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最終年記念フォーラムキャンペーン活動の推進
-自治体障害者計画策定推進と欠格条項総点検キャンペーンの開始-

金政玉

●はじめに

 「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムの目的は、1.わが国における10年の成果を評価し、課題を明らかにするとともにその推進をはかる、2.アジア太平洋地域諸国の現状と課題を明らかにし、ポスト十年への対応策を探る、3.第6回DPI世界会議の成功を期し関係者の連携と協働を推進する、4.RIアジア太平洋地域会議の成功を期し総合リハビリテーション分野における障害当事者と専門家の連携を深めることが掲げられています。特に目的の1.との関係では、三つの国内キャンペーンを設定し、(1)「市町村障害者計画」策定推進キャンペーン、(2)「欠格条項」総点検キャンペーン、(3)「情報バリアフリーとIT環境の整備」推進キャンペーンの取り組みが決定されています。最終年記念フォーラムのキャンペーン委員会政策部会では、(1)「市町村障害者計画」策定推進キャンペーン、(2)「欠格条項」総点検キャンペーンの課題を担当し、昨年5月頃から企画内容の検討を行ってきました。
 以下、自治体障害者計画策定推進と欠格条項総点検キャンペーンの内容と今後の展開について報告します。

●これまでの自治体調査から見えてきた課題

-市町村障害者計画策定が進まない現状について-

 「新・障害者の十年推進会議」が実施した「市区町村長アンケート調査」(1995年)では、回答率62.8%で2043の市区町村が策定済、策定中は11.3%にとどまり、「第二次市区町村長アンケート」(98年)の際は、回答率66.2%で2155の市区町村が策定済、策定中53.4%(当時の総理府調査では同時期53.8%)という結果で、市区町村での障害者計画策定が進んでいないことが明らかになりました。
 見えてきた課題として、(ア)関係障害者団体の動きの低迷(参画、周知の必要性)、(イ)当事者団体の政策決定への参画に関する課題(運動の再結集の必要性)、(ウ)障害者保健福祉施策における「障害者計画」の位置づけの明確化と見直しの必要性、(エ)自治体間の格差に係る問題点(広域でのプラン作成の際に、たとえばA町では施策にないものが広域計画では盛り込まれている場合等)、(オ)計画の具体性、数値目標を含む計画の少なさ(予算問題)、(カ)実体との乖離、実効性への疑問(特に地域自立生活支援に向けた条件整備等)、(キ)精神障害者、知的障害者、難病への対策の遅れ等について、今後の取り組みをどのように促すか等が上げられます。
 また、障害者プラン策定に関する課題としては、1.プラン策定への障害当事者の主体的な関わりがなかった、2.数値目標は根拠と理念が不明確、特に施設・病院から地域生活へという方向にはなっていない、3.教育分野における分離政策の継続、4.重度障害者の雇用拡大を展望する施策がみられない、5.権利擁護機関及びシステム作りの具体策が示されていない、6.自立生活の基盤となる所得保障政策が示されていない、7.財源確保の見通しが不明確という点などを指摘することができます。

●本キャンペーン活動における自治体調査の位置づけについて

-障害者計画に求められている課題の明確化-

 このたびの「新十年」最終年に向けた自治体調査は、これまでの自治体調査の経過を踏まえ、キャンペーン委員会政策部会に、障害をもつ当事者の研究者・弁護士を含む13名の評価委員会(委員長 北野誠一氏〔桃山学院大学教授〕)とその下で立案を担当するワーキングチームを設置し、国または都道府県・政令指定都市、市区町村の障害者計画が、93年に国連総会で採択された「障害者の機会均等化に関する基準規則」、あるいは 「アジア太平洋障害者の十年十二課題」の「(障害当事者の)社会への参加・統合・人権」という精神からみて、どのような現状にあるのかを、障害者計画の策定過程と計画に盛り込まれている内容から検討することを目的としています。また、障害者の社会参加を法律上閉ざしている資格制限等に係る欠格条項の問題について、現在、国レベルで見直しが進められていますが、自治体(地域)レベルではどうなっているのか。障害を理由とした職員採用等にかかわる受験資格の制限、または公的施設等の利用や議会や教育委員会等の傍聴制限等に係る「欠格条項」の実態をあわせて調査します。
 障害者基本法は、93年に制定されて本年で10周年を迎えます。障害者基本法で位置づけられている国の「障害者基本計画」(障害者対策に関する新長期計画)と、その実施計画として重要施策に数値目標を盛り込んだ「障害者プラン」(95年)も本年で終了します。「新障害者プラン」の策定に向けて、国の「障害者基本計画」の見直しが行われることになりますが、社会福祉法の制定による利用契約型サービスを基本とする支援費制度の実施や交通バリアフリー法に基づく自治体の基本計画の策定に向けた取り組みなど、これからの障害者をめぐる状況は、大きな変化に直面することになります。こうした中で、とりわけ、地域社会のさまざまな領域において、障害当事者の自己決定の尊重を通じた参加・参画と権利保障に関する実態把握を本調査を通じて行うことによって、現状の障害者計画に求められている課題を明らかにしていくことが必要になっています。
 どんな障害をもっていても一人ひとりを大切にしていく地域社会のノーマライゼーション化を実現していくために、本調査の経験が、今後、地域で生きる障害者が、市民としての権利と自由を行使し、それぞれの地域社会での活動に完全に参加するための各自治体の取り組み、さらには、政府の取り組みを、よりいっそう促すための基礎調査として活用していきたいと考えています。

●キャンペーン活動の二つの柱

 こうした自治体調査を基本とする柱とともに、キャンペーン活動の枠組みとして、もう一つの重要な柱を立てています。それは、都道府県・政令指定都市障害者社会参加推進センターを構成している団体や日常のネットワークを通じて連絡のとれる当事者団体等に自治体調査の集計結果(本年3月頃を予定)の情報を提供し、当事者団体等の立場から、当該自治体の障害者計画の策定過程に、とりわけ当事者の参加・参画がどのように実現されているかという点に焦点をあててモニタリング(評価)を行い、当該自治体との協議と合意づくりを通じてよりよい障害者計画の策定をめざすというものです。
 このような自治体調査と関係当事者団体等によるモニタリングの二つの柱立てを軸に、国内における「十年」の成果の評価と課題を明らかにしていくためのキャンペーンを地方と中央との連携を通じてセミナーやシンポジウム等を積極的に展開し、障害をもつ人への差別を禁止し権利を明記する法律制定への機運を盛り上げていくことが重要になっていると考えます。
 多くの方々との協働によるキャンペーン活動の広範な展開を強く期待しています。
(注)自治体調査票と内容説明にあたる「Q&A」については、最終年記念フォーラムのホームページ(http://www.normanet.ne.jp/~forum/)に掲載していますので、ご覧ください。

(きむ・ぢょんおく キャンペーン委員会政策部会担当、DPI日本会議)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年1月号(第22巻 通巻246号)