音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

相模原市における交通バリアフリー基本構想策定の取り組み

相模原市

1 はじめに

 相模原市では、21世紀初頭における本市の都市像と、その都市像を達成するための基本的な方向を定めた「相模原市21世紀総合計画」の重点施策にバリアフリーのまちづくりを位置づけるとともに、「相模原市福祉のまちづくり環境整備指針」を策定し、公共施設や道路、民間施設の構造や設備等の整備基準を示し、バリアフリーの整備推進に、以前から取り組んできたところです。さらに、駅エレベーターの整備やノンステップバスの導入に対する補助も積極的に進めています。
 こうしたなか、昨年11月に交通バリアフリー法が施行され、相模原市として、なおいっそうのバリアフリー整備を推進するため、関係機関、市民等の協力のもと、現在、交通バリアフリー基本構想の策定に取り組んでいます(今年度中に策定予定)。

交通バリアフリー基本構想策定体系図

拡大図
図 交通バリアフリー基本構想策定体系図

2 相模原市の基本構想策定体制

 基本構想の策定にあたり、庁内の関係各課で議論するために横断的な組織が必要であることから、交通バリアフリー基本構想策定会議(関係課長がメンバー)と同策定担当者会議(関係課の担当職員がメンバー)を設置しました。
 さらに、基本構想に対する意見を伺うために、専門家、身体障害者や高齢者等の市民、道路管理者や鉄道事業者等の関係機関をメンバーとする交通バリアフリー基本構想策定懇話会を設置しました。
 この三つの組織で、基本構想の検討を進めると同時に、広報紙等に基本構想策定について意見募集の記事を掲載しました。さらに、重点整備地区の整備の検討にあたり、ワークショップ(WS)を行い、地域住民等多くの皆様にご参加いただいています。

3 交通バリアフリー法の基本構想について

 本市では、基本構想を策定するため、現在までに大きくは次の二つの作業を進めてきました。一つは市内15駅の中からどの駅を最初に整備していくのか、言い換えればどの駅から基本構想を策定するのかということです。もう一つは、重点整備地区を調査し、構想を立てることです。ここでは今までの行政の計画と異なり、障害者や地域住民の意見をいかに採り入れた計画とするかが重要であり、そのために住民参加のWSが不可欠になります。
 こうしたことを基に、現在策定している基本構想は、1.市内の交通バリアフリー化の基本方針、2.重点整備地区の選定、3.重点整備地区の基本構想、4.基本構想の推進に向けて、という四つの枠組みでの構成を検討しています。

(1)重点整備地区の選定方法

 市内15駅およびその周辺の地区から、相模大野駅とその周辺の地区を重点整備地区に選定しました。選定にあたり、市内15駅および周辺の現況調査を行い、総合的な評価・検討の結果、相模大野駅とその周辺地区を重点整備地区=バリアフリー化の一番必要な地区としました。調査により把握した内容は、1.交通関連データ、2.高齢者・身体障害者関連データ、3.駅周辺施設の状況、4.駅および周辺のバリアフリー化の状況等です。
 また、現在エレベーターのない駅については、別途エレベーターの設置に向けた課題の把握を進めていくこととなりました。

(2)重点整備地区の基本的な構想の立て方

 交通バリアフリー法の基本方針には、高齢者・身体障害者等の参画により意見を反映するように努めるとされていることから、本市では、重点整備地区(相模大野駅およびその周辺)の整備のあり方について、WS方式で検討を進めています。
 WSとは住民参加の一つの形式で、さまざまな立場の人たちが共同作業などを通じて、アイデアや意見を出し合って計画づくりを進めていく方法です。
 しかしながら、事務局ではWSを初めて開催することから「運営方法は?」「参加者が集まるのか」「どんな意見がでるのか」等さまざまな不安を抱えていました。そのため、他市の事例を研究したり、コンサルタントの協力を仰ぎました。また参加の呼びかけを各団体(懇話会委員、高齢者・障害者団体、自治会・商店会、交通事業者等)に行いました。1回目は9月22日(土)に開催し、「まちあるき点検」と「マップ作成」を行いました。
 「まちあるき点検」では、参加者は五つのグループに分かれ、相模大野駅および周辺の歩道等の課題・問題等の点検をしました。この結果、ふだん何気なく歩いていても、高齢者・身体障害者にとって大きなバリアになっている場所が、たくさん見つかりました。
 「マップ作成」では、まちあるき点検で気づいたことを付箋紙に書き込み、大きな地図上に張り出しました。その内容について、グループ全体で討議・意見交換を行い、さまざまな課題・問題点がグループ全員の共通認識になりました。
 2回目は10月20日(土)に開催し、「まちあるき点検の結果発表」「問題点の整理」「改善素案の提案」を行いました。今回は、まちあるき点検で出た課題を、各グループごとに整理し、グループとして考えられる主な問題点を整理しました。また、コンサルタントによる、課題・問題点の改善素案の提案が行われ、それに対する意見交換・討議が行われました。
 今後は、改善素案に対して出された意見を基に、3回目のWSに向けて事務局で修正案を作成し、WSでの意見を取りまとめた後、懇話会に諮りながら基本構想の策定を進める予定です。

4 おわりに

 市職員も含めて、参加者の中には初めて障害者と話をする人も多く、とまどいもあったようです。しかし、話をしたり、一緒に活動するうちに、障害者が街の中の移動で、いかに苦労しているかについて改めて理解されたようです。
 また、移動をするために、どんなことがバリアになっているのかを当事者から直接聞き、自らが体験することができました。WSを実施した一つの意義がここにあると思われます。いろいろなことを、いろいろな人が一緒になって議論していくことが、さまざまな問題を解決していくためには必要であると感じました。

(執筆)

相模原市都市交通計画課 田中俊和・小原隆
株式会社アルメック 渡辺成彦・永元真也
東京都立大学大学院都市科学研究科教授 秋山哲男