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欠格条項は社会的保安処分
―ますます厳しくなった運転免許―

加藤真規子

 道路交通法の見直しで、障害の種別にかかわらず、運転免許の試験を受けることができるようになりました。しかし、「合格しても免許は与えないことがある」と、幻覚症状を伴う障害と発作を伴う意識障害などをあげています。対処方針で、「障害名、病名の特定はやめる」といわれているにもかかわらず、現実には障害名や病名の特定に近い形で文言が残りました。
 また、これまでは、試験を受ける際に、精神科の通院歴を申し出る必要はありませんでした。ところが今回の政令案の中では、免許の交付時・申請時に、病気、病状、症状についてチェックし、診断書の提出を求めることも検討しています。
 さらに、試験に合格した人に対して、免許取り消しと停止にかかわる規定で、交通違反をした場合など、臨時適性検査を改めて受けなければならなくなりました。ですから、相対的欠格事由になったといっても、ますます厳しくなったというのが現実です。
 昨年の秋、道路交通法改正後に、「こらーるたいとう」に寄せられた精神障害をもつ人々からの訴えを聞いてください。
 「私は45歳。20歳で普通自動車の運転免許を取得し、無事故、無違反の20年表彰を受けています。私は10代で発病し、17歳の時に、精神病院に入院しました。21歳の時に良心的な病院に入院したのが最後でその後、社会で暮らしています、私にある症状は強い不安です。
 警察のいい分は、おかしな所があります。事故や違反をした者は、皆精神病者で、健常者は、皆、絶対、事故や違反を起こさないということになります。そのことは、どうしても納得がいきません。
 私たち精神障害者は、差別と偏見にさらされ、非常に辛い立場に立たされています。私たちに平安が来るよう、力を合わせて闘いましょう。」(九州・男性)
 「精神障害者である私が、こうやって20年表彰を受けられたのも、前に書いたように無理をせず安全運転を心がけていたせいでしょう。今後も安全運転に務めようと思っています。
 改正道交法の素案の中の「各病気ごとの具体的な運用基準」の「★精神分裂病→統合失調症★関係」で、★精神分裂病→統合失調症★患者が事故を起こした場合は、取り消しとありますが、★精神分裂病→統合失調症★であれ、健常者であれ、皆、事故を起こすときは起こすのであって、健常者は免許を剥奪(はくだつ)されず、★精神分裂病→統合失調症★者の場合は、剥奪(はくだつ)するというのは、実質上の差別です。私は、この事を声を大にしていいたいです。」(九州・男性)
 「生活を着実に築き上げるために、特に自動車免許の必要性を感じます。万一の事故にしろ、健常者との比較のうえで、対処していけばよい。障害者が極端に、技能面で劣ると評価されておらず、うまくなるのも健常者と変わりない。運転に障害者のレッテルが持ち込まれては、最初から負担を強いられる思いがします。だれもが、社会の中で明るく生活していける制度のあり方を強く望みます。」(京都・男性)
 「判断を誤れば一瞬にして大きな事故に結びつく。それだけに慎重な判断が必要なのは、健常者とかわりありません。問題なのは条件への反応の早さとか、正確さに限られます。習熟を重ねる間に、精神障害者の場合も車の運転で問題は発生しないと思います。リズミカルな走行感が備われば、精神面の好転さえ見込まれます。この時、本人の内省も大切です。
 課題は、日頃の生活で有効に車を活用していける習慣作りです。気分に作用されての利用が目立てば到底、車を有効に利用することはできません。運転に関しても、周囲からの積極的なサポートが成立してこそ、免許所有の意味が増します。
 仲間同士密に、連絡しあう中で以前から発生していた問題も解決できると思います。経験を交えつつ、仲間の意見や考えが、私にも大いに役立ちました。
 普通の人でも、極端なイライラ状態におちいる渋滞時の運転は、ストレスが強いので、障害者への配慮が必要です。障害者のほうも、約束時間に間に合うかと葛藤する場面が多いと、疲労感も健康な人より何倍もの大きさでおそいかかることを覚悟したほうがよいと思います。」(京都・男性)
 「私が運転免許証を取得したのは、16歳の時でした。自転車が大好きだった私にとってオートバイに乗ることは、夢でした。アルバイトで貯金して、オートバイを買いました。もう毎日が楽しみの連続でした。
 私は社会人になって、28歳の時に★精神分裂病→統合失調症★を発病しました。私は今でも好きなバイクとともに生活しています。病気の程度にもよりますが、慣れて、十分注意をすれば、かつ、安全運転を心がければ精神障害者であってもOKです。」(東京・男性)
 障害のある人もない人も、共生できる社会を構築するための、工夫や歩みよりをみんなで考えたい。障害者差別禁止法は、そうした発想のもとにできています。働くことや移動することについて制限を課してはいけないことを明らかにする障害者差別禁止法の視点から、今回の運転免許についての見直しを照らして見ると、何と精神障害をもつ人々は、100年近く遅れた状況に閉じこめられていることでしょう。

(かとうまきこ こらーるたいとう代表)