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ハイテクばんざい!

視覚障害者用物品確認装置
“わかるんです”の開発

日高仁

開発のきっかけ

 当社はもともと音声合成システム機器メーカーとしてICチップの開発から機器開発まで、音声をいかに有効に利用すべきかを考えてきた会社です。たとえば駅構内での放送・車・電話・音の出る信号機など音声サービスによる利用はごく自然に私たちの生活に入ってきていますが、当社はこのような開発に長年携わってきました。数年前、東京商工会議所主催の「音」に関する文化会に出席させていただいたときに、視覚障害者である天野氏と同席いたしました。そこで天野氏から、視覚障害者にとって音声がいかに重要なファクターであるかをお聞きし、音声を利用した商品の開発を考えさせられました。
 視覚障害をもつ方々は、家庭内で物品の確認や識別をどのように行ってきたかというと、「さわると分かる、においで分かる、覚えている、訓練でできる、点字で読む」などでした。また、中途失明の方々は点字や訓練がままならない方もいらっしゃって苦労されていることが分かりました。視覚障害をもつ方にとって、家庭内でどのようなことが不便で、どのようなことができれば助かるのか、またよいのかを天野氏から伺い、そこで、物品の確認・識別にあたっての問題点として、1.色の確認、2.同一形状品の識別、3.衣服の色の識別、4.食品の識別、5.CD・録音テープの確認、6.洗濯時の問題、などが浮かび上がりました。そして何回ものミーティングを重ねた結果、次のことを重点に開発を進めました。

開発の内容

1.開発のコンセプト

 障害者自身が家庭内で簡単に操作でき、かつ有効な装置であること。物品に付ける音声タグは洗濯もでき、冷蔵庫や冷凍庫も利用できること。なお無電池で長寿命であること、さらに操作は音声ガイダンスを用い、視覚障害者自身で使用できること。

2.テーマおよび品名

 テーマは製品名として、視覚障害者用物品確認装置「わかるんです」とする。

3.価格

 経済性がよいこと(つまり安いこと)。

4.開発条件

 障害をもつ方の意見を最優先し、技術先行的な開発はしない。
以上の条件の下、当社の開発グループに指示を出し、そのうえで天野氏にさらに助言をいただきました。

「わかるんです」の機能

 これらの問題を解決して作られたのが「わかるんです」です。その使い方を説明しましょう。

●使用方法

1.電源スイッチを入れると「わかるんですが起動します」のガイダンスが流れ、電源が入ったことを知らせます。
2.上に何も載っていない時、録音スイッチを押し続けると「物品がありません」のガイダンスが流れます。
3.音声タグ付き物品を載せると物品のガイダンスをします。
*録音していない音声タグは「新しい音声タグです」のガイダンスをします。

●録音方法および音声変更方法

4.新しい音声タグ(音声を変更する音声タグ)を載せ、音声を確認します。
5.録音スイッチを押し続けます。
 「新しい音声タグです」または録音された内容がガイダンスされ、引き続き「音声を変更します。ピー」とガイダンスが流れます。
 引き続き録音スイッチ押しながら音声を入力します。
6.録音スイッチを離すと録音された音声を再生します(録音時間は4秒程度です)。
*音声タグを複数載せての録音はできません。この場合、録音スイッチを押しても「物品が載せてあります」のガイダンスが流れ、録音状態になりません。

 このように「わかるんです」はご自身で録音し、物品を確認して取り付けます。音声タグには輪ゴムが付いていますので、簡単に付けられます。衣類などは襟の裏側など見えない所に縫い付けてください。そのまま洗濯やアイロンがけができます。
 認識方法は音声タグにID番号が登録してあり、そのID番号を認識し、ご自身で好きなように録音したID番号と一致した内容を選択して音声ガイダンスします。

実際に使ってみると…

 視覚障害をもつ方はどのように使っているのでしょうか。くわしい体験談は、天野氏に譲るとして、現在は、この「わかるんです」を皆さんは、形状ではわからない物品(インスタント食品・缶詰・冷凍食品・食肉・カセット・CD・など)や衣類などの色・柄(靴下・ワイシャツ・背広・ネクタイなど)また、飲み薬などの時間(食前・食後)・賞味期限などに利用されているようです。利用方法としては範囲が広いので、ここに紹介したことよりもまだたくさんの方法があると思います。

今後の取り組み

 今後は、今の「わかるんです」を基に、外出時や旅行先などに持ち運べるコンパクト化した製品を開発しています。現在でもIC化・ID化が進み、駅の改札、入退室管理、製品管理、在庫管理、カルテ管理など何にでも使用されている状況ですので、視覚障害をもつ方だけでなく、一般市場でも使える用途が多数考えられると思います。私たちはこの「わかるんです」も、そうした製品の一環と捉えています。
 これからは各施設および関係団体に貸し出しなどを行い、大勢の視覚障害をもつ方々に認知していただく方法を考えています。そして1日も早く、視覚障害をもつみなさまの手に届くよう量産化し、日常生活用具として認定を受けるべく全力で取り組んでいるところです。視覚障害をもつ方が「わかるんです」を使うことによって、生活の幅が広がり、生活がより便利に使いやすくなることを願って、最先端の技術をより良く活用し、さらなる開発を進めてまいります。

(ひだかひとし 九北エレクトロニクス)


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