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財団活動
安田火災記念財団の活動

田中皓

財団設立の背景

 当財団は安田火災海上保険株式会社の出捐により昭和52年10月に当時の厚生大臣の許可を得て設立された。事業目的は、これまで会社として行っていた福祉諸団体に対する寄付等の社会貢献活動を充実させる「社会福祉に関する事業」と、以前から検討されていた学術研究財団構想を組み込んだ「学術研究に関する事業」を二本柱とする多目的財団とした。設立申請書に添付の事業計画書には、次の通り記載されている。

1.社会福祉関係

(1)社会福祉に関する事業に対する助成
 初年度から3年度に至る期間においては、主として障害福祉分野に絞り、……第4年度以降は他の福祉分野を中心として助成活動を行う。
(2)交通遺児・災害遺児に対する援助

2.福祉諸科学関係(社会福祉、社会保険、損害保険等)

(1)刊行物の発行、(2)講演会の開催、(3)学者の研究助成、(4)海外留学費助成

社会福祉助成事業の変遷

 昭和53年3月21日、第1回社会福祉助成選考委員会が開催され、12件、808万円の助成が決定した。以来24年間の障害者福祉助成の累計助成額は10億円を超え、当財団事業費の約70%を占めている。
(1)対象事業に障害者福祉を選択
 財団の寄付行為では、社会福祉のすべての分野を助成対象とすることが可能だが、資金的な制約もあり、関係者の助言を得て、当時最も援助の手を必要としていた心身障害者(児)の在宅福祉団体の支援に重点を置くこととした。
 当初計画では、障害者福祉助成は当面3年間としていたが、国連が昭和56年を「国際障害者年」と制定、さらに昭和58年から始まった「国連・障害者の十年」、平成5年から始まった「アジア太平洋障害者の十年」と国連のキャンペーンが続いていることから、障害者福祉に対する助成を続けており、今日では障害者福祉を支援する助成財団として関係者の中で高い評価を得るに至っている。
(2)助成のあらまし・特徴
 財団を設立したものの、社会福祉助成システムについての知識がなかったため、社会福祉法人全国社会福祉協議会に多大なご協力を得ていたが、財団の助成ノウハウも蓄積されてきた平成8年度以降は、応募書類の受付、審査、贈呈式等のほとんどの業務を財団事務局で行っている。
 当財団の特徴の一つとして、設立当初から法人格の無い団体に積極的に助成してきたことが挙げられる。当時は社会福祉協議会も法人化が進んでおらず、また障害者の小規模作業所もほとんど誕生していない時代で、法人格を持たない団体への助成は珍しく、当財団の特徴として評価されてきた。
 また、平成7年1月17日未明の「阪神・淡路大震災」時には通常の助成を中止し、震災対応の特別プログラムを作成し迅速な対応を行った。共作連対策本部への資金援助、精神障害者仮設作業所建設資金等、財団役員の理解のもと実施した迅速かつ集中的な助成は、関係者の間で高く評価された(注)。
(3)設立20周年を迎えて
 その後、法人格の無い団体やボランティア団体に対する助成を行う財団や組織が増え、当財団が設立20周年を迎えるにあたり助成内容の見直しを行った。折しも低金利時代を迎え財団の運営環境も厳しく、少ないファンドをいかに効果的に活用するかが大きな課題でもあった。
 また、大震災を契機としてボランティア活動の活発化と法人化への動きが高まるなか、特定非営利活動法人(NPO法人)や小規模授産施設の法定化も固まってきた。当財団では、これからの時代は障害者福祉に携わる団体の法人化が極めて重要との判断から従来の路線を変更、平成11年度から「NPO法人設立支援助成」のプログラムを新たに導入した。これまで全国の300団体に対し9000万円の設立資金助成を実施しているが、その特徴は、法人設立計画段階での使途を問わない助成の実施と設立運営相談の実施にある。

今後の展望

 現在、わが国は社会福祉基礎構造改革の流れの中で大きな変革期を迎えており、障害者福祉も多くの課題を抱えている。当財団としては、当面現プログラムを中心に事業を展開していくが、NPO法人化した後の運営に関する課題、IT革命における障害者の情報格差の問題、また支援費支給制度実施へ向けての諸問題等の動向を見極めつつ、障害者および障害者福祉団体のニーズに応えるべく、一歩先を見据えた柔軟な助成活動を継続的に展開して行きたいと願っている。

(たなかひろし 安田火災記念財団専務理事)

(注)「ボランティア革命─大震災での経験を市民活動へ」(東洋経済新報社、1996)
 『7「制度化された団体」はなぜ活動しなかったのか』(17・18頁)の中で、出口正之氏 は、「…一般の財団法人はほとんど無力だった。例外的に震災用プログラムを作ったのは安田火災記念財団、関西エネルギー振興財団で…」と記している。