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ケアについての一考察

電動車いす使用障害者の
外出時に伴う介護の実例から

今福義明

 私は多発性関節リウマチで全身性の重度障害者です。全身の関節の可動域がとても少なく、1日2回全身の関節の痛みを和らげる薬を服用し、さまざまな福祉機器や自助具を使用し、工夫をこらしホームヘルパー制度を利用して、地域で自立生活をしています。
 さて、今回私がご紹介するのは「電動車いすを使用する障害者が交通機関を利用する際に必要な介護」です。
 この種の介護は、交通機関の種類や障害の程度により介護の内容が大きく違います。今回の考察の対象は「私と公的介護者による電車とバスの移動中に必要とする介護について」です。しかし、それらが大きく違っても、共通して言えることは、「移動の主体は私(障害者)である」ということです。それは、私がどこへ行くのか、何にいつ乗り、どこでいつ降りるのか、どのようなルートで行くのか、どのような方法で行くのか、を決める主体であるということです。この原則の元に介護がなされることが必要なのです。
 さて、電車に乗って移動する場合から見てみます。駅舎での介護内容は多肢にわたります。エレベーターのボタンを押す・かばんから財布を出して、カードを取り出し、券売機で切符を買う・自動改札機に切符を入れて抜き取る・インターホンを押す・乗降介護をするなどです。
 これらの介護の区分をどう考えるかで、これまた介護内容が変わります。私の場合は、電車の乗り降りは駅員や車掌の介護区分と考え、乗降に要する円滑な移動のための介護と考えています。例としては、普通エスカレーターの乗降介護・階段の担ぎ上げ降ろし介護・ホームと車両との段差、すき間による乗降介護、またそのバリア解消策としての「ホーム渡り板(携帯用スロープ)」の使用介護が挙げられます。これら以外にも駅員による介護が必要な機器がありますが、それらはすべて駅員介護が前提の機器ですので、駅員がすべて介護します。例としては、車いす対応エスカレーターや階段斜行リフト(エスカル・JNギャラベンタ)・チェアメイト(階段昇降機)などです。これらの介護が駅員不足や何らかの事情で駅員が不在だったりすると、これらの介護は介護者か居合わせた他の人の協力介護区分に転化されます。
 最近は、電動車いすでも乗り降りできる路線バスがどんどん増えてきています。本数や時間間隔の問題は残りますが、都内だけでも300路線ほどあります。車種もリフト付きバス・ツーステップスロープバス・ワンステップスロープバス・ノンステップバスとあり、乗り方もバスによって違いがあり、乗降の際に気をつける点もずいぶんと違います。これらのバスで気をつけなければならないのは、スロープ付きのバスで、ツーステップバスが一番スロープ勾配が急で、次に、ワンステップバス、そしてノンステップバスと続きます。いずれも乗降車時のスロープ使用時に、安全に気をつけて介護をする必要があります。基本的に、どのバスもバスの運転手が乗降時介護をすることが望ましいのですが、それが徹底されていないため、適宜介護者が介護することになります。運転手が介護する時でも、介護者が介護のサポートをしないと危ないことがあります。
 最後に、介護者が介護をするうえで最も配慮しなければならないのは、移動の主体者である障害者の介護者であるということです。駅員や車掌・バスの運転手が行き先や経由の有無などを移動主体の障害者にではなく、介護者に聞いてくることがよくあります(介護者にしか聞かないことがある)。これは障害者の自尊心を痛く傷つけます。よって、私は介護者には、それらの失礼な質問には「答えない」ように言ってありますが、駅員や車掌のしつこい質問に負けて、答えてしまう介護者もいます。この問題は、駅員や車掌だけに見られることではなく、あらゆる社会的場面で起こる現象です。しかし特に、交通機関を利用する障害者がよく遭遇する現象と言えます。というのも、A駅からB駅まで、途中、駅員や車掌の介護をどうしても必要とせざるを得ないバリアがあるからです。
 これらのことから、外出介護は介護内容が状況により変化しますが、外出介護は障害者の人権を考慮した行為であることが最も大切です。

(いまふくよしあき アクセス東京代表)