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体験
身体の一部として考えたい
車いす用クッション
クッションの遍歴!

広畑豊

 1949年東京生まれ。30歳過ぎで何とか仕事もしていましたが、脳性マヒの緊張による二次障害で車いす生活になり、それからはADLの改善・介助の軽減・QOLの向上をめざし、工作の得意な介助者と生活に必要な自助機器具類の工夫が始まり、今ではそれがライフワークになっています。
 私が重宝している手作り機器類を一部紹介します。電動ふとん掛け機は、夜中の寝返りや排尿時に掛け布団を上げることで動作が容易になります。また、暑くなった時にも少し上げることで体温調節ができます。

 20年近くの車いす生活でクッションもいくつか取り替えてきました。初めの頃は5cm厚のスポンジでしたが、お尻の肉が落ちてくるとともに仙骨辺りの痛みがでてきたので苦しまぎれにスポンジを削ってみましたがあまり効果はなく、今度は座骨辺りの痛みもでてきて、問題の解決にはなりませんでした。結局10cm厚のスポンジの物に取り替えてみました。痛みのほうはだいぶ楽になりましたが、座面が5cm高くなった分姿勢が不安定になり、ハンドリムの操作もやりづらくなったことを覚えています。
 その後、失禁などでスポンジも傷んでくるのでスペアを用意しようと思い、何かほかに良いクッションはないかと探してみましたが、最近のように種類は多くなく、フローテーションパットというゲル状(コンニャク状)のクッションを試してみました。感触は良いと思いましたが、数か月毎日使用していたところ、蒸れの影響か股の辺りが痒くなり、通気性や安定性に問題を感じ、また取り扱いにも注意が必要でした。その後、T社の車いす用クッションは失禁対策にカバー地の裏にビ二ール加工がしてあり良いと思いましたが、しばらく使っていると痒みや痛みもでてきたので、試しにカバーを外し、薄めのタオルを掛けて使ったところ、問題はかなり解消しました。
 最近、米国製のハイテク・クッションを電動車いすで使っています。これは座ってから内部の空気を調節すると、使う人のお尻の形にクッションが凹み、そのままの形を保つため、電動車いすで体が揺さぶられても姿勢がくずれません。内部の構造も周りは固めのスポンジで揺れに強く、体に当たる部分は柔らかめのスポンジで、長時間使用してもお尻が痛くなりません。カバーの生地や裏側の薄いスポンジも通気性にはかなり考慮してあるようです。そこで使用時間の長い室内用の車いすにも使ってみたところ、使い心地は良いのですが、半年以上経つと股の辺りに痒みがでてきてしまいました。蒸れの影響かと思い、T社の通気性の良いカバーを使ったスポンジのクッションに取り変えたところ、治ってきました。
 結局、室内用車いすには通気性・伸縮性の良いカバーを使った5cm厚のスポンジのクッションを2枚重ねて、薄めのタオルを掛けて、汚れたら上だけを取り替える方法で何とか使っています。しかし、クッションだけで快適な車いす生活は限界で、車いすのチルト&リクライニング機構も併用しています。理想的な車いす用クッションはかなり難しいようです・・・!。

(ひろはたゆたか 自助機器具研究家)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2002年1月号(第22巻 通巻246号)