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カウントダウン AP10年

第6回DPI世界会議札幌大会

山田昭義

DPIの誕生

 国際障害者年である1981年にシンガポールで、障害種別を超えた障害者自身による国際組織、DPI(Disabled Peoples’ International=障害者インターナショナル)が産声を上げました。53か国の障害当事者によるスタートでした。
 その前年に開かれた、カナダのウィニペグで開かれたRI(リハビリテーションインターナショナル)世界大会が一つのきっかけでした。この会議には、今のDPI世界議長であるジョシュア・マリンガ(ジンバブエ)や、現国連社会開発委員会特別報告者のベンクト・リンクビスト(スウェーデン)など、40か国から250人の障害当事者も、障害のない専門家たちに交じって参加しました。この会議では、障害者組織が各国の代表団の50%を占めることを求めた決議案がスウェーデンから提出されました。つまり、非障害者の専門職と障害当事者とが対等の発言力を持つように求めた決議案です。しかし、残念ながらこの決議は、成立しませんでした。
 この結果に不満を持つ障害者を中心に、新しい組織作りが進められていきます。専門家だけで障害者のことを決められたくない、そうした思いが形になって動き出した瞬間でした。
 それから1年後、国際障害者年である1981年にシンガポールで第1回DPI世界会議が開催されました。日本からも、50人を超える参加者がシンガポールに集まりました。その後、82年に世界評議会が日本で開かれました。その会議で「平和ステートメント」を発表し、広島に移動しての平和行進も行われました。
 これまでに、DPIは5回の世界会議を開催してきました。81年のシンガポール、85年のバハマ、92年のバンクーバー(カナダ)、94年のシドニー(オーストラリア)、98年のメキシコシティーの5か所です。
 世界会議では、当然ですが、その時々の障害者を取り巻く諸課題が取り上げられます。「福祉」の集会ではありませんから、内容は社会全般を通して多岐にわたりますし、日本であまり取り上げられてこなかったものも多くあります。たとえば、メキシコ大会の分科会では「戦争の負の遺産~地雷被害者への支援」「国連開発計画とDPIの協力」「市民権」「国際的な開発銀行との連携」などがありました。
 また、「女性障害者」「ジェンダー」といった課題が大きく取り上げられ、数多くの女性障害者リーダーが集まるのもDPIの特色と言えるでしょう。

第6回DPI世界会議は 三つのキーワード

 第6回DPI世界会議札幌大会のテーマは「すべての障壁を取り除き、違いと権利を祝おう!(Freedom from Barriers: Celebrating Diversity and Rights!)」です。この中には「障壁」「違い(=多様性)」「権利」という三つのキーワードが含まれています。
 ここで言われる「障壁」とは、段差などの物理的なバリアだけではありません。欠格条項に代表される制度的なバリアもあります。情報面のバリアも解決されるべき大きな課題です。そして、偏見や排除という心理的なバリアもあります。これらがあいまって、障害をもつ仲間たちが社会に参加できない状況、つまり社会からの隔離が作りだされています。
 札幌大会では、「アクセス」をテーマにした分科会を設けて、途上国での取り組み、ユニバーサルデザイン、情報・コミュニケーション、デジタルデバイドなどを取り上げる予定にしています。
 「アクセス」という言葉で言えば、労働市場へのアクセスや介助サービスへのアクセスなど、さまざまな社会サービスを障害者が主体的に利用する権利が保障されることも重要です。「労働と社会保障」の分科会では、所得創出活動や労働市場へのアクセスといった課題が扱われます。

幅広いプログラムの内容

 「違い(=多様性)」も障害種別を超えた組織独特の切り口です。DPIでは、リオデジャネイロで開かれた国連地球サミット(1992)や、翌年のマルタ島で開かれた国際家族年NGO会議、北京での国連女性会議(1995)をはじめ、「障害者」に限定されない分野の諸活動に積極的に関与し、障害当事者からの意見提起を行ってきました。
 98年のDPI世界会議メキシコ大会で採択された「メキシコ宣言」でも環境破壊や公害といった問題に言及するなど、世界を取り巻くあらゆる社会問題を自らの課題として取り組む場として世界会議を位置づけています。
 今回のプログラムを見ると、「障害種別や社会状況を乗り越えた連帯」という分科会テーマがあります。そこでは、戦争被害者や被災障害者、虐待被害者というさまざまな社会状況を抱えている人たちとの連帯や、これまでDPIの活動の中で比較的参加が少なかった知的障害当事者や精神障害当事者、HIV/AIDSの人たちなどの障害種別のグループとの連帯が議論されます。3障害別々のサービスを統一することにとどまるものではない、多様性を認める社会を求める当事者からの声が、参加者の皆さんに伝わっていけばと思います。また、これまで取り上げられることの少なかったグループの人たちが、世界の当事者運動のリーダーと意見を交わし合える場になるのではないかと期待しています。
 「多様性」を考えるうえで、最近のDPIで取り上げられることが多くなったトピックが、「生命倫理」です。遺伝子治療などの技術が進歩するということは、障害者にとって何を意味するのか、そして生命の質をいったいだれがどのように評価していくのか、急速に進歩するこの分野で障害当事者が提起すべき課題は膨大にあります。
 DPI世界会議札幌大会では、この問題について2日間かけてじっくりと分科会で議論を深めていきます。
 最後に、「権利」というキーワードがでてきます。昨年10月にDPI世界議長ジョシュア・マリンガが来日したときの講演テーマである「障害者の権利条約」もその一つです。条約に何を求め、IDA(国際障害同盟)などとどのように連携して実現させていくのかという議論が展開されます。
 権利条約を求める当事者の声の背景には、障害者がこれまでに数え切れないくらいの権利侵害を受けているという事実があります。単に、与えられるだけの権利条約であってはいけないと思います。DPIをはじめとする世界の障害当事者運動は、世界中で起こっている権利侵害事例を集めてきました。効果的なモニタリングや権利擁護活動が各国で機能していく必要があります。そして、当事者一人ひとりがきちんとした権利意識を高めていくことで、はじめて権利条約や差別禁止法が意味をなしてくるのです。条約に向けた議論と並行して、札幌大会では「人権」の分科会を設け、そうした国レベルでの取り組みや権利侵害事例の報告も行われます。

問われる「ポスト十年」

 アジア太平洋レベルでは、「ポスト十年」の議論が盛んになっています。DPIアジア太平洋ブロック評議会では、ESCAPなどを舞台に「障壁からの解放の十年(Freedom From Barriers)」を提案しています。さまざまなバリアを取り払い、具体的な社会条件を向上させていくために、これまでの十年がどのように生かされていくかが問われています。そのためにも、アジアの障害当事者がすべての過程に主体的に参加できるかどうかがポイントです。
 札幌で当事者主体で持たれるDPI世界会議の意味は、大阪フォーラムから滋賀県大津市でのESCAPハイレベル会合へと続く一連の行動のスタート地点として、極めて重要です。この流れをサポートするように、日本国内でもさまざまなキャンペーンや文書の起草などが予定されていますが、そのいずれもが障害当事者が真に主体的になれるように取り組まれるべきです。
 また、2000年からスタートした、アフリカ障害者の十年を当事者にとって実りあるものにするためにも、アジア太平洋地域における成果と課題を当事者の視点から評価する必要があります。DPIの世界レベルでは、こうした地域内でのプログラムの検証、評価、提起も札幌大会での重要事項として取り組もうと確認されています。
 この大会に向けて、私たち障害当事者は何を積み重ね、終わった後に何に取り組むのか。そして世界の仲間たちと何を分かち合うのか。とまどいながらも日本の障害当事者の仲間の一人ひとりが何かをつかみ取るチャンスにしてほしいと切に願っています。DPI世界会議札幌大会の登録用紙・発表などのお問い合わせは、DPI日本会議事務局(TEL03―5256―5365・FAX5256―0414)までお寄せください。世界会議への皆さんの積極的なご参加をお待ちしております。

(やまだあきよし DPI日本会議議長)


〈参考文献〉
「国際的障害者運動の誕生」 ダイアン・ドリージャー著 長瀬修訳、エンパワメント研究所

第6回DPI(障害者インターナショナル)世界会議札幌大会

(アジア太平洋障害者の十年最終年記念札幌フォーラム)

実施要綱

■大会テーマ
 「すべての障壁を取り除き、違いと権利を祝おう!」
■大会スローガン
 「なくそうバリア ふやそう心のバリアフリー」
■主催/DPI世界評議会、DPI日本会議、2002年第6回DPI世界会議札幌大会組織委員会、アジア太平洋障害者の十年最終年記念フォーラム組織委員会
■後援予定(行政)/内閣府、総務省、法務省、外務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省、北海道、札幌市
■大会期日及び会場
 (1)DPI世界評議会
  1.期日 10月13日(日)~14日(月)
  2.会場 調整中
 (2)第6回DPI世界会議札幌大会
  1.期日 10月15日(火)~18日(金)
  2.会場 道立体育総合センターきたえーる
 (3)DPI世界評議会
  1.期日 10月19日(土)~20日(日)
  2.会場 調整中
■大会日程   (下表のとおり)
■参加予定人数及び国数
 (1)全日程  2,000名(100か国)
 (2)初日のみ 850名(1F席500名・2F席350名)
■登録費(全日程参加)
 (1)参加者
   早期割引登録費 30,000円(7月15日以前申込・支払い)
   通常登録費   40,000円(7月16日以降申込・支払い)
 (2)介助者・同伴者
     登録費   17,000円
■初日参加費(初日プログラムのみ参加、メインアリーナの1~2F観客席とし、歓迎レセプションを除く。)
 (1)参加費 5,000円(通訳機器提供、資料なし)
 (2)介助者 1人無料(介助を要する参加者のみとし、要介助は参加者自己申告とする。)
■公式通訳(英語・仏語・スペイン語)
■ホームページ
 DPI日本会議
 http://homepage2.nifty.com/dpi-japan/
 2002年第6回DPI世界会議札幌大会組織委員会
 http://www.dpi-sapporo.org/


2002年第6回DPI世界会議札幌大会(2002年10月15~18日)

(アジア太平洋障害者の十年最終年記念札幌フォーラム)

於:北海道立総合体育センター「きたえーる」
テーマ:すべての障壁を取り除き、違いと権利を祝おう!

  13日
(日)
14日
(月)
15日
(火)
16日
(水)
17日
(木)
18日
(金)
19日
(土)
20日
(日)
9:00
DPI世界評議会
DPI世界評議会
進行司会/平野みどり(DPI日本会議副議長)
9:30
歓迎の辞
山田昭義(DPI日本会議議長)
9:40
DPI世界議長あいさつ
ジョシュア・マリンガ
10:00
来賓あいさつ
小泉純一郎(内閣総理大臣=依頼中)
橋本龍太郎(議連会長=依頼中)
堀達也(北海道知事)
桂信雄(札幌市長)
デン・プーファン(中国障害者連合会会長=依頼中)
10:30
開会宣言
八代英太(アジア太平洋障害者の十年最終年記念フォーラム組織委員会委員長)
10:35
休憩
10:45
基調講演(1)
金大中(大韓民国大統領=依頼中)
11:30
休憩
11:40
基調講演(2)
メアリー・ロビンソン (国連人権高等弁務官・元アイルランド大統領=依頼中)


9:30
分科会(1)
自立生活
女性障害者
生命倫理
人権
条約
開発
アフリカの十年
労働と社会保障
障害種別や社会状況を乗り越えた連帯
アクセス


9:30
分科会(3)
自立生活
障害児
生命倫理
人権
条約
開発
アジア太平洋の十年
能力構築
英連邦
アクセス


9:30
DPI世界会議議事
世界評議会報告
ブロック報告
各国内会議からの提起
世界評議会からの提起
DPI世界役員選挙
DPI世界評議会
DPI世界評議会
12:00
12:40
昼食休憩
12:00
昼食休憩
12:00
昼食休憩
見学ツアー出発
12:00
昼食休憩
14:00
14:00
シンポジウム「DPIと権利擁護活動~権利条約への道」
コーディネーター:
ビーナス・イラガン(DPIアジア太平洋ブロック議長:フィリピン)
シンポジスト
ロン・チャンドラン・ダッドレイ(初代DPI世界議長:シンガポール)
ヘンリー・エンズ(元DPI世界議長:カナダ)
カッレ・キョンキョラ(前DPI世界議長:フィンランド)
ジョシュア・マリンガ(DPI世界議長:ジンバブエ)
ベンクト・リンクビスト(国連社会開発委員会特別報告者・元スウェーデン社会大臣=依頼中)
14:00
分科会(2)
自立生活
女性障害者
生命倫理
人権
条約
開発
アフリカの十年
労働と社会保障
障害種別や社会状況を乗り越えた連帯
アクセス
14:00
分科会(4)
自立生活
障害児
生命倫理
人権
条約
開発
アジア太平洋の十年
能力構築
英連邦
アクセス
14:00
閉会式
分科会報告
決議
行動計画の採択
札幌宣言の採択
新議長・役員の挨拶
次期開催地からの挨拶
16:00
16:00
シンポジウム終了
ビデオ上映・自由に自己アピールなど
16:30 16:30
16:00
閉会挨拶
16:30
神田直也(札幌大会組織委員会会長)
18:00
18:30
歓迎レセプション
18:00
小グループによる自由討議
18:00
小グループによる自由討議
18:30
さよならパーティー
20:00