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ケアについての一考察

どの人も「普通の人生」がおくれる支援づくりを

坂下真弓

 障害は★精神分裂病→統合失調症★と不安神経症です。★分裂病→統合失調症★は睡眠不足や不安が重なった時に症状がでてくるので、常にサポートが必要です。不安神経症による不安発作は、急に体が動かなくなったり、思考力が低下してしまうので日常的なサポートが必要です。
 現在私は、夫と娘(9歳)と一緒に生活しています。有料ヘルパーやボランティアが自宅に来るようになったのは、子どもを生んだことがきっかけになりました。
 子どもは0歳から保育園に通っていたので、夕方からの支援が必要でした。区役所で相談したのですが、その時間帯のヘルパー派遣はしていないと断られました。結局、実家の母とボランティアに協力してもらうことにしました。当時のボランティアは、「そこにいる」ことが条件だったので、ただ座っていてくれる人や自分の仕事を終えてから駆けつけてくれ、洗濯や子どもの食事の世話など一緒に手伝ってくれる人までさまざまでした。ボランティアは、私の生活にはなくてはならない人たちでした。
 そうしているうちに、もともと病弱だった母は、体調を崩してしまい、母からの支援がなくなってしまいました。ちょうどこの頃から、夕方以降のヘルパー派遣が始まったので、民間の事業所からヘルパーを派遣してもらうようにしました。

 最近は子どもが大きくなってきたので、子どもの育児中心の支援から、家族との生活を維持するための支援にサポートの質が変わってきました。必要なサポート内容が、家事援助に限定されてきたので、有料ヘルパーの派遣時間を増やすようになりました。現在は、週2回のボランティア(必ず派遣されるわけではなく、ボランティア側の希望とこちらの要望が一致した時のみ派遣される)と週3回の有料ヘルパーを夕方から2時間ずつ派遣してもらっています。
 ヘルパー派遣にかかる費用は公的な補助がないので、今のところ全額自己負担しなければなりません。もちろん、2時間の派遣では、十分ではありません。本来は、毎日3時間程度必要だと思っていますが、とうてい費用を負担することができません。今年度から精神障害者のホームヘルパー派遣事業が制度化されますが、派遣時間数を増やすことができるのか、その時の利用者負担額など、気になるところです。

 家事援助以外に、必要なサービスをいくつかあげていきたいと思います。
 私のもっている障害の特性上、不安発作が出たときに人と話をすることは大切です。ですから、電話はとても大切なライフラインです。発作の時には、地域生活支援センターや病院、作業所、夫、父と数人の友人に電話をかけることができますが、夜8時以降、全く電話をかける所がありません。こういう不安な時に、電話の対応をしてくれる所が必要です(24時間体制でサポートしている機関がないため)。私はあまり友達がいないので、話をする人が少ないのです。「作業所に来れるといいですね」とよく言われますが、生活を送ることに精一杯な私には、体力的にとても難しいことです。
 外出する時には、タクシーを利用しなければならないことが多くありますが、他の障害と違い割引制度がないので困っています。都電等の公的な交通機関によっては、他の障害と同じように割引制度を利用できるようですが、駅に行くまでが大変なのです。また、外出先で発作が出た時には、立っていることもできなくなるので、タクシーで帰ってくるしか方法がありません。
 病院に行く時は、ほとんど夫に付き添ってもらいます。しかし、私の体調が良く、2人のスケジュールが合う日に通院するとなると、本当に機会が限られてしまい、月に1回病院に行ければよいほうです。急に具合いが悪くなった時など特に、ヘルパーと一緒に通院できればと思うのですが、費用が多くかかるので利用できません。

 私はこれまで、いろいろな人に支えられて「普通の生活」を営んできました。しかし、結婚の際に周囲から子どもをつくらない条件をだされたり、中絶を強制される精神障害者がいます。精神障害者自身も、経済的理由から子どもを諦めてしまうこともあります。この背景には、さまざまな原因がありますが、支援体制がないことが一つの要因になっていると思います。そこで、出産直後の大変な時期だけ24時間のヘルパーが派遣され、その後も柔軟な支援体制が継続すれば、「精神障害者は子どもを育てられない」という間違った考え方に惑わされずに、多くの子どもを生み育てる「普通の人生」をみんなが送れるようになると思います。

(さかしたまゆみ 東京都在住)