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1000字提言

精神障害者の居る場所

野上温子

 10月1日、私が働いている自立生活センター立川で、市の委託事業として精神障害者の地域支援センター「パティオ」が開設された。付置型ではなく市が委託する型で行うセンターの数もまだ少ないなか、自立生活センターが委託先になったのは、初めてのことではないだろうか。近隣の関係者から大きな注目を浴び、成り行きを見守られているところである。
 オープン初日、併設で用意された、だれもが自由に出入りできるオープンスペースに10人以上の人たちが訪れ、その後も連日、入れ替わり立ち替わり、10人前後の人が出入りしている。なかには朝10時から夜7時まで、オープンしている間、1日中居続ける人もいる。予想に反しての盛況ぶりに、スタッフも驚いている。今のところ、スペースを利用する人は100%が男性。彼らと話してみると、居場所のない人たちなのだということが伝わってくる。彼らが居心地よく、安心できる場所を求めているのが感じられる。そして現実には、そうした居場所がないために、探し続けて新しく開設された場に期待を寄せて訪れてくる。長い間、身体障害者の自立生活運動にかかわってきた私にとって、身体障害の人たちとは違う困難さが数多くあることを日ごとに知らされる毎日である。
 彼らのやさしく繊細な心は、さまざまなことで傷ついて、社会や周りの人との接点を見失い、身をすくめ、よりいっそう居場所を失う。男性の利用者が多いということは、女性よりも男性のほうが家の中で、社会の中で役割を見い出せず、また障害故に役割を持てず、居場所を失ってしまうのではないだろうか。心の所在なさが身体の居場所もなくしてしまっているように思える、
 「心の居場所」を作ること、それはとても大切に思えるけれど、「心の居場所」とは、どんなところなのか。安心して、ゆったりとした気分で私はここに居ていいのだと思える場所を作り出すために、私は一体何ができるのだろうか。立川支援センター「パティオ」はどんなサポートができるのか。彼ら自身の力を信じ、彼ら自身で作り出す居場所を一緒に探していきたい。
 開設されたオープンスペースが一過性に終わらず、いつまでもみんなが来たくなる場、温かく安心できる場でありつづけるために、彼らと共に考えていきたいと思っている。

(のがみはるこ CIL立川支援事業部総括責任者)