13年度予算においては、障害者プラン関係予算について、2,879億円を計上し、対前年度伸び率4.1%の予算を確保したところであります。障害者プランも残すところあと2年ですが、今後とも引き続き積極的な推進を図ることとしております。

3.社会福祉基礎構造改革への対応

 社会福祉事業法と併せて、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、児童福祉法等を改正する「社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律案」が平成12年5月29日に可決・成立し、6月7日に公布されました。主な改正内容は、利用者本位の障害者福祉サービスを提供する観点から、福祉サービスの利用制度化、障害者に対する相談支援事業、小規模通所授産施設及び盲導犬訓練施設などの社会福祉事業として法定化、利用者等からの苦情への対応、知的障害者・障害児に係る事務の市町村への委譲などでありますが、平成13年度予算案において、同法の改正を踏まえた予算を確保しております。

1.小規模通所授産施設の活動支援

 改正後の社会福祉法においては、利用者が10人以上の小規模通所授産施設についても社会福祉事業とされることとなりました。これにより、利用者10人以上の小規模通所授産施設に対し、運営費として1か所あたり年額1,100万円、身体、知的、精神の3障害合わせて120か所分の予算を確保したところであります。
 また、運営費の補助に併せて、施設整備及び設備整備費の補助を創設することとしております。具体的には、小規模通所授産施設に移行する際、施設基準を遵守するために必要となる増改築、拡張、修繕及び備品等の設備整備費に対する補助です。施設整備費については2,400万円、設備整備費については800万円をそれぞれ上限としています。

2.盲導犬訓練施設に対する施設(設備)整備費補助の創設

 今般の社会福祉事業法等の改正により、新たに盲導犬訓練施設を経営する事業を社会福祉事業に位置づけるとともに、盲導犬訓練施設に対する施設整備及び設備整備費の補助制度を創設し、盲導犬の育成の促進を図ることとしております。

3.施設運営費の充実

 社会福祉法第65条において、利用者等からの苦情への対応について最低基準に新たに規定されたことに伴い、障害者福祉施設における苦情解決に必要な経費を措置費に計上しております。

4.知的障害者・障害児に係る事務委譲に向けた市町村特別研修事業について

 知的障害者福祉法、児童福祉法の一部改正により、従前は都道府県で行っていた事業が平成15年度から市町村に委譲されることになりました。知的障害者については、知的障害者更生施設等への入所、短期入所事業、知的障害者地域生活援助(グループホーム)事業に係る事務が、障害児については短期入所事業に係る事務がそれぞれ市町村に委譲されることとなりました。
 住民に最も身近な市町村において福祉サービスが円滑に提供されるよう、市町村の知的障害者福祉等の担当職員に対し研修を実施することとしています。

4.心の健康づくり対策

1.思春期児童の心の健康づくり対策の充実

 最近、思春期児童によるいわゆる引きこもり、不登校、家庭内暴力など、心の問題が社会問題化しているところであります。その対応を図るため、医師、看護婦、精神保健福祉士、児童相談員を対象とした思春期児童の心のケアの専門家の養成研修等を行うこととしています。またいくつかの都道府県において、精神保健福祉センター、保健所、児童相談所、警察等の関係者による専門家チームをつくり、発見、相談から指導、解決まで総合的に対応するとともに、今後の取組みに役立てるため、事例報告書を作成することとしており、これに必要な予算を確保しております。

2.PTSD対策の充実

 犯罪被害者や災害被災者のPTSD(心的外傷後ストレス障害)は、長期間の療養期間を要するものとして、非常に注目されており、専門家によるケアが重要であります。そのためPTSDの専門家の育成研修等を行い、精神保健福祉センター、病院、保健所等でPTSD相談事業活動を取り入れ、各施設での活動の充実を図るために必要な予算を確保しております。

5.高次脳機能障害への対応

 交通事故やスポーツ事故等により脳損傷などを受けた者は、その後遺症により、記憶障害、判断・遂行障害、認知障害などの高次脳機能障害を呈する場合があります。
 これらの障害は、複合的に症状が現れることや、外見から分かりにくいことなどの特徴があることなどから、標準的な評価基準や支援プログラムが未確立なため、適切な対応が十分にとれず、近年、社会的な問題となっています。
 このため、国立身体障害者リハビリテーションセンターとこの問題に積極的に取り組んでいる全国の地方拠点病院等が連携し、症例を集積して、「社会復帰支援」と「生活介護支援」の試行的実践を行い、高次脳機能障害の「評価基準」と「支援プログラム」の確立を図ることとしております。

6.精神障害者社会復帰施設の運営費の充実

 精神障害者社会復帰施設については、近年における利用者の高齢化や単身化の進行、自立度の低下が顕著になる等、施設を取り巻く状況が変化しており、利用者の処遇等の充実を図る必要が出てきたところです。このため平成12年度から、精神障害者生活訓練施設等において、指導員、事務員及び施設長の増員を計画的に行っており、13年度においても3か年計画の2年次目として必要な予算を確保しております。
 さらに13年度は、民間施設給与等改善費を社会福祉施設並みに改善し、また労働基準法に基づき、年次有給休暇の取得促進を図るため、年休代替要員費の改善も行っております。

7.労働行政との連携施策

1.施設外授産の活用による就職促進モデル事業

 最近の雇用情勢の悪化に伴って障害者の就労促進策の充実が求められております。障害者の一般企業への就職を促進するために、障害者授産施設と公共職業安定所が連携した「施設外授産の活用による就職促進モデル事業」を創設することとしました。この事業は、障害者授産施設の入所者が企業等の事業所において授産活動を行うとともに、終了後に公共職業安定所が、職業相談、個別求人開拓、職場定着の支援等を行い、障害者の企業等への就職を促進するものであります。

2.グループ就労を活用した精神障害者の雇用促進モデル事業

 地域の精神障害者の生活支援の場である精神障害者地域生活支援センターを運営する社会福祉法人等が、企業等の事業所と請負契約を締結し、数人の精神障害者が指導員の支援のもとに一定期間就労することにより一般雇用へとつなげる「グループ就労を活用した精神障害者の雇用促進モデル事業」を試行的に実施することとしています。

3.自殺防止対策

 わが国における自殺者は、平成10年には、初めて3万人を超えたところであります。自殺者を減少させるためには、ストレスや悩みを抱える住民や、勤労者からの相談に応じ、適切な助言を与えられる体制の充実強化が必要と考えられます。地域住民に対しては厚生行政サイドから、勤労者に対しては労働行政サイドからそれぞれ自殺の実態、原因、防止対策等についての調査研究・検討や、自殺防止のための相談・啓発活動を強化するための予算を確保しています。

8.その他、新規施策等主要事項

1.障害者のコミュニケーション手段の充実と情報バリアフリー化への支援

 障害者が住み慣れた地域の中で自立し、積極的に社会に参加するためコミュニケーション手段を充実することは障害者にとって非常に重要なことであります。
 平成13年度予算案においては、「障害者・生活訓練コミュニケーション支援等事業」において聴覚障害者への手話通訳派遣回数の増、盲ろう者向け通訳・介助員の派遣事業の実施か所数の増、盲導犬育成頭数の増を図るための経費を確保しております。
 また、障害者が、障害をもたない者と同様に情報機器を使用するために「障害者情報バリアフリー化支援事業」を創設しました。この事業は、視覚障害者や重度の上肢不自由者がパソコン等を使用するにあたり、通常の機器のほかに必要となる周辺機器やソフト等を購入するために要する費用の一部を助成することにより、障害者の情報バリアフリー化を推進し、ひいては情報機器を活用した障害者の就労の促進を図るものであります。
 視聴覚障害者情報提供施設(点字図書館及び聴覚障害者情報提供施設)についても身体障害者福祉法等の一部改正により役割・機能の拡充が新たに盛り込まれたところであります。また著作権法の一部改正により、著作物を複製する要件が緩和されたことに伴う新たなニーズに対応するため、「情報化対応特別管理費」を創設したところであります。
 また、情報近代化設備整備に対する補助も創設しております。

2.「国連・障害者の十年」記念施設の運営開始と障害者による芸術文化活動の振興

 障害者の「完全参加と平等」をテーマとした「国際障害者年」及びその理念を受け継いだ「国連・障害者の十年」を記念する施設が平成13年3月、大阪府堺市において竣工予定です。
 当該施設は、車いす使用者も収容できる多目的ホール、宿泊室、レストラン、大・中・小研修室等を備えており、劇場、集会場、宿泊施設として利用することが可能です。
 平成13年度予算案においては、当該施設の維持管理に必要な経費のほか、手話通訳者現任研修、障害者を支援するボランティアに対する研修、障害者に対する情報提供、障害者の芸術・文化活動への支援等、各種事業に対する経費も盛り込まれております。
 また、障害者の自立と社会参加意欲の高揚を図るため、全国規模で「障害者芸術・文化祭」を開催するための経費も確保したところであります。同文化祭においては、障害者の福祉に関するシンポジウム、演劇祭、美術展等芸術文化活動に関するイベントを開催することとしています。

3.施設整備の改善

ア.身体障害者更生施設間、身体障害者授産施設と知的障害者授産施設間、障害児通園施設間における他障害の受け入れ及び障害児(者)地域療育等支援事業実施施設における他障害の対応に必要となる施設・設備の環境改善整備補助の創設。

イ.知的障害者更生施設入所者の高齢化・障害の重複化に対応するため、基準面積を26.6m2から30.3m2に改善。

ウ.精神障害者生活訓練施設、精神障害者入所授産施設の居室の環境改善として、定員の6割を上限として、個室一人当たり面積を4.4m2から6.6m2に改善することとしております。

4.バリアフリーのまちづくり活動事業

 従来より実施してきた「障害者や高齢者にやさしいまちづくり推進事業」を「バリアフリーのまちづくり活動事業」に改め、一部事業内容の見直しを行うこととしました。具体的にはア.障害者や高齢者など当事者が実地に点検・調査した結果を市町村が作成する基本計画に反映させる事業、イ.バリアフリー化された施設等の情報をバリアフリーマップ等により障害者等に分かりやすく提供する事業についても行えることとしました。

5.身体障害児(者)実態調査

 平成13年度は、これまでおおむね5年に一度実施している身体障害児(者)実態調査を行うこととしています。
 また、今回の調査では、障害者の就労実態調査も併せて実施することとしております。