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ハイテクばんざい!

トーキングサインで
だれもが暮らしやすい街づくり

福田直樹

1.トーキングサインとは

 高齢者を含む視覚に障害をもつ人たちや、文字・表示等を理解することが困難な外国人、地理に不慣れな人に、場所・物・方向の案内を提供することを出発点として開発を始めたシステムです。
 さらに個人が気兼ねなく情報を享受できる特色を活かして、さまざまな人が使えるように改良を加えて商品化しました。このシステムは、案内情報を含む赤外線信号を発信する電子ラベルと、信号を受けて音声で情報提供するレシーバで構成されます。電子ラベルは、情報提供する目的に応じて、あらかじめ案内したい場所に配置しておきます。
 利用者は、レシーバを手に持ち、情報を確認したいときは、左右/上下にゆっくり動かして、電子ラベルからの赤外線を受信できる方向を捜します。レシーバが電子ラベルに正対したとき、最も音声が明瞭になるので、電子ラベルの方向を知ることができます。
 このように、情報とその方向を容易な操作で、しかも手元から音声で得られることが、トーキングサインの特色です。

2.どのように便利?

 では、実際にどのようにトーキングサインが使われるのか見てみましょう。

◎高齢者を含む視覚に障害をもつ人の場合

 屋内の案内では、施設利用の開始点となり、人的介助を受けられる受付に案内します。次に多層階の場合、移動手段であるエレベータや階段への案内、さらに生活空間となるトイレや水飲み場の情報などを案内します。その施設特有の、たとえば病院であれば、診療科などの情報も案内できます。
 プライベートな場所では、人の支援を受けることに気兼ねしますが、男女トイレの区別から小便器と個室の場所、さらにきめ細かく水洗レバーの位置まで案内することができるため、安心して利用することができます。
 屋外では、建物の入口、経路変更点となる信号機の設置場所、また、赤/青の信号の状態情報を案内します。信号の状態情報を案内するときは、方向も併せて分かるので、これによって横断する方向を確認することができます。
 トーキングサインを利用して、入手できる情報を増やすことにより、行動に関する選択の幅も広がります。移動する場合によく利用する電車を例に挙げると、次の列車が発車するまでに時間があると分かれば、その間に電話をかけたり、買い物をしたりできます。
 トーキングサインの音声情報としてあらかじめ電車やバスなどの運行情報を設定しておき、タイマーを参照することで「次の下りはXX時XX分XX行き」と、時刻に応じた案内を提供することも実用化されています。
 以上のような施設に固定設置する電子ラベルのほかに、簡易的に設置できるタイプも商品化しています。
 この電子ラベルは、取り付け/取り外しが簡単にできるようにドアのノブに掛けたり、磁石で固定できるもので、電池駆動タイプになっています。音声情報を簡単に変えられるので、たとえばホテルで視覚に障害をもつ人が利用するときには、ドアやエレベータの呼びボタン付近に取り付けておいて、自分の部屋などの案内をサービスすることが可能です(株式会社京王プラザホテルと共同で有効性を確認)。
 また個人で旅行に出かけたとき、新幹線などで席を立って戻るときの指標として、あるいは、宿泊先の部屋の確認用としても便利です。
 視覚に障害をもつ人の利用にあたっては、通常利用する白杖などによる歩行に合わせて、補助的にご使用いただくことを基本としています。

◎一般の人の場合

 最近のグローバライゼーションにより、街中で外国人を多く見かけるようになってきています。トーキングサインは複数の言語に対応できるので、空港や駅などの移動ターミナルで、外国人に母国語でサービスすることが可能です。また、子ども用/大人用など、利用者の特徴に合わせて分かりやすい言葉で案内でき、周囲の人に気兼ねなく手元のレシーバから案内を受けることができるので、美術館、博物館、展示会場での展示物の案内など一般の方にも便利なシステムです。
 以上のように、不特定多数の人々が利用する集客施設・場所、交通施設などのいわゆる公共空間において、その場所に不案内な人が便利さを享受できる音声情報案内システムとして発展していく可能性を備えています。

3.開発状況

◎横浜市総合リハビリテーションセンターとの共同開発

 本システムの実用化開発事業は、平成8年8月より横浜市総合リハビリテーションセンターと共同開発で推進してきたもので、官民各フィールドで実用評価テストを実施するなかで、各方面より高い評価をいただいております。

◎財団法人テクノエイド協会による福祉用具開発助成事業

 本システムは、当社が平成9年に、厚生省の指定法人であるテクノエイド協会から福祉用具研究開発の助成対象事業に選定され、平成10年度に実用化を完了したものです。

◎世界標準としての音声情報案内システム

 本システムは、福祉機器という一面を持つことから、世界で共通に使用可能なものに発展させるべく、平成10年7月当社は、同種システムでアメリカ(欧州も含む)のリーディングカンパニーである「Talking Signs社」との間で「技術提携」を締結し、世界でのデファクトスタンダード化をめざすこととなりました。

◎交通信号機に対する取り組み

 当社が社団法人新交通管理システム協会の一員として、警察庁、神奈川県警とともに本システムを応用した視覚障害者用支援装置の実証実験を、平成10年11月、神奈川県で実施された全国身体障害者スポーツ大会に合わせて実施したところ、参加した視覚障害者から好評を得ました。
 さらに、場所を移し、平成12年2月から1年間、神奈川県で実証実験を実施しました。この実験結果をもとに改修を加え、現在、全国17都市で歩行者支援システムとして、交通信号機にトーキングサインが応用されつつあります。

(ふくだなおき 三菱プレシジョン株式会社営業統轄本部トーキングサイン課)


◎問い合わせ・資料請求先

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