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列島縦断ネットワーキング

大阪
ITが変える社会
~生活の中での情報~

(第18回大阪市リハビリテーション市民講座・シンポジウムより)

木下立雄

 去る2001(平成13)年11月30日(金)と12月1日(土)の両日、大阪市平野区喜連西6丁目2番にある大阪市立心身障害者リハビリテーションセンター・大阪市更生療育センター・大阪市職業リハビリテーションセンター・クレオ大阪南大ホールにおいて、毎年恒例の大阪市リハビリテーション市民講座(主催は大阪市・社会福祉法人大阪市更生文化協会)が、盛大に催されました。このイベントは、“障害者の方のリハビリテーションに対する大阪市民の方の正しい理解を深めると共に、障害者の方との交流を図ること”を目的として、1984(昭和59)年より実施されていて、1993(平成5)年より大阪市内全域において実施されている「福祉ちょっと体験スクール」(主催は大阪市・社会福祉法人大阪市社会福祉協議会)と並ぶ、今回で18回目を数える、大阪市内では大規模な社会福祉啓発事業の一つです。
 今回私は、2日目の午後1時から2時30分まで行われた基調講演「ITが変える社会~生活の中での情報~」(講師は徳島大学教授の末田統氏)を受けて、2時40分から4時30分まで開かれたシンポジウム(司会は花園大学助教授の愼英弘氏、助言者は徳島大学教授の末田統氏、シンポジストは赤塚裕子氏・林美恵子氏・筆者)に出席した3人のシンポジストの1人として、主に仕事(職場)でどのようにITを利用しているかと、趣味(自宅)でどのようにITを応用しているかの二点について、デモンストレーションを中心にして、15分間程お話ししました。
 デモンストレーションは、私のほうで準備した5件のサンプルに基づいて、事務局の方に用意していただいたコンピュータとプロジェクターを実際に動かしながら進めました。デモンストレーションの一つ目は、WordやWin-BES等を使って、行政機関の広報紙の点字版を作る方法、二つ目は、Wordや一太郎等を使って、ホームページの原稿を作る方法、三つ目は、言葉を話すホームページを作る方法、四つ目は、Excel等を使って、バリアフリーな当番表を作る方法、五つ目は、ユニバーサルデザインなプログラムを作る方法に関して、いずれも大急ぎで説明しました。
 ここで、社会福祉法人大阪市更生文化協会・大阪市職業リハビリテーションセンターと私のかかわりについて、簡単に紹介します。  私は1995(平成7)年より、大阪市役所の一般事務職員として、これまで約7年間、住吉区民の方々のご要望をお聞きしたり、ご相談をお受けしたり、広報紙の点字翻訳をしたり、大阪市役所のホームページの中の住吉区役所に関する記事の原稿を作成したりしています。私は入所当初より、当時としては大変珍しかったパソコンを用いて、一般事務を執るという職業生活を送る傍ら、コンピュータやネットワーク等(今日の日本国内においては、ITと総称される一連の分野)は、それに接する機会を創出することによって、視覚障害者の方の情報環境を著しく好転させるものと確信して、大阪市内のいくつかの社会福祉関係施設を訪れて、視覚障害者の方を対象とするパソコン通信(パソコンはもとより、ウィンドウズやインターネットは、いまだに一般的ではなかった)講習会の開催を提案して回るというボランティア生活も併せて送っていました(1996(平成8)年の初春頃)。
 そのような取り組みを1年間程続けた後の1997(平成9)年の初春頃に、私は大阪市職業リハビリテーションセンター所長の関宏之氏に視覚障害者を対象とするIT講習会を開講するので、リーダーとなって協力してもらえないかという申し出を受けました。それから1年間をかけて検討し、さらに約1年間の試行期間を経て、実施の運びとなりました。その頃このような講習会は、役所の事業としては、極めてざん新でしたので、所長の関宏之氏をはじめ、センターの職員の方には、多大なご苦労をおかけしたと思いますが、視覚障害者の方を対象とするIT講習会は、1999(平成11)年の初夏頃より、同センターにおいて、本格的に実施されるようになって、今日までの約3年間、無事に継続されています。そしてこれが、関宏之氏と私の直接的な出会いです。
 今回のシンポジウムで、私が強く再認識したことは、身体に障害のある方にとってのITの果たす役割とは、まず第一に、身体の不自由な機能を補うために、代用(身体の不自由でない機能を駆使して、単独では難しい作業を代行)するものである、続いて第二に、その代用(代行)が十分に可能になったうえで、仕事に利用できたり、趣味に応用できたりするものであるということです。例を挙げれは、足が不自由で、外出が困難な企業家が、オフィスに居ながらにして、パソコンやインターネットを使って、電子商取引をしたり(林美恵子氏の発言を要約)、耳が不自由で、電話での会話が困難な主婦が携帯のメールを使って、いつでも気軽に、家族の帰宅時間を確認したり(赤塚裕子氏の発言を要約)、目が不自由で、字の読み書きが困難な事務員が、パソコンやプリンタを使って躊躇(ちゅうちょ)なく文書を作成したり(筆者の発言を要約)することです。つまりこれは、ITによって、不可能が可能になる、典型的なモデルです。
 最後になりますが、今回の講座を実施するにあたって、主催や協賛をいただいた大阪市役所のみなさんと後援をいただいた民間の各団体の方に対して、本誌の紙面を借りて、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。

(きのしたたちお 大阪市役所)