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定期発行にこだわる「ふれあいセンター」のミニコミ紙
『ふれあい』と『つどい』

永山盛秀

1 精神障害者が中心となって運営する「ふれあいセンター」

 平成7年2月にスタートした「ふれあいセンター」は、精神科に通院する仲間が中心となって運営する活動センターで、有限会社を設立し、小規模作業所を開設させ、グループホームを運営しています。

2 障害をもちながらも自立と納得のいく社会参加をめざして

 「ふれあいセンター」では、精神症状の回復や精神障害の克服を最優先課題とするのではなく、精神症状や障害をもちながらも地域で普通に暮らせることを大切にしています。そのためにも、親兄弟姉妹からは精神的にも経済的にも自立し、これ以上の負担をかけないように心がけています。
 社会へのかかわりについても、限られた社会資源の利用にとどまることなく、あらゆる可能性に挑戦しながら納得のいく社会参加をめざしています。

3 社会の偏見は自然になくなるものではなく、お互いの努力でなくしていくもの

 しかし、精神障害者への理解は決して十分ではなく、スムーズに受け入れられる環境とはなっていません。そのために、精神症状の回復は図られながらも、長期の入院生活を余儀なくされている例も少なくありません。
 それは、精神障害者の実像が正しく知らされていないことによるものなので、自然に解消されるものではありません。精神障害をもつもの同士があえて隠さない生き方で、実際の姿を示していく努力なしには解決できない課題だと思います。「ふれあいセンター」では、社会に対して積極的にアピールする努力を行っています。

4 生きる力を育むために

 精神障害者の社会生活を困難にしている要因は社会環境のせいだけではありません。障害者自身の生きる力の弱さも痛感させられます。「ふれあいセンター」の呼びかけ、県内各地で開いている「つどい」は生きる力を育むものとなっています。いろいろな考えの存在を認識し、表現力を豊かにすることで対人関係の苦手さを克服するきっかけとなっています。

5 ミニコミ紙の目的は知らせることではなく、運動を組織すること

 「ふれあいセンター」のミニコミ紙『ふれあい』と『つどい』は、発行当初から情報の提供を目的としたものではなく、運動を組織するための媒体として位置付けてきました。可能な限り直接配布を心がけ、配布困難な遠方についてはFAX送信を行っています。

6 すべての県民を対象に、身近なところからの広がりを

 二つのミニコミ紙は、沖縄県内の精神保健福祉に関する情報と各会場の「つどい」情報を掲載していますが、すべての県民を視野に入れての作成と配布を意識的に行っているため、関係機関や団体だけでなく、関心のある団体や個人にも積極的に配布しています。医療機関や行政、福祉施設などはもれなく配布しています。教育機関や警察署、マスコミ、企業、労働組合などに加え、喫茶店や居酒屋、旅行代理店、民宿など個人宅も含めて約120か所に配布しています。

7 定期発行にこだわって

 二つのミニコミ紙は、毎週月曜日付けで発行しています。FAX送信も土曜日から日曜日にかけて送信しています。「毎週月曜日の発行」を最優先の課題とし、欠かさず発行しているため、読み手もそのつもりで待つようになっています。
 月刊誌が一般的ななかにあって、週刊情報には速報性としての期待もあり、関係団体からの記事掲載の依頼もあります。この頃では関係団体からも活用されるようになってきました。

8 配布ルートの工夫と開拓で確実な配布体制の確立を

 発行を重ねるごとに配布対象者も多くなり、平成13年11月現在で約600部となっています。毎週月曜日に、運転班やバイク班、徒歩配達班が約120か所を15コースに分かれて配布しています。新しい配布先が増えるたびにコースの再編成を行うこともあり、合理的で確実な配布体制を維持するために常に変化しています。
 ミニコミ紙の編集作成から印刷、折り曲げ作業、FAX送信、翌日の配布作業と障害をもつ仲間たちのかかわりも広く、おおよそ20人の仲間がこの事業に参加しています。

9 「ふれあいセンター」の「ついで産業」との結びつきで

 「ふれあいセンター」では、ビル清掃の事業や喫茶店の運営、出張販売など、運転手による送迎を必要とする事業が多く、小回りのきくバイク班もフル回転で活動しています。そのため、那覇市内を中心に1日に何度も同じコースを通る機会が多く、わざわざではなく、ついでに行う産業として「ついで産業」という手法を用いています。ミニコミ紙の配布もそのルートに乗せながら、時にはミニコミ紙の配布ルートに沿って新たな事業の展開も生み出しています。
 最近では、スーパーなどが取り組むことの困難な宅配サービスを「すき間産業」として位置付け、トイレットペーパーやペットフード、お米の宅配も行うようになりました。ミニコミ紙の配布活動と宅配事業の結合で、社会参加の機会が飛躍的に増大してきました。

10 障害をもつ人ももたない人も共に暮らせる普通の社会の実現と、その社会での納得のいく社会参加をめざして

 今の社会は障害をもつ人には暮らしにくい社会ですが、お互いが努力することで、いわゆる「障害をもつ人ももたない人も共に暮らせる普通の社会」の実現は可能だと思います。そのことに強い確信と展望を持って、納得のいく社会参加に心がけているところです。より多くの方々とのネットワークを広げるためにも、着実な発行と併せて紙面の充実化にも努力していきたいと思います。
 なお「ふれあいセンター」の2つのミニコミ誌は、ホームページ上でも閲覧できます(http://www6.ocn.ne.jp/~o-seiren/)。

(ながやまもりひで 「ふれあいセンター」相談員)