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ユニバーサルデザイン、ユニバーサル設備
よきモノづくりをめざして
─シャンプーボトルにキザミができるまで─

花王株式会社

 花王株式会社は、お客様の「声」に真摯に耳を傾け、その「声」を企業活動に反映し、商品の開発や改良に役立てる“よきモノづくり” をめざしています。
 1970年代から、毎日寄せられるお客様の声を集めて分析し、マーケティング部門、研究開発部門等社内にフィードバック、商品開発に活用してきました。
 バリアフリー商品として知られているシャンプーのキザミボトルの開発は、社内のプロジェクト活動の一環として、お客様が不便に感じていることを解決できないか、というところから始まりました。「シャンプーをしている時、目をつむったままなので、シャンプーとリンスを間違えてしまう。目をつむっていてもシャンプーとリンスの区別がつくようにならないか」という意見が十数件寄せられていました。中には、数人の視覚障害の方もいらっしゃいました。この不便さを改善すれば、晴眼者も視覚障害者もみんなが使いやすくなると考えて研究テーマとしたのです。
 識別の方法はいろいろありますが、シャンプーの使用時は、目をつむった状態になるので、視覚に頼るのではなく、触覚による識別がいいと考えました。盲学校で実態調査したところ、シャンプーかリンスのどちらかに輪ゴムを巻いている人、置き場所を変えている人などさまざまでした。いくつかの試作品を作って、盲学校のみなさん、健常者のみなさん、それぞれに試していただいた結果、シャンプーボトルの側面にギザギザを入れたボトルの評価が高かったので、この形にしたのです。
 こうした調査をするうえで私たちはたくさんのことを学びました。糖尿病などが原因の中途失明の方は手先の感覚が鈍っていて、あまり細かいギザギザは読み取れないこと、どこか1か所に印をつけたのでは、気付くのに時間がかかること等々です。また、いくら視覚障害の方に便利であっても、デザインの美しさが損なわれていたのでは、晴眼者の方々の支持は得られません。
 1991年10月に、シャンプー容器の側面にギザギザを入れた商品を初めて売り出すことができました。
 実用新案の登録をしたものの、業界全体のきまりにしていかないと、かえって混乱すると考え、実用新案の権利放棄をしました。化粧品工業会を通じて業界の関係者に働きかけて、現在のところ日本では、ほとんどのメーカーがこの方式を取り入れています。
 このきざみボトルがきっかけになって、健常な人もそうでない人もみんなが便利に使える日用品を作ろうという機運が社内にますます高まってきました。だれもが使う必需品であればこそ、だれにも便利で使いやすい商品を開発しようと、中身はもとより、パッケージにもさまざまな研究が施されたのです。
 現在のところ、妊婦の方や高齢者にも簡単に掃除ができる『クイックルワイパー』、片手で開けられるハミガキ容器のスタンディングチューブ、片手で計量できる液体洗剤『液体アタック』等、使い勝手を追求したものはたくさんあります。最近では、計量不要でシートも溶けてしまうシートタイプの洗剤『アタックシート』も発売しました。
 花王では、バリアフリーの商品を特別に開発するというより、普通の製品がそのまま障害のある方にも使いやすく配慮されていることが望ましいと考えています。これはたいへん難しいことで、お客様から便利だ、使いやすいという評価をいただいている商品は数多くありますが、シャンプーのきざみボトルのように、業界全体の標準となる工夫を施した商品は出てきておりません。
 これからも、常にお客様の視点に立って、より使いやすい商品の開発をめざしていきたいと考えています。

(花王株式会社広報センター社会関連グループ社会・文化室)