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1000字提言

「心の障害」の特効薬

福原誠二

 アメリカで開発された映像字幕作成ソフトを3年前から販売することになって、初めて「聴覚障害」のことを具体的に知る機会が増えました。このことはそれまでの私を大きく変えるターニングポイントになりました。
 5年前に会社を始めた時は、少しでも社会に貢献できる会社にしたいと思っていましたが、なかなか叶いませんでした。今思えば、それは社会貢献を難しく考えすぎていたからだと思います。しかし仕事を通じて「聴覚障害」について学んでいくうちに、ふと気がつくと「聴覚障害者向け字幕」ついて、少しは人前で話せるまでになっていました。もちろん話している内容はすべて仕事を通じて教えていただいたことばかりでしたが、「聴覚障害者向け字幕」の現状についてのお話をお聞きするたびに、自分の心に響くことや「何とかしなければ」と思うことを、自分なりに一生懸命に言葉にしてきたことが「伝えることのできる自分」を作り、結果として、微力ながら自分でも社会に役に立てるという充実を生み出せたように思います。
 私は「社会貢献」を考える時に大切なこと、それは「自然体」だと思います。これは私見ですが、どんな人でも困っている人や助けを必要としている人を見た時に、最初に思うことは「自分がするべきことは、そしてできることは何?」ということではないでしょうか。ところがその次に「自分にできるのか?」とか「人からなんて思われるだろう?」などと考えて行動を止めてしまいます。そして考えているうちに、その状況が通り過ぎたり、他の人が手を貸していたりして、何もしないで終わってしまったという経験をした方もいらっしゃることでしょう。
 そんなことを繰り返しているうちに、いざという時にすぐに動けない自分が形成され、「貢献」ということ難しく考える自分がパターン化されてくるのではないでしょうか?少なくともこの範疇(はんちゅう)にいた私は、今までは何もできないでいましたし、何かをやろうと思っても考え過ぎて、実際には行動に移せませんでした。これはそれまで私が「心の障害」をもっていたということでしょう。
 本来の自分の「自然体の心」に素直に従うようになってからは、この「心の障害」は消えました。今では「聴覚障害者向け字幕」について、少しでも多くの人に伝え、理解を求めようとすることが自然にできるようになりましたし、それは私の「喜び」になっています。大切なことは「何ができるか?」ではなく「何をするか」にあったように思います。
 「伝える」ということはささやかな行為ですが、とても大きなカにもなることをたくさん経験しました。人間本来の「優しい気特ち=自然体」が「心の障害」を治癒する最高の薬だと信じて、これからも多くの方に「伝えて」いきたいと思います。

(ふくはらせいじ 株式会社カンバス)