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知り隊おしえ隊

ビッグ・アイに行ってきました

石田義典(中部障害者解放センター スタッフ)
小坪琢平(自立生活センター・ナビ スタッフ)

 大阪府堺市の泉北高速鉄道「泉ヶ丘」駅を降りると真新しい建物が目を引きます。昨年9月にオープンした国際障害者交流センター・通称「ビッグ・アイ」です。「泉ヶ丘」駅の近くには、ビッグ・アイのほか、大型児童舘「ビッグバン」や泉北パンジョ(ショッビングモール)もあり、きれいに整備されたまちです。
 「国連・障害者年の十年」を記念して造られたビッグ・アイは、宿泊施設35室・レストラン・研修室・1500人収容のホールを備えた多目的総合施設です。いずれも広い空間を確保したバリアフリーの設備が整っているので、すべての人に使いやすくなっています。ここは、今年の10月に行われる「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念フォーラムの「大阪フォーラム」のメイン会場となります。今回はどんな設備になっているのか紹介したいと思います。

さまざまな障害に配慮された館内

 大阪ではあまり宣伝されていないので、まだ利用も少ないようですが、施設としては予想以上にスグレものです。点字ブロックは駅から建物までと、玄関ロビーまであり、館内は点字ブロックの代わりに凹凸のあるカーペットが使われています。壁に沿って50センチ位の凹凸の幅のある黒いカーペットが引いてあり、壁には点字がついた手すりが設置されています。所々には触地図も設置されています。壁の文字表示も大きく、かつ手で触るとわかるくらいに膨らみを持たせてあります。また、この泉ヶ丘周辺でポケベルほどの大きさの音声案内べルが利用でき、建物のポイントに近づくと音声で位置を知らせてくれます。これは堺市で進めているシステムですが、堺市民でなくてもビック・アイの利用者には貸し出され、ビッグ・アイの館内でもこのシステムを使うことができます。車いす利用者に限らず聴覚障害者や視覚障害者に対してもさまざまな配慮がされています。

アクセスは簡単・便利

 アクセスは電車で行く場合は、梅田からだと地下鉄梅田駅(JRの場合は大阪駅)から地下鉄御堂筋線に乗り「なかもず」駅まで行って乗り換え泉北高速鉄道を利用し「泉ヶ丘」まで行きます。
 地下鉄御堂筋線の「なかもず」駅からの泉北高速鉄道への乗り換えも連絡通路があり、車いす用トイレやエレベーターもあるので問題ありませんし、「泉ヶ丘」駅下車してすぐとアクセスもうれしいです。難波から行く場合は、南海電車の難波駅から準急を利用して乗り換えなしで泉北高速「泉ヶ丘」駅まで約26分で行けます。
 車で京都方面から行く場合は、名神高速で「吹田JTC」まで行き、次に近畿自動車道を使い「松原JTC」まで行き阪和自動車道の「堺IC」で降ります。
 奈良方面から行く場合は、一般道を走り「宝来IC」まで行き第2阪奈道路~阪神高速東大阪線で「東大阪JTC」まで行き、近畿自動車道~阪和自動車道で「堺IC」で降ります。ビッグ・アイの駐車場は車いすスペース10か所を入れて合計69台収容できます。

フットレストボタンにテレビ画面

 まず、建物に入って目をひいたのは2台のエレベーター。なんと33人乗りで電動車いす4台が余裕で入れます。しかも視覚障害者の配慮も含め最新設備のエレベーターです。エレベータードアのガラスや中の鏡の位置も低い位置からついているので、車いすの高さでも景色が見やすく開放的です。しかも一般用の操作盤も側面に付いているので、扉の幅もかなり広くなっています。エレベーターの中にはテレビ画面が付いており、画面に映っているコンピューターグラフィックが手話を行い、その下には字幕表示があり止まっている階やドアの開閉について音声と共に表示してくれます。ドアが開いている間は「ドアを開けております」と音声が変わるのもうれしい!(コンピューターグラフィックは時間帯によっていろいろな景色に変わるようです)
 車いすのフットレストで押せる「フットレストボタン」や「緊急呼び出しボタン」も付いています。このボタンを押すと自動的に各階に止まるため、エレベーター内でボタンを押す必要がありません。なお、このエレベーターは避難時も利用できるとのことで安心です。

トイレ

 次にトイレを紹介しましょう。この施設では「一般用トイレ」と「多機能共用トイレ」に分かれています。多くの所は普通「車いすトイレ」と呼びますが、ここは違います。多機能共用トイレと呼んでいる理由は、シャワー・折りたたみべッド・オストメイトに対応できる設備が整っているからです。ここのトイレは一般用も広い造りになっており、しかも個室は回転式スライドドアとなっているので、手動車いすで利用する場合は使いやすいのではないかと思います。回転式スライドドアではない洋式便所にも手すりが付いていたり、洗面台にクラッチ(杖)置きが付いているのもうれしい配慮です。このほかにも、ベッドで寝たままできるトイレもあり一般用も全体的に広く、基本的に車いす対応になっています。

ホールと研修室

 この施設の目玉の一つと言えるこのホールは、前方に座席が700席・後方に座席が800席あり、後方部は固定式で階段状の椅子となっており最大1500人を収容できます。前方部は座席自体が床に収納されるようになっているので、フラットにすることも可能だし、床自体も上下するので段差をなくすことができます。車いす席が最大300席可能なのもすごいです。前方部の柵は簡単に取り外しができ、前方部の椅子の配置も変えられるので前半分でのイベントも可能です。床と椅子の操作で6パターンの空間ができるそうです。舞台はもちろんバリアフリーで、客席側からも舞台裏からも段差なしで行ける構造になっています。
 音響設備のレベルは高いので、本格的な演劇やNHKの「のど自慢」が来ても大丈夫とのことでした。また、研修室も3タイプあり、約144人対応の研修室(大)、約90人対応の研修室(中)、約63人対応の研修室(小)があります。研修室(小)はホールの舞台裏にあり、楽屋としても利用できるようになっています。

バリアフリー仕様の35室

 宿泊施設は和室・洋室・和洋室と35室あり、全室スライド式ドアで、鍵はカードを近づけるだけで開くようになっているのでドアを開けるのも簡単にできます。部屋には、電話・FAXが完備されており、ハンガーも車いすで使いやすい位置についていました。部屋のタイプとしては3タイプの部屋がありました。天井走行リフトが設置されている部屋や、聴覚障害者への配慮として来客等を知らせるフラッシュや目覚まし、緊急通報時にべッドを振動させる装置も用意されています。そのほかにも、入口から全くフラットになっている和室もありました。
 私は脳性マヒで、外出時は電動車いすを使っています。大阪市内で一人暮らしをしているのですが、家の中では「四つばい」で移動し、風呂は浴槽に入るのが大変なのでいつもシャワーで済ましていますが、ここのお風呂は浴槽に移りやすいように台が置いてあったのでうれしかったです。私がここの部屋に泊まるときも、この設備があれば風呂も使えるので安心して宿泊できると思います。また入浴の際にシャワーチェアや湯上がりマットが必要な場合は貸し出しもしてもらえるそうですので、フロントに問い合わせてください。

 さて料金は次の通りです。

部屋 料金
洋室 一般
6,000円
障害者
4,800円
和室 一般
7,000円
障害者
5,600円
洋室・ツイン 一般
8,000円
障害者
6,400円

 障害者料金は、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳を持っている場合です。料金はできれば、もう少し安いほうが使いやすいなと思いましたが、設備的にもかなり使いやすくつくられているので、かなりオススメだとは思います。
 ビッグ・アイ建設前に兵庫県の障害者団体にバリアフリー度チェックを依頼したので、特に車いす利用の方には使いやすいのではないかと、案内してくれた館長さんはおっしゃっていました。障害者団体等の団体宿泊も可能なので今年10月に開催される「大阪フォーラム」に参加しながら、大阪見物の際にはご利用ください。

近くにはバリアフリーの整った施設がいっぱい

 泉ヶ丘駅周辺はペデスリアンデッキと呼ばれています。また、それぞれの施設とその連絡通路全体がバリアフリーなエリアとして整備されています。ビッグ・アイの隣には大型児童館ビッグバンがあります。銀河鉄道999で有名な松本零士さんが館長の、宇宙をイメージした建物で童心にかえって遊んでみてはどうでしょうか? 昭和30年代の街並を再現したコーナーや体が丸ごと入るシャボン玉づくり、顔や手などが浮き出てくる装置や自分が描いた絵がコンピューター画面の中で動くものなど、大人でも結構楽しむことができます。
 泉北高速鉄道を使い「泉ヶ丘」駅から二つ目の「光明池」駅に行くと、大阪職業能力開発校や大阪府障害者交流促進センター・通称ファインプラザ(障害者スポーツセンター)があり、さらに2001年2月には、今まで関東にしかなかった専門店も入った大型スーパー「カルフール」がオープンしました。店内は、車いすでも全く問題なく買い物を楽しめるように通路は広くつくられているし、商品棚も低い位置に作られていて商品が取りやすく店員の対応もバッチリです。車いすトイレはもちろんですが、車いすのまま乗れる動くスロープ(オートウォーク)もあるので、一度行ってみる価値は十分あると思います。
 このように「光明池」・「東ヶ丘」周辺は学校や施設等がいろいろと立ち並んでいるので、少し足を伸ばしても面白いと思います。

(いしだよしのり)
(こつぼたくへい)