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脳外傷友の会「コロポックル」

篠原節

友の会設立まで

 1998年春、中野(コロポックル代表)と私は高校同期会の打ち合わせのため、何十年ぶりに再会しました。よもやま話の中で、互いの息子が交通事故後遺症のために社会的自立が困難になったことが話題になりました。その後遺症(高次脳機能障害)は、既存の医療リハビリではまだ確たる方途もなく、診断の基準、障害の名称さえ定かでなく、現在の福祉制度からも落ちこぼれている、複雑かつ深刻な障害であるという共通認識を持つに至りました。交通事故発生件数日本一の北海道、救急医療の長足な進歩の陰に、同じような障害に苦しむ家族がほかにもっとたくさんいるに違いない、と確信したところから家族会設立はスタートしました。
 北海道には、名古屋市や神奈川県のように高次脳機能障害も対象とする総合リハビリテーション施設はありません。高次脳機能障害者の情報は、北海道や札幌市の保健部や福祉部に問い合わせても、また警察や病院、保健センターに問い合わせても、皆無の中の出発でした。そこで二人で新聞社を回り、当事者の掘り起こしの協力を求めました、その結果、98年秋の第1回会合には当事者家族5世帯、医療関係サポーターを含めると25人の参加がありました。その後、家族会設立へ向け何回かの会合を重ね、99年2月6日、脳外傷友の会「コロポックル」は設立されました。当日、私共の予想をはるかに超えた150人の参加者数は、その後の活動の励みとも支えとも推進力ともなって現在に至っています。
 2001年1月、帯広市に「コロポックル」の道東支部が誕生し、近々旭川市にも誕生の予定です。現在、函館市にも働きかけているところです。4月には、国の高次脳機能障害モデル事業の指定を受けました。9月現在、当事者家族106世帯、賛助会員149人を数えています。

活動内容

 友の会設立の翌月に作業所を開設しました。活動の大きな柱は当然、作業所支援です。食事作り、お菓子作り、石けん作り、掃除の仕方等の技術を教えるだけでなく、昨年度は約70万円の経済的支援を行いました。
 第2の柱は相談業務です。遠方の会員の方、新しく情報を求める方と電話は1日中大活躍をしています。相談だけでなく、近頃は見学者も増えてきました。
 第3の柱である毎月の例会では、家族間の情報交換、専門家による医学的勉強会、手帳や年金、自賠責の勉強会、ビデオ学習会を行っています。その他随時、当事者や家族との親睦交流会や一泊旅行も行っています。
 第4の活動として、医療関係者や一般の方々への啓もうを兼ねて専門家による「高次脳機能障害」や「脳科学」の講演会を開きました。また、作業所の将来の法人化を視野におき、手作り石けんやリサイクル品のバザーにも力を入れています。
 友の会活動の経済的基盤は、当事者家族会員や賛助会員の年会費によってのみ支えられています。

課題と展望

 全国的組織である日本脳外傷友の会に所属し、ほかの友の会と力を合わせて、行政や一般社会に訴え、働きかけています。このパワーが必ずや脳外傷者の明るい未来を開くだろうと信じています(行政に訴えている内容については、他の友の会と重複するかもしれないので省略させていただきます)。
 友の会として、当面の課題は、専門指導員やジョブコーチ、ボランティアの養成が急がれます。職業開発や職場開発にも手をつけなければならない状況もあります。作業所について言えば、当作業所は道内で唯一の脳外傷者の通所施設であるため、一作業所だけで、多重の役割を担わざるをえない現状です。
 デイケア、日常生活自立支援、認知や記憶、言語等の障害に対するリハビリ、就労前の社会的自立へ向けての支援、収益を上げて、当事者に利益を分配できる仕事のある作業所、その先にはグループホーム運営が待っています。一作業所だけで担うには重すぎる役割です。いずれ、法人として数々の脳外傷向けのサービス事業を行うことになるだろうと思っています。
 作業所が社会福祉法人になる前に友の会「コロポックル」はNPO法人格を取得し、社会福祉法人「コロポックル」と少し距離をとりつつ歩むことになるでしょう。

(しのはらせつ コロポックル副代表)